シンガポールでアジアのエンジニアと一緒にソフトウエア開発をして日々感じること、アジャイル開発、.NET、SaaS、 Cloud computing について書きます。

僕の転職 シンガポール編 中編

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 前回、7月になった時点から片端からレジュメを送り始めたと書いた。

 「送る」という行為だが、最初は前回紹介したようなWebサイトが持っている機能を使って送っていた。つまり、Webサイトで自分のレジメ、就労可能時期、希望給与、生年月日などをいったん登録した後は、見つけた募集広告にある『応募』ボタンをワンクリックするだけで応募できる機能。そう、応募はワンクリックでできてしまう。

 さらに、その種の募集サイトの求職者用のページでは、応募状況のリストなどを表示してくれる。多分、企業用のページには、応募者のリストを表示するページなどが準備されているのだろう。

 もう少し細かいことを書く。この種の求職サイトに広告を出す企業は大きく分けて、2種類に分けられる。転職エージェントか、実際に採用する企業。僕は、最初はその2種類を分け隔てなく応募していた。

 しかし、分かってきたのは、転職エージェントに応募すると、そのエージェントから、ほぼ確実に電話がかかってきて、根掘り葉ほり聞かれた後、実際に募集している企業の具体的な名前を説明され、『その企業のレジメを送るので、もし面接に呼ばれることになったら、連絡する』と行って電話を切られるパターン。このやりとりがすべて電話で行われる。実は、これが私には、かなり負担が大きい。

 電話で企業の詳細を、きついシンガポールなまりのエージェントに説明されても、記憶に残るのは半分ぐらい。最初はこの種の転職エージェントが出す広告にも大量に応募したので、エージェントから大量の電話を受けることになったこともそれに拍車をかける。次から次へと電話を受けるので、最初は、『僕ってこんなに、需要が高いエンジニアなんだ』と誤解してしまった。しかし、その1回目の電話の後は、すべてなしのツブテで、そんなわけがないと気付くわけだ。

 僕も、だんだん、不意うちの電話でのやりとりの結果、『応募』したことになっている企業の名前など、分からなくなってくる。日本の転職エージェントや、こちらの日系のエージェントは、希望を説明して、『それならば、こういう応募があります』と、オフィスでゆっくりと時間をかけて説明してくれるが、こちらのエージェントは明らかに『数打ちゃあたる』式。募集サイトに広告を出して、応募してきた人全員に電話をかけて、多分、ここで、英語が通じるかどうかか、その辺りをチェックしているのだろう。

 少なくとも受け答えができると判断すれば、そのままレジュメを募集企業にフォーワードしているのだろう。その時の電話の話の内容から分かることは、エージェントは私が一生懸命書いたレジュメの中身など一切読んでいないこと。レジュメの書いてある、明々白々なことを、平気で聞いてくることも多い。

 さらに閉口するのは、ネット上の求職サイトの中には、自分がサイトに登録したレジュメを、企業の側もしくは転職エージェントが検索できる機能を持つものがある。日本の転職サイトにもよくある機能、つまり『スカウト』の機能だ。こちらのサイトの問題は、上で書いたような『数打ちゃ当たる』の仕事をする転職エージェントも、それを見られること。結果、その種のサイトに自分のレジメを登録して、『スカウト』許可モードにしてしまうと、次から次へと、転職エージェントからの電話を受けることになる。

 結果につながる確率の低い転職エージェントの電話を受けるのは、シンガポールで仕事を探す初心者には、電話でいろいろと英語で受け答えをする練習になるのでいいかもしれない。私も、実は、最初は卒業研究モードから転職モードに自分の気分を切り替える為に使った。しかし、その後はすべてシャットアウト。つまり、活動の後半では、応募する募集広告は、企業が直接広告を出しているもののみとした。

 そんな風にいろいろとシンガポールでの転職の方法を学習しながら、レジュメを20~30通送った後だろうか、ある募集サイトの求職者用のページの1つに、募集した企業ごとの、その広告にレジメを送っている応募者の数、そして自分の希望給与額が、その応募者の中で、どの位置にいるかが分かるものがあることに気付いた。

 それを見て驚いたのが、自分の位置が、ほとんどの応募先で、ダントツで1番上か、上から2番目ぐらいだということ。実は、最初の希望給与は前の仕事でいただいていた給与より少し落とした程度の6000シンガポールドルで応募していた。この額が、シンガポールのソフト開発のエンジニアの平均よりは、かなり高い給与だということは知っていた。しかし、僕ぐらいの実力のエンジニアなら、そのくらいの希望を出してもいいだろうと思っていたし、他にも同じぐらいの希望を出している人も大勢いるだろうと思っていた。実際見ると、僕の希望額を提示している求職者はほぼ皆無ということ。これはかなりショックだった。

 仕方なく、それより少し落とした額の5000シンガポールドルで、しばらく応募。様子を見るが、それでも、面接をしたいという電話が来ない。

 そこで、考えたのだが、企業で採用業務をしている人事担当者は、募集サイトが準備している企業側用のサイトの応募者検索の機能を使って、客観的データを基に、応募者を絞っているだろう。その絞りこみに使うデータは多分、希望給与、年齢、学歴、経験年数、資格、そのあたりだろう。

 それを考えると、僕のレジュメが、実際に僕のレジュメをじっくり読む立場にある人、つまり実際に採用する部署のボスのところに至る確率はかなり低いのではないか。僕の希望給与5000シンガポールドル、応募者の上から10%程度だろう。50歳と言う年齢 は、ソフト開発エンジニアとしては、シンガポールでは高すぎる。学歴の大学卒は、シンガポールでは最低レベル。

 そんなことを考えて、データの絞り込みをスキップできる道を考えるべきだと思った。よくある方法は、昔の同僚のつてを使うなど。実際そのつてを使った応募も2~3行ったが、数を打てない。何か良い方法はないか? それは何か?

 なんのことはない、募集サイトには大抵、メールアドレスが書いてあるので、そこに直接レジュメをメールへの添付として送ることだ。多分、そのメールを最初に見るのは人事担当者。

 ざっとレジュメを見て、そこで普通の応募者のルートでないので、捨ててしまう人もいるだろう。しかし、普通の小心な担当者はそうしない。小さな企業なら、自分の見える範囲のところで仕事をしている、開発部署のマネージャに声をかけて、そのメールを転送するだろう。そんな形で届く応募はそんなに数はないのだから、問題ないと考えるのが普通だ。レジメの内容を理解できるレベルの人が、僕のレジュメをみて、『ぜひ採用したい、一緒に働きたい』と思うことには、小生、実はかなり自信がある。かなりの確率でそうなるだろう。

 後は、高い給与、高い年齢、そして日本人と一緒に働いたことないけど、大丈夫だろうかという不安。その辺りをクリアする努力を社内でしてくれれば、面接に至ることになる。

 ということで、私が最終的に始めた応募法は、直接募集記事を出している企業に、直接メール添付でレジメを送ること。案の上、方法を変えてすぐに、3件の面接に来てほしいという旨の電話を受けた。そして、3件の面接すべてで、オファーをいただくことになった。客観的な条件では、少々無理のある僕を、押して、面接に至っているのだから、面接通過率100%。当たり前だ。

 長くなったので、今回はここで終えて、次回の終編に続くことにする。

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