シンガポールでアジアのエンジニアと一緒にソフトウエア開発をして日々感じること、アジャイル開発、.NET、SaaS、 Cloud computing について書きます。

アジアのエンジニアと真っ向勝負

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 トーマス・フリードマン先生もおっしゃるように、世界はフラット化しています。ここ、シンガポールでITエンジニアをやっているとそれをしみじみ感じます。同僚、そしてお客さんのエンジニアは東南アジア全般の国の出身です。シンガポール人、フィリピン人、インド人、ミュンマー人、中国人、他です。わたしは、彼らと真っ向勝負していかなければなりません

 わたしは日本人ですが、ここシンガポールでITエンジニアとして働いていて、日本人だから有利だと思えることはあまりありません。強いて上げれば、例えば、プログラムしていて、壁にぶつかったときにGoogleで検索して、何かの手がかりを探しますが、わたしは日本語情報も活用できますので、英語だけの情報しか使えないエンジニアよりは、2、3割多くの情報に接することができます。また、日本語で発信された情報は完成度が高いことが多いのも事実です。日本人の性格でしょうか? 読み手のことを意識して、表にするべきところはしっかりと表にしてまとめてくれます。

 しかし、このメリットたかがしれているということも事実です。

 真っ向勝負ということは、当然ですが、給料に現れます。シンガポールのエンジニアの平均給与は3000S$ぐらい、日本円にして20万円程度です。日本の3分の1ぐらいかと思います。ひとり当たりのGDPが日本より高い国が、どうしてこんなに低いのかというと、シンガポールの政策として海外からのエンジニアに簡単にワークパーミットを与える国であることが大きいと思います。

 シンガポールに来て、一緒に働いてきた同僚、お客さんのほとんどは実はシンガポール人ではありませんでした。いろいろな形でこの国で働くことができる権利を取得して、シンガポールで働いている外国人です。わたしの経験ですが、そのワークパーミットの取得は書類として大学の卒業証明書ぐらいを準備して、2週間ぐらいで発行されました。イミグレーション専門業者などの必要は一切ありません。他の先進国と比較して、はるかに簡単です。米国をはじめとする先進国、特に英語を母国語とする国ではITエンジニアと言えど、簡単にはワークビザを取得できないのが普通です。

 米国のH1ビザは1年間に発行される数に制限を設けています。リーマンショック以降どうなったのか、わかりませんが、その前はその1年間の発行数が1年に1度の発行開始日の後1日か2日で使いきられてしまうのが普通だったようです。その機会を逃せば、次の年の発行開始日まで待たなければならないことになります。

 このように、先進国で働くエンジニアは、外国人エンジニアの流入を制限することにより、既得権を持つことになります。その結果、給与が高止まりするのでしょう。ただ、最近のオフショア開発の増加で、競争相手は国内のエンジニアだけでなく、海外のエンジニアも含むようになり、既得権益もなくなりつつあるのが現実でしょう。

 シンガポールに話を戻します。シンガポールで働く外国人ITエンジニア。大体は、本国に戻れば、もらえる給料が10万円以下の国から来たエンジニアです。20万円でも喜んで働きます。わたしは60万円の国からきたエンジニア。少々割りに会わないと考えていたりもします。幸い、わたしのことを平均以上の能力を持つエンジニアと考えてくれる雇用者のおかげで、実際、わたしが現在もらっている給与は、20万円よりはずっと良いのが幸いです。しかし、これを維持するための努力を考えれば、いやになります。

 と、こういうことを書いてますが、日本の現場もこのシンガポールの現実に徐々に近づいているのも現実だと思います。

 日本で働く日本人ITエンジニアが、日本人であることから得られるアドバンテージは徐々に薄れつつあるのではないでしょうか。

 その昔、日本語のエンコードは、1文字当たり1バイトと2バイトが混在するShift JISやJISが普通でした、しかも文字列を扱うためのクラスなどがなく、プログラマが自分で文字列処理を行う必要がありました。1バイトだけで構成される文字列を扱う、文字列処理と1バイトと2バイトが混在する文字列を扱う文字列処理はかなり違うものになります。最近はUNICODEにより、世界の文字すべては2バイトで扱われます。国ごとに異なる文字列処理を行う必要はなくなりました。さらにも、文字列処理を行うクラスは、使用するフレームワークにより準備されているのが普通で、文字列処理の違いを意識する必要はほとんどなくなりました。

 その昔、プログラムの中に、ハードコードしての日本語を記述するのが普通のプログラミング法でした。その結果、そのころは、日本人向けのソフトウエアは日本人にしかできないものでした。今までは、ソースコードとは別のリソースファイルにの文言を記述するのが普通です。ソースコード上にはリソースID だけしかありません。ローカライズは簡単になりました。日本人以外のデベロパーに英語で開発させ、最終段階として、そのリソースファイルの日本語対応を行い、日本のお客さんにリリースする方法が、簡単に取れるようになりました。

 日本語そのものを何不自由なく使いこなし、日本の開発現場で働いている、中国人、インド人も増えています。

 結果、日本人にしかできない業務はどんどんと少なくなっていきます。最近の傾向として、日本で働く日本人エンジニアの給料は毎年減っているということが、現状じゃないでしょうか。

Comment(3)

コメント

トジコ

初めましてトジコと申します。

自分も日本を出てシンガポールで働きたいので大変参考になります。

通りすがり

賃金面でのフラット化はもう随分と進んでいるのではないでしょうか?

私事で恐縮ですが、月給19万(給与16万、残業代が固定費で3万弱)の身としては日本円にして20万の給与は十分に魅力的に思われます。(年収の12ヶ月割となると少し話は変わりますが)

組織規模100人程度の中堅(中小?)SIに所属するSE(と言う名目のプログラマ)で、地方支社に出向している身の上ですので都市部の一般的なエンジニアの方とは大分事情が違うでしょうが、東京在住の同年代の技術者の友人達の話を聞いても事情はそこまで大きくは変わらないようです。

ですので

>シンガポールのエンジニアの平均給与は3000S$ぐらい、日本円にして20万円程度です。日本の3分の1ぐらいかと思います。

と言うのは流石に誇張表現(若しくは少し比較情報が昔の物)なのではないかと言うのが正直な感想です。

手元に統計資料が無いのであまり無責任なことも言えませんが、日本のIT業界の平均年収は400万円台という調査結果も有ったように思います。シンガポールの給与・賞与のシステムにもよりますが、概ね日本の3分の2以上にはなるのではないでしょうか。

そのように考えると、業務のフラット化、それに伴う賃金のフラット化はもう既にかなりの段階に入っていると感じます。
プロジェクトで中国の方と一緒に仕事をする機会も有り、向こうの技術力は伝わって来ているので、この流れも当然の事で有ると思います。ただ協同作業をしたソフトハウスの(良くも悪くも)「料金以外の仕事はしない」と言うスタンスには、慣れない内は猛烈に振り回されもしましたが。(コミュニケーションコストを舐めてはいけないと言う良い教訓になりました)

>日本語そのものを何不自由なく使いこなし、日本の開発現場で働いている、中国人、インド人も増えています。

知り合いにも似た様な方がいらっしゃいます、語学力は兎も角(?)技術者の本文でもある技術力では負けない様に精進して行きたい物です。

余談となりますが

>結果、日本人にしかできない業務はどんどんと少なくなっていきます。最近の傾向として、日本で働く日本人エンジニアの給料は毎年減っているということが、現状じゃないでしょうか。

今の会社に移って四年目、忙しさは変わりませんが、入社以来毎年年収が25万づつ下がり続けています。今年はどうなることやら(^^;

山本

トジコさんへ

ワークパーミット取得に関しての私の経験は3年ぐらい前のものです。今年に入って、政府は外国人に対して、今までのどんどん許可する政策を変えて、入り口を絞り始めたようです。ここ数年、シンガポールは年率5%ぐらいでGDPが拡大してたのですが、それは外国人のおかげと言う考えで、その結果4人に一人ぐらいが外国人という国になってしまいました。結果、この小さい国に人口が増えすぎて、いろいろと弊害ででてきたため、外国人の入国を晴らすそうです。それにもかかわらず、経済を進歩させるには、今住んでいる人たちの、平均スキルレベルを上げるしかないと、今年の国の予算は、国民のスキルを伸ばすということに大きく予算をさくそうです。

通りすがりさんへ
日本も思っているより早く、厳しくなっているのですね。60万円という数字は、7,8年前勤めていた会社で、フリーのエンジニアに払っている報酬の額でした。今は、もっと下がっているのかもしれませんね。社員で60万円月というと、賞与もあわせて年収800万円を超えてしまいますが、それが日本人の平均の給与とは思ってません。

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