@IT自分戦略研究所 編集部が独断と愛によって選んだ「テーマ別コラム」をピックアップして紹介します。

「効率化」で切られるエンジニアの行く末を考える

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 本音が語れるエンジニア参加型メディア「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」。日々、ITエンジニアの「生の声」を公開している。

 ここでは、編集部の独断と偏愛によって選んだコラムをテーマ別に紹介していく。今回のテーマは「効率化で消える人たち」。コメント欄では「効率化」「教育」をテーマとして建設的な議論が行われた。今回は、コラム本編と、寄せられたコメントを紹介する。

「効率化」で、若手エンジニアが消えていく

  『恋愛感情で仕事ができるか?』の森姫氏は、「効率化で消える人」という問題を提示した。

 森姫氏が働くプロジェクトのリーダーの悩みが、コラム執筆のきっかけとなった。リーダーは、「コスト削減のために人を減らさなくてはならない」と、頭を抱えていたという。

 森姫氏の働く現場で「人員削減」をする場合、生産性の低い「若手エンジニア」が真っ先に切られる。ベテランエンジニアはプロジェクトを抜けることができない。いつも、新しい人が入ってきては辞めていく。

 「これはいいことなのか? 若手はどこで仕事を覚えればいいのか?」と、森姫氏は疑問を投げかける。「効率化」によって、新しい人が育つ可能性を減らすのは問題だ。

 「現場には、人を育てるための“非効率”が必要ではないか」と、森姫氏は主張した。

「効率化」「人員削減」「教育」の問題

 このコラムは、「効率化」「人員削減」「派遣社員の教育」というテーマを提示したため、さまざまな議論を呼んだ。まずは「効率化」から考察していこう。

 効率化の方法は2種類ある。「仕事あたりにかける時間や単価を減らすこと」と「生産量や売上を増やすこと」だ。森姫氏が語る「人員削減」は、前者の「単価を減らす」ことに当たる。

 「効率化」のために“切られる”人間とは、どのような人か。ソフトウェア開発の進捗は、エンジニア個人の力量に負うところが大きい。そのため、A氏が8時間かける仕事を、B氏が4時間で終わらせるという事態は普通に起こる。単純計算をすれば、B氏の仕事効率はA氏の2倍だ。人員削減をするなら、当然A氏が“切られる”ことになる。

 森姫氏の現場において、「A氏」は「まだ技術を十分に身に付けていない若手エンジニア」だった。森姫氏は「“効率化”という名の若手人員の削減」が問題だと指摘している。なぜなら、現場を十分に経験しない若手社員には、技術をしっかりと身に付けるチャンスがないからだ。

派遣社員はどこで育てばいいのか?

  コメント欄では、何人ものコメント投稿者が意見を述べた。

 その中に、「人員削減はよいことだ」とする意見があった。特に、派遣社員の場合は「労働力」を見込んで雇用している。そのため、派遣社員の実力が見込んだ労働力に届かなければ“切る”のは当然ではないか? とコメント投稿者は指摘した。

 「では、派遣社員はどこで育てばいいのか?」と森姫氏は疑問を投げかけた。

では、派遣社員はどこで育てばいいのだろう? と。最初は仕事がわからないのは当たり前だとおもっておりますが……。派遣の世界がまだよくわからないのですが、実力がある人以外は派遣になってはいけないのでしょうか?  (森姫氏のコメントより抜粋)

 その後、コメントではいくつか意見が分かれた。まず、「派遣会社は『労働力』を売っている。だから、派遣会社がきちんと実力をつけさせるべきではないか」という意見がある。

これに関しては自分、もしくは派遣会社側で派遣しても使えるレベルにまで上げるしかないでしょう。派遣される側の視点でみれば、派遣先での仕事はレベルアップの場と考えているのかもしれませんが……。

教育というと聞こえが良いですし、教育を怠るなんて、馬鹿な会社だーと考えるのもありだと思います。

ただ、私は、派遣先にそれをいうのは違うのではないか? と思うのですよ。期待する労働力に対して対価を払っているのに、期待するレベルにまで引き上げる作業を派遣先に求めるのは、酷い話に思えるのです。

労働力という商品を扱っているのならば、その商品の品質管理をちゃんとして欲しい。  (
Soda氏のコメントより抜粋)

  一方で、「受け入れ先は派遣社員に対して、教育の機会を設けるべきでは」という意見もあった。厚生労働省が交付する「労働者派遣事業を適性に実施するために」では、「派遣受け入れ先は、派遣者の教育を行う努力をするように」とあるためだ。

私が今いる会社では、派遣会社側で教育の機会を作っています。また、受講資格を得るための試験を行っています(経費を掛けすぎないための措置かと思われ)。 (Jitta氏のコメントより抜粋)

教育の機会が少ないなら、自分で育つしかない

 しかし、相変わらず厳しい経済状況において教育費は限られている。派遣労働者は「自分自身で育つ努力をする他はない」と、コメント投稿者のみりゅ氏は主張する。

ただ現実の問題としては、派遣・社員に関わらず、社会の風潮としては会社の教育費は削られてきています。

(中略)この背景には、景気の関係で仕事が減ってきており、失業者も増え、派遣などで人材確保が容易になってきていることもあるでしょう。

つまり、学習は「自ら」する他ありません。 (みりゅ氏のコメントより抜粋)

 仕事の中で覚える必要があるものはこまめにノートをとり、仕事以外でも情報収集をして勉強する。そうして自分を育てて、自分自身の必要性を現場で主張していく必要があるのではないだろうか。

 最後に、「教育」に関する興味深いコメントを紹介しよう。

結局は、教育コストをかけた「人」が、後に「利益」を生むと考えるのか、生まないと考えるのかは、その経営者次第です。 (みりゅ氏のコメントより抜粋)

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Comment(6)

コメント

Jitta

コメントを紹介していただき、ありがとうございます。
一点、気になる点がありますので、確認させてください。

私の書き方が悪かったかもしれませんが、派遣社員である私に教育の機会を提供しているのは、派遣元の会社、私が所属している会社です。
> 私が今いる会社では、派遣(元)会社側で教育の機会を作っています。

「「派遣受け入れ先は、派遣者の教育を行う努力をするように」とあるためだ。」の後にあるため、受け入れ先の会社が教育機会を提供していると理解されているのでしたら、申し訳ございません、それは誤解です。

Yuuta

「教育の機会が少ない」についてですが、この業界も一種の職人のようなものだと私は思います。
職人は教わるのではなく、自分で技を盗み学ぶものではないでしょうか。
「そんなこと教わっていない」というエンジニアもいますが、プロジェクトに参加
する以上、必要な知識は自分で本を買うなりネットを活用するなりしてスキルを上げる
努力をする必要があると思います。
自ら学ぼうという意思が見えない、指示されたことだけを、なんとなくやっている感じの人が多く思えます。

みりゅ

コメントありがとうございます。
理解が深まります。

自分個人としては、別に Jitta さんや Soda さんの意見に反対ではありません。

また、「労働者派遣事業を適性に実施するために」には、日雇い労働の場合には
実は、「派遣元」に教育するように指導しています。
たぶん、こちらの方が制定は古いです。

ただ、実際には部署や人によって、知識や進め方は違いがありますので
「派遣先」に教育の努力をという方が効率的かと思います。

派遣者個人としては、ちふ さん のような取り組みが必要なのでしょう。


 一番厄介なのが、中途半端だったり、「間違って」理解することです。
この場合、間違いに気づいて正しい知識を得るのに、膨大な時間が
掛かります。仕事上でのことなら当然、成果にも悪い影響がでます。
しかし、「なんとなく」辻褄合わせして乗り切れれば、
本人は気づかない訳です。……周りの人も気づかないときもあるでしょう。
 また、周りの人が気づく場合も「分かっていない」というところまでで
あって、「間違った理解」ということまでは気づかないのです。

 また、ベテランの仕事には、長い経験の中から見つけた
分かってしまえば(教えられれば)当たり前と分かるような、知見や
ノウハウがあります。これを新人がその領域まで自力でたどり着こう
とすると同じような時間が掛かる訳です(自分の仕事を見つめなおして
結果的にたどり着く訳ですから)。

 このようなことを考えると、個人的には、人が大きく成長するなら
教えあうことが必要かなとは思います。
 理想としては、師匠のような人がいるなら、その人に教えてもらう方が
良いです。ただ、いい加減や間違ったことを覚えるのは避けたいと
自分個人は思います。
そのためには、ある程度まとまった時間が必要になると思います。

 派遣者の場合、派遣先が「切る」という選択肢があるので、
現実的にはあまり他の人を当てにできないでしょう。

ただ、「学習」には「時間」と「費用」が掛かり、
その費用は誰かが担保しているということは現実です。

そして、そのことにより適正な報酬というものも必要になります。

 このように考えると社会的には、教育問題や効率性にも繋がる
かもしれません。

(脱線しますが、
資源・エネルギー → 労働・知識・技能 → モノ・サービス → お金
根本的に、人が子孫を残せるのは、お金に「余裕」があるからです。
モノ・サービスには、生きるための「余裕」も含まれていることに留意
したい。
 残念なことながら、最低賃金法では、そこまでの留意はされていない。

人が「生きる」というのは、目の前だけの問題ではない
と言えないでしょうか?)

小さなシステム会社からスタートし、
いまは独立してやっているエンジニアの麻です。

システム化による効率化で失われる人材については悩ましいですが、
最近は、教育が行き渡ってても切られるのでなんとも。。

教育について書かせてもらいます。

小さい会社で新人スタートしたせいか、
研修なんてものも会社からの教育もなかったです。

そうすると育たない。と思う方が多いでしょうが、
もう業界10年目になりますが、十分やってこれました。

小さい会社では常に納期に追われ切羽詰った状況だったからかもしれませんが、
そのときそのときを必死に、解らないことを常に解決させて進んでいけば会社がやる教育は必要ないかと思ってます。

その技術+業務経験として少しでも携わりたければ、
報酬安くてもサービス残業であれ自分への投資として進んでやるべきかと思います。

IT技術で言えばいまはネットや本等が出回っているので十分知識得れるのに、
会社から言われないからやらない、会社から教わってないのでできない。
なんて言ってる人がいれば、この時代真っ先に切られて当然かとおもいます。

会社員募集している周りの会社は、
できる玄人よりできる可能性のある新人欲しがっているとこ多いような気がします。

Jitta

みりゅさん:
脱線です。
> 人が「生きる」というのは、目の前だけの問題ではない
> と言えないでしょうか?)
 目の前にしか問題がない方が、人は生きられるのかもしれません。
 データを探そうとしていませんが、発展途上国…いや、今日の食事を得るために必死な人が、自殺なんて考えるでしょうか。「生きる」事に一生懸命な人が、「生きられないかもしれない」とは考えても、「生きるのを止めよう」とは考えないと思います。
 つまり、「豊かさ」は、「生命」の代価なのかもしれません。(もちろん、個人ではなく、集団or社会として、ですよ)

本題
> 自分個人としては、別に Jitta さんや Soda さんの意見に反対ではありません。
 私は、どちらがよいとは言っていません。私の会社の事例を紹介しているまでです。また、「雇用の確保」について、「そうできない事情」のひとつを紹介していますが、それについての賛否も、表してはいません。したがって、「反対ではない」というのは、ちょっと違うからと。
 実際、「どっちで教育すべきか」「どこで学ぶべきか」は、わからないです。様々な分野がありますから、分野が違えば、学ぶべき事も変わります。私は前の会社でアプリケーション ソフトウェア専門でやってきましたが、今いるのはファームウェアです。まったく異なるわけではありませんが、それでも違いはあります。この違いは、今学ぶしかありません。また、企業風土(仕事の進め方)の違いも感じています。これは、その企業でしか学べません。
 とはいえ、「まったく異なるわけではない」わけですから、同じところについては派遣元が学ぶ機会を提供できるでしょう。個人で学ぶことも出来るでしょう。なので、二人三脚…三人四脚?

mayo

まあ、派遣にしろ、社員にしろ教育するという考え方がないのが、この業界ですからね・・。なんとかしたい所はあるんですがね。

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