開発言語と、通販対応配送センターERPの開発者の視点を中心としたコラムです。

技術者の起業に最も必要なのは現在のスキルでも知識でもない

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 最近、LEAN STARTUPなどという言葉が流行り、技術者が起業するのがブームになっています。自分も、起業家の端くれなのですが、起業するのに必要なのは、単純にスキルや知識ではないと最近よく感じます。

 では、起業に本当に必要なこととは何なのでしょうか? やはり、それは、自分でやってみることと、失敗してもあきらめないことだと思います。

■最初は、必ず失敗する

 これは、本当にやってみて、ほとんどの場合はそうだろうなと思うことです。最初のアイデアというのは、必ず、自分の経験と机上の空論アイデアから生まれます。ですので、実際にやってみるのとは、やはり、違うわけです。

 特に、ほかにないサービスを考えて実行する場合などは、それが、世の中的にも初めてなわけですから、検証なんてされていません。ですから、どんなプロの起業家の人でも、一発で成功させるというのは難しいことです。

 最初は、必ず、「何か軌道修正がいる」と考えて、軌道修正がかけやすい仕組みを作ることが大事です。

 自分の場合も、最初は、ECサイトのCMSを販売しようと思っていたのですが、実際にお問い合わせが来たのは、ECサイトの業務のバックエンドの仕組みでした。

■「今はできない」を認めて、積むべき経験をデザインする

 これが、非常に大事なことだと思います。やってみたら予想と違う結果が出てきたときに、必ず「今はできない」ことと遭遇します。

 つまり、ビジネスを立ち上げた時点で、すべてのことができる技術と知識を持っている人なんていないのです。ではどうするか?

 「言葉で飾って、現状は失敗していない」とおもう、これは論外で何も変わりません。必死に考えて、本やWebで知識を探すことでも解決しません。なぜならば、起業する人はすでに日々勉強していると思うので、これ以上、既存の資料や本で勉強しても、ネタは出尽くしていることが多いからです。

 では、どうするかというと、目標を考え直すことが有効です。「今、できないことをできるようにするアイデア」を今すぐ出すこと自体が「できないこと」とまずは認めます。そして、どうやったら、そのヒントに気付けるかに集中します。

 知識やスキルというのは、実際に経験することで得られるものです。特に、今、世の中にないことをやろうとすれば、既存とは違ったスキルや知識が必要になります。また、本当にビジネスで結果を出せる知識は、公開されていないことも多いです。ですから、今までに自分が「やったことがあること」と「やったことがないこと」をきちんとまずは考えることが大事です。

 そして、自分の知識やスキルが、「なぜ、今あるのか」を考え、どのような経験からどのような知識を得られるかを考えていきます。

 そうすることによって、自分に必要だが、ない知識はどのような経験から身に付けられるかがなんとなく見えてきます。

 「起業」というのは、学校や塾ではなく、「現実を先生とした学習」なんだと日々、感じるこの頃です。

 自分がやったことがないことを1つ1つ優先順位を付けて実行していく。つまり、学習に必要な経験をデザインすることが大事なのです。

■実行するには、ウィル(意志)の力が絶対に必要

 経験をデザインするといっても、その経験を自分から積みにいくのはなかなかの至難の技です。なぜならば、人は、「やったことがないこと」「知らないこと」は怖く感じるからです。

 学校であれば、カリキュラムを先生が作ってくれていて、積むべき経験がすでにデザインされているので、頑張りさえすればスキルや知識がつくと思えます。しかし、起業の場合は、自分で考えなくてはなりません。

 それゆえに、「苦労が無駄にならないだろうか?」「経験をするのにかかるお金が無駄にならないだろうか?」という不安とつねにお付き合いすることになります。

 でも、自分としては、そういう不安ともうまく付き合おうと思っています。そういう不安があるから真剣に、常にアンテナを張って経験ができるのです。そういう環境で学習すると、身に付く知識やスキルの効率はまったく違ってきます。一歩、そういう環境に踏み出せれば、非常に得るものは多いのです。

 ですから、起業に必要なのは現在のスキルでも知識でもないのです。「自分に都合の悪い現状を受け止め、かつ、それでも未知の世界に足を踏み出して結果を出そう」というウィル(意志)の力があれば、あとは、自然についてくるものなのではないかと、最近思います。

Comment(2)

コメント

ばしくし

たとえば
>ECサイトのCMSを販売しようと思っていた

なんで、CMS自体を販売しようとするんでしょうね。
エンジニアの起業って、そういう発想の人多いんですよね。

そもそも「自分で作ったCMSを使って、【自分のECサイト】を運営する」
という発想に行かないのが、よくわかりません。

この例の話でいえば
「ECサイトが繁盛する」ことこそがビジネスの本筋なんであって
「CMSが売れる」なんてのは、単なるコスト削減に過ぎないと思うんですよね。

コスト削減なんて、一回効果が出たら、それが常識になってしまうんだから、継続性がありません。
一回購入したらそれっきり、のスマホアプリ販売と同じ発想ですよね。
そんなのを商売にしようっても、なかなか続かないんじゃないんですか。

どうも、エンジニアっていうのは、そういう基本的なところに気付かない人が多いような気がします。

ばしくしさん
鋭いコメントをありがとうございます。まさにそのとおりなんですよね。

「自社のドックフードを食べる」というアメリカで一時期はやったキーフレーズがありますが、まさにそのとおりで、自分で使うことを意識しないと、全然売れる商品もつくれないのです。

SEO対策とかでも、本当に出来る人は自分でアフィリエイト用のHPをつくって普通に収益を上げているし、商売の成功の秘訣はそういう本質的な筋を通すことだと僕は考えています。

ただ、ECサイトに関しては仕入のノウハウの問題とか初期の資金の問題もあるので、いきなり技術者がそこに行き着くかというとちょっと経験的にハードルが高いような気がします。

でも、自分でECサイトを運営して儲けるつもりになって日々視点を磨いていくことは本当に重要で、それが出来れば、徐々に顧客とのやりとりで足りない情報があつまり、自分で本当にECサイトをやれるように徐々になっていくとおもいます。

某投資の番組でどういう人が起業家として成功するかというと、「おちょこでプールの水を汲み出せる人」と言った人がいますが、まさにそれだとおもいます。最初は経験がなくて厳しくても、やるんだときめたら突っ走る意志が今の技術者には足りず、短期的視点で自分の得意なものだけ見て、苦手なものや未知なものを見て見ぬふりして入る人が本当に多いなあと、僕も感じます。

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