地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

肩書きや役職は不要

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 業務を行う上ではプロジェクト、または組織を束ねるためにも、しっかりとした体制が必要です。一般社員に始まりリーダー、管理職と、置かれる場所によって名前こそ違えど、多くの役割が必要とされています。求められる役割に適した人材が、そのポジションに収まることで、迅速かつ円滑な行動が可能になるのです。

 この仕組みは、おそらく企業というものが登場して長い年月が過ぎた中で、先人の知識や経験より導かれたものであるのは、疑う余地もありません。ですが、実際には肩書きだけの人材や、立場にそぐわない行動をする人、仕組みを表面的になぞっただけの体制など、あまりうまく動作しているとは思えないのではないでしょうか。

 今までは年功序列が主立った仕組みであったということもあり、昇格と昇給はほぼ同意であったと思います。年を重ねて経験を積むことを前提として、役職を上位にシフトさせていったのでしょう。

 しかし近年ではさまざまな要因が重なったこともあり、単純には今までの経験を生かすことができなくなっています。ですが、役職などについてはあまり見直されることがなく、過去の経緯を受け継いだ状態、つまり「年功序列的なやり方」を続けているところも多いのではないでしょうか。そのために、上位職ではあるけれどもあまり有効な活躍ができていない人が増えているように感じられます。

 さらにはドーナツ化現象として、中間層が不足するような状態になると、事態はもっと深刻です。活躍ができていない上位職と、ベテランにと呼ぶにはまだ時間のかかる人たちだけが、企業を構成する状態になってしまうと、そこから改善するには並々ならない努力が必要です。

 あらためて考えてもらいたいのは、「そのような状態であっても今までのやり方を続けますか」という点です。現実としてうまくいっていない状態がある、改善していく必要がある、と認識しているのであれば、何か行動を起こさなければ、状況の好転は望めません。

 しかし、この問題は、現場側でどうこうできるものではありません。経営側の問題です。

 私は現場側の人間ですので、経営側の思想はほとんど分からないのですが、実際に経営を行われている方々は、このあたりの問題についてどのように考えられているのでしょうか。機会があれば、ぜひ聞いてみたいと思います。

 私が個人的に考える改善案としては、「現行の役職を廃止し、スキルの有無と権限の有無によって立場を流動的に変化できるよう扱う」という案を考えたりしています。イメージとしては、フォルダやファイルに対してセキュリティ設定を行うような感じでしょうか。Active Directoryなど構築している場合、「役職ではなく権限を主体に考えることが適している」という考え方があります。この考え方を、実際の現場にも適用するというのは、どのようなものなのでしょうか。

 この人はマネジメント技術が秀でているので、チームマネジメントを行う権限を与える、この人は実際の実装作業が得意なので、実装における権限を与える。逆にこの人は年数だけはかなりあるけれども、設計能力はあまり持っていないので実装権限だけ与えよう。この人はオールラウンダーなので、マネジメントも実装も権限を与えよう。

 そして、このように割り振られた権限をもとに、給与を決めていくという方法です。実力主義的な部分が強いと思いますが、なかなか降格させることが難しい役職よりも活用を行いやすいのではないか、などと考えています。現時点でも資格の有無で手当が出されている企業もあると思いますが、その考え方の発展型だと思います。

 肩書きは、実際の業務にほとんど意味をなしていません。大半の人はそれを感じているとは思いますが、肩書きとは無縁な状態で業務を行っている企業は、あまり存在していないと思います。そのため、肩書きは立派だけど大したことができない人を増やし続けているのではないでしょうか。そしてそれは、企業として本当に望んでいる姿なのでしょうか。私は違うと考えます。

 このような話題を考えるきっかけとなったのは、企業にとって社員に適切な評価を下すことは「規模が小さくなるほど難しくなりやすい」という実情を見る機会が多くなったことです。設計も実装もテストも行わないシステム部の社員が存在したり、営業活動を行わない営業部の社員が存在したり、本来の組織としての存在意義に反する方々を目にすることが多くなっているように思えたのです。

 このような人たちを、どのようにすれば減らすことができるのか。それが今後、対応を求められる課題の1つなのだと思います。

Comment(3)

コメント

K.Oumi

こんにちは。

難しい問題ですよね。
「本来の組織としての存在意義」この部分を、どのように定義付けるかで、話はかなり変わってくると思いました。

インドリ

凄く良い問題提起コラムだと思います。
私も同じ疑問を感じ活動しております。
コンサルティングもしていますので、いわゆるIT会社の社長から相談を受けた時、この様な提案をする事があります。
しかし残念ながら、ベンチャー企業以外ではウケが悪く、応急処置的な方法を改めて提案しております。
こういった意見が受け入れられない理由は、聞いて分析したところ次の事柄になります。

1.従来の方法を踏襲しおり、疑問すら感じていない。
2.バブルの成功体験を引きずっている。
3.適切な評価が出来ない。
4.日本人の村社会的発想から脱却できない。
5.そもそも情報処理技術を知らない社長が結構いる。
6.一時的に儲かったらそれでいいと考えている。
7.労働組合の影響力が大きい。
8.ツテ・コネがある人の意見を無視できない。
9.情報処理技術を上手く扱う体系的な経営術が存在しない。
10.株主の理解を得られない。株主の多くは情報処理技術を知らず、短期的に儲かる事氏か考えていない。

大体こんなところです。
これらの分析結果から、評価機能を開発する力と、それを維持するコストが惜しまれていると考えています。
不景気なのも悪影響を与えており、その考えを変える事は難しいです。
あと、簿記との関連も大きいです。
経営者は帳簿を見て判断しますが、帳簿にはこの問題が表面化しません。
私は分からないものは売れないと主張しておりますが、日本のビジネス習慣はツテ・コネ・金で成り立っている場合が多々あり、
エンドユーザーもまともに評価しない事もあり、それでもまかり通る不条理な現実もあります。
日本はどうも「評価」が苦手なようです。
日本の経営は官民一体の独自路線で成り立っており、この構造を変えるにはお客様が変わらないと駄目だと思います。
しかし、不思議な事にお客様も「評価する」事に無頓着なので問題は根深いです。

Ahf

遅くなりましたが、K.Oumiさん、インドリさんコメント有り難うございます。

>「本来の組織としての存在意義」この部分を、どのように定義付けるかで、
>話はかなり変わってくると思いました。
(K.Oumiさん)

その通りですね。意義は何か、という点をどうするかによって何が問題かは大きく変わるところだと思います。人それぞれでこのあたりの問題は、質が変化することと思いますが、今回書いた話題も問題の一つなのではないかな、と思っています。

>私は分からないものは売れないと主張しておりますが、日本のビジネス習慣は
>ツテ・コネ・金で成り立っている場合が多々あり
(インドリさん)

このあたりも非常に悩ましいところであると思います。個人的には商品としての質を重視して貰いたいと思うのもありますが、購入する側の価値観によってもこのあたりで導かれる答えが違うというのが、非常に難しいところではないでしょうか。

ざっと見回してみても「なぜこの商品が売れるのか」と思うものも多々存在しますが、こまめなサポートを重要視している場合もあり、一概にどうこう言い切れないのがもどかしいですね。

作る側も使う側も、より多くの物事を目にしそれぞれでもっと考えるようになると状況は変化するのかも知れませんが、作る側であってもそれが難しい状況ですし。

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