地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

ゼネラリストは待望されているか

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 スペシャリストとゼネラリスト。古くからある話題ですが、ここ最近になって耳にすることが増えてきたように思えます。そして多くは「ゼネラリスト待望論」とでも言うべき内容のように思います。

 私個人としては、どちらかというとゼネラリスト寄りを目指してはいますが、前提として技術に対してのスペシャリストでありたいと考えています。エンジニアという職業に身を置いているのもありますが、IT 業界に関わるならそうでなくてはならない必要があるのではないか、そのように考えているためです。

 ですが、最近は「広範囲を見渡せる人材が不足している」という触れ込みでのゼネラリスト待望論を見かけます。必要なのは疑うところではありませんが、それを真に受けてしまうことには少々問題を感じます。

 日本ではゼネラリストという言葉が、管理職的な意味合いが強い面があります。もともとはそうではなく、広く技術や知識を蓄えているような人を表していたのですが、どこからかその意味合いは変化してきました。このコラムで言うところの「ゼネラリスト」とは、この変わってきた意味合いを持つゼネラリストに対してであり、本来のゼネラリストに対してではありません。

 まず、現実の状況を考えてみましょう。それぞれの勤務先の規模や状況にも左右されますが、本当にゼネラリストが、いやゼネラリストだけが不足しているのでしょうか。私にはあまりそのようには思えません。広範囲にわたって人が不足しているように感じています。

 近年の技術的傾向もあってか、スペシャリストたるエンジニアも同じように不足しており、その多くはあまり向上心を持たないエンジニアになってしまっているのではないでしょうか。私は別に「昔は~」というような懐古主義ではありませんが、それを差し引いても近年のエンジニア像はかなり変化したと思います。フレームワークなどの周辺技術の進歩により、行うべき実装量は格段に減りました。込み入った仕組みを知ることなく、ある程度以上のAPを作り上げることが可能となりました。

 ですが、私たちエンジニアの中でどれだけの人が昔以上のものを作り上げられるようになったでしょうか。技術の進歩により、同じことをするならば過去に費やした時間よりも、かなりの短縮化・効率化ができていると思います。しかし、それによって提供しているものがよりよくなったのか、と聞かれれば多くの場合は「昔と同じ」ものを提供していないでしょうか。単価自体が下がった、全体的な価格が下がったという背景もあるのは承知しています。短期間な案件が増えているのも同じくです。

 しかし、そのような背景を抜きにしたとしても、それほどの進化や発展を私たちエンジニアが提供できているとは思えません。このあたりを考えると、スペシャリストやゼネラリストといった話題とは別の問題要素が隠れているようにも思えます。

 間違ってはいけないのは、ゼネラリストが不要というのもありえない点です。何らかのシステムを作り上げる際には、ゼネラリストは必要です。そして、それと同じくらいスペシャリストも必要なのだと思います。

 大企業ではどうなのか分かりませんが、少なくとも私が勤めるような小規模な企業においては、どちらも必要であり、どちらも不足しています。割合としては、自分も含めてどちらにも到達していないまだまだ発展途上の人材が一番多いのではないでしょうか。

 そのような環境で必要なのは、即戦力としての人材よりも今後を見据えどのように自身のスキルを伸ばしていくか、という戦略なのではないでしょうか。流行に流されてゼネラリスト、あるいはスペシャリストを目指すのではなく、自身の中にしっかりとした考えを持ったうえで、どのような方向を目指すかが大切なのだと思います。

 一時の流行りに惑わされずに、一度自分たちの職務を見つめなおしてみるのが、今私たちエンジニアに求められていることなのかもしれません。

Comment(4)

コメント

インドリ

確かに、プロとしての質を持つ技術者が、圧倒的に足りないと思います。
その原因はやはり、「経営者が把握していない」点にあるかと思います。
プログラマは極める前に無理やり管理職にされ、なおかつプログラミングから遠ざけられます。
プログラミング一つとっても日本はこれです。
無理やり極めるのを邪魔するので、スペシャルリストは無理ですし、プログラミングには触れさせないと言った行為をするので、ゼネラルリストにもなれません。
また、技術を極めさせないという事は、製品の質を追求しない事を意味します。
お客様と情報処理技術をなめきって、「これぐらいでいいだろ」と経営者たちが考えた結果、極めるインセンティブがなくなり、スペシャルリストもゼネラルリストもいなくなったと思います。
この問題は、経営者の考え方を変えないとどうにもならないと思います。

コンサル系の人たちは、ゼネラリスト待望論を主張するのはもっともでしょうね。
ITコーディネーターって、もうかる商売なのでしょうか?
バブってた時代とは違い、世知辛い世の中、生産活動をしないと商売にならないと思うんですが・・・口先だけとか、絵に描いた餅を見せるのでは、もう通用しない。

現役選手時代はスペシャリストであっても後に名監督となった人はいくらでもいます。それなりにプロとしての精進をつめば、真のゼネラリストになるのではないでしょうか?

o_masa

ゼネラルリストですか・・
ERのように入口としては重要だとおもいます。
理想的には、その裏でスペシャリストが控えていれば良いのですが・・
ゼネラルリスト・スペシャリストが互いにフォローできる環境が重要でしょうね。
(ゼネラルリスト・スペシャリストの堺は微妙ですが・・
 深い穴を掘ろうとすれば、回りも掘らなければ崩れます。)

Ahf

みなさんコメントありがとうございます。返答が遅くなり大変失礼いたしました。

>この問題は、経営者の考え方を変えないとどうにもならないと思います。
(インドリさん)

私もこの問題を考えるとき、どうしても同じような考えに至ります。キャリアパスというか、企業が社員を支えてくれる環境が理想ですが、社員としてもそれに甘えず・・・と言いたいところです。残念ながらそれを貫くのは非常に大変な最近ですが。

>現役選手時代はスペシャリストであっても後に名監督となった人は
>いくらでもいます。それなりにプロとしての精進をつめば、
>真のゼネラリストになるのではないでしょうか?
(みながわけんじさん)

その通りだと思います。私もプロとしての精進をつめば可能だと考えます。
ただ最近はそうでない人が目に付くのが非常に残念なところで、行き着く先が中途半端な状態だというのが困るところではないでしょうか。

>ゼネラルリスト・スペシャリストが互いにフォロー
>できる環境が重要でしょうね。
(o_masaさん)

そうですね。どちらか片方だけでは仕事として質の向上は難しいと思いますので、お互いに補填しあえる関係になれれば、と思います。

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