いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

仕事だけじゃスキルは伸びない

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「仕事をしていればスキルは伸びる」は信じない方がいい

「仕事をしていればスキルは伸びる」と言っている人にはだいたい二種類いる。一つは低いレベルで仕事をこなして満足している人。この人は、仕事自体には高いスキルが求められていない、もしくは、スキルではなく技術以外の要素で仕事を進めている人たちだ。人間関係や書面上の記述ばかり追いかけているような人たちだ。こういう人と仕事をしていると、昇級はできるかも知れないが技術力は伸びない。

もう一つのタイプは「仕事をしていればスキルは伸びる」といいつつ、業務時間外でガンガン勉強している人だ。本人たちの感覚的に時間外の学習も仕事に含まれているのだろう。学習が習慣化してしまい、もはや時間をかけている事すら認識しなくなったのかもしれない。自覚をせずに、業務時間外で勉強して実務で実践するというスタイルを確立している。そりゃ、スキルが伸びて当然だ。

低レベルで満足するタイプの人が、業務時間外でガンガン勉強している人の感覚で「仕事をしていればスキルが伸びる」と思いだしたら最悪だ。認識と実情に大きな差が生じるようになる。特に日本のお国柄で、努力した内容はあまり口外されることがない。陰ながら努力してスキルを身につけても「大した事はやっていない」と言う。低いレベルで満足する人はそれを真に受ける。

結論としては、「仕事をしていればスキルは伸びる」という言葉は信じない方がいい。経営者レベルの人が人材育成の重要性を認識していて、一定の訓練期間が用意され、専任で技術力の高い教育担当がいる。現場に出ても結果が出せるようになるまで綿密なフォローが行われる。そういう会社で「仕事をしていればスキルは伸びる」と言うのであれば多少は信じてもいいが、そんな会社は希だ。

教えなきゃ覚えないのか

基本的に人は教えなければ覚えない。よく、「技術は自分で学ぶものだ」とか、「仕事は盗んで覚えろ」なんていうが、それは教える側の願望だ。自分が教えるのが面倒くさいのと、自分の技術を覚えられて相手に先を越されそうで嫌だ、聞かれても答えられる自信が無い。本当の理由はそんなところだろう。ズバリ、教えないのではなく、教えられる器ではないのだろう。

学校で勉強教わった日本人の学生と、数百年前の農民に小学生一年生レベルの算数をやらせたとしよう。問題じたいが簡単なのであまり差が出ないかもしれない。しかし、中学レベルの数学、高校レベルの数学と問題の難易度を上げるにしたがって大きな差が出てくる。教えるというのは先人の知恵の引き継ぎだ。有ると無いでは大きな差が生じるのは明白だ。

自分で勉強すべきとか、プロなら自分でなんとかしろ。そういう発想から、教えないけど覚えろのような発想に発展したのだろう。ただ、本当に自分がプロなら、教えるくらいなんてことはないはずじゃないだろうか?経験則から言わせていただくと、自分が頑張るより下についた人を育てた方が楽ができる。それに、ちゃんと与えるべきものを与えないと、人がついてきてくれない。

教えなくてもスキルを身につけることは、確かにできる。だが、それをやらせた人は組織についてこない。外国はどうか知らないが、日本では教育機関で実践的なスキルをあまり訓練していない。そして企業も技術を教えない。誰も教えないで個人の努力で技術を身につけろというのも無茶な話だ。「仕事をしていればスキルは伸びる」というのも、単なる根性論でしかないように思う。

ビジネスとスキルアップ

ビジネスは短期決戦だ。いかに短い時間で多くのお金を稼ぐことが目的になる。スキルアップは逆だ。身につけるのに必ず時間はかかる。その間、常にお金を払い続けなければならない。確かに、短期決戦でスキルアップする手段や考え方はあると思う。だがそれを一般的には「一夜漬け」と呼ぶ。資格の取得には有効だと思うが、自分の能力を底上げには効果が薄い。

もしあなたがキモオタと呼ばれる人種だったとしよう。来月めどで爽やかナイスガイになれるだろうか?人間、そんなに簡単に変れるものではない。スキルにしても同じだ。結局は積み重ねだ。どんなに精神論を説こうとも、重要な立場を任されようと、積み重ねたものの絶対量はごまかせない。

整理して考えるとすごくシンプルな話だ。立場が上がったからといってスキルが上がる訳でもない。成果を出したからといってスキルが上がる訳でもない。単純にどれだけ技術的要素に関わったか、それだけだ。もちろん、技術的要素を駆使して成果を出せばスキルアップにつながる。Excelごっこでその場をしのいでもスキルにはつながらない。

やったことしか身に付かない。それだけだ。自分を能力以上によく見せようとすると、自分が何を積み重ねたか見間違い易くなる。スキルを伸ばしたければ、普段から自分が何をやっているのか、しっかり観察する必要がある。ビジネスは背伸びしてナンボだ。そういう意味では、ビジネスとスキルアップは同時にやるには相性が悪いと考えている。

技術者の待遇がクソだから仕事だけじゃスキルが伸びない

仕事だけでスキルが身につかない最大の理由は、仕事の都合で新しい技術を実践しにくいということだ。自由に身につけた技術を試せる機会はプライベートに限られる。仕事で使っている技術がショボいと、仕事を頑張ってもショボい技術しか身につかない。むしろ、そのショボい技術が現場でも通じる技術と認識されて、その人のポテンシャルを大きくそぎ落とす。

日本人の労働時間は長い。仕事をかなり頑張っている。仕事を頑張ることでスキルが伸びるなら、日本はとっくにIT大国になって、シリコンバレーを駆逐しているはずだ。実際のところは日本のIT技術のショボさは先進国で最低レベルだ。普通に考えて、クソほど効率の悪い仕事を頑張ったところで、スキルなんて伸びるはずがない。そもそも、残業が多すぎて、ものを覚える余裕なんてないように思う。

技術の勉強を業務時間外にやる云々の前に前に、定時で仕事おわらないし、技術を勉強できるだけの給料払われていない。時間がなければ当然、技術の勉強なんてできない。努力に対して給料が見合わなければ、技術を勉強する気など起きない。スキルアプに対して組織的なフォローもない。技術者に対する待遇がクソだから仕事やってるだけではスキルが伸びないのだ。

本気でスキルを伸ばしたいなら世界へ出るべきだ。スキルを伸ばしていくには日本は条件が悪すぎる。実際、世界に出た日本人は活躍している。仕事だけでスキルが伸びるか云々議論するのもいいが、条件を変えた上で比較、検討しないと結論など出ない。火消しエンジニアとしていろいろな条件の下で働いた結論としては、「仕事だけじゃスキルはのびない」だ。炎上するような仕事では頑張ってもスキルは伸びない。

Comment(2)

コメント

仲澤@失業者

新入社員が入る時期ですし良い話ですね。


母は土方の稼ぎで私の学資の足しにしてくれましたが、
おまえは土方なんかやるんじゃねぇと言ってくれてました。
今のIT業界を見ると、土方と大差ない仕事もありますしね。

昭和生まれ

昭和は、ほっといても無茶やっても、多くの分野が伸びた時代。その伸びに乗っかった人が、偉くなって自分の成功体験で組織を仕切っているけど、今の時代に全く合ってなくて昭和の勢いで逃げ切ろうとしているように見えます。


力ある人は、逃げて当然。


今の時代は、昭和の名プレーヤーではなく、今を正しく認識したマネージャーが必要です。


最下層の管理職、昭和の経営者と平成の部下に挟まれて本当に辛そうです。

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