エンジニアとしてどうあればいいのか、企業の期待とどう折り合いをつけるのか、激しく変化する環境下で生き抜くための考え方

高度IT人材と、IT企業のあり方について考えてみませんか

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 ここしばらくほとんど時間がとれずに、かなり間が空いてしまいました。年末近くなってようやく余裕が出てきましたので、復帰させてもらいます。

 先日、ある団体で企画されたパネルディスカッションに出ました。そのパネルの主題は、「情報戦略実現に向けた高度IT人材の役割と育成」です。

 大手ITベンダ、金融系の情報システム部門、会員代表、わたしと4名のパネラー構成です。モデレータの方の絶妙な誘導で、進行自体はスムーズでしたが、気になったことが何点かありました。

■「高度IT人材」について

 「高度IT人材」の共通認識ができていないのです。

 おおむね話の流れでは、「下流工程を十分経験して育ってきた上流工程に長けた人材」という感覚でしたが、どうもわたしにはスッキリしませんでした。

 確かにそれは必要条件の1つと考えられるのですが、十分条件ではないと思うのです。当然、ユーザー企業とIT企業では異なるとの前提はあると思います。

 さらに話の中で、パネラーの一人からITSSのレベル4以上の人材だ、という話が出てきてスッキリしないことに追い討ちをかけました。どういうスキルを持つかということも1つの要素ではありますが、これらだけではピンとくるものにはなり得ないと思います。

 高度IT人材というと、どうしてもITスキルが高い人材、つまり上流ができることや、ITSSの高レベルという発想になってしまうようです。

 わたしは、人材戦略の一環であるリーダーの育成プラン策定と、それに関る一連のコンサルティングをしていますが、ある企業で、ここしばらく次世代リーダー候補というべき、30代前半ばから40代初めにかけての中堅層の方々30名と話を続けています。

 そこで一番驚いたのは、5年後の自分のゴールは? の問いにまともに答えられた方が1人もいなかったことです。

 以前のコラムで、「なりたいと思う姿を描けない限り、そうなれるわけがない」というタイトルで書いたことがありますが、まったくそれを地でいっているようなものです。

 大変抽象的な表現ですが、わたしには「HowではなくてWhatが定義でき、周囲に示しリードして結果を出せる人材」が必要な人材であり、「高度」も「IT」も基本的に関係ないと考えています。

■IT企業のあり方について

 気になったことのもう1点ですが、質問の中で「情報処理学会で報告された内容として、グーグルが今や技術者というより、統計などの分析者を採用している。育てるにはどのようにしたらいいか」といった質問が出ました。

 この質問に、日本のIT企業と人材の戦略のなさ、その根深さが表れていると感じました。

 うまく意見できずにもどかしかったのですが、グーグルには戦略があって目標設定が柔軟で明確です。したがって、もっと先を見ているのであって、現在の採用計画などの取り組みは、一時の手段にすぎないと考えます。それを目的のように捉え、右に倣(なら)えとは……。

 少し観点は異なりますが、前職の日本オラクルのときの面白い話があります。

 6、7年前の話ですが、戦略ミーティングで3カ月に一度、シリコンバレーの本社に出張していました。そのときに見る見るうちにインド人の技術者が増えていくのを目にしました。その1年半後には急速に見かけなくなりました。

 彼らは仕事をインドに持ち帰ったのです。どんな仕事かというと、データベースの設計・開発です。オラクルのビジネスのコアであるデータベース開発を、です。それ以前から24時間サポートで、時間帯で拠点分けしてサポート・サービスを提供していましたが、これにはさすがに驚きました。インド人が英語をしゃべれて勤勉であることや、コスト削減効果を考慮しても、かなりのリスクがあるように見えます。

 現時点の状況を見て評価するのは容易ですが、これは経営戦略に基づく方法であって、さらに先を見た目標を持っているということを理解する必要があります。

 我々の悪いところは、手段を目的化することです。

 何に関しても浅すぎる流れを断ち切って、日本流の迫力ある企業とあるべき人材を創造するには、リーダーシップが重要だと考えています。

 おかげさまで(?)、その一翼を担えればと深く決意することになってしまいました。

 皆さんの考える「高度IT人材」をぜひ教えてください。高度IT人材という言い方が気に食わない方もいらっしゃるでしょうが、別の視点でもかまいません。

 また、「日本のIT企業のあり方」も議論したいテーマです。ご意見をお待ちしています。

Comment(20)

コメント

wona

はじめまして。
同じく抽象的な言い方しかできませんが、高度IT人材というからには
「何かしらの枠組みを考え出せる人」となるでしょうか。
「高度IT人材」という言葉自体が、発想を小さくしている感もありますよね・・・。

放浪者

> 「高度IT人材」
「IT」と修飾しているわけですからITSSのレベル4以上というような定義は
結構的を得ていると思います。

「高度IT人材」の話の後に、IT企業のあり方で戦略がないと述べられていますので、
「高度IT人材」と企業戦略を結び付けたいのかなーとか勝手に想像してるのですが、
私は、企業戦略は経営者の管轄、ITに関することは「高度IT人材」の管轄と
区別すべきと思います。

IT企業の経営者が「高度IT人材」である必要はないと思いますし、
「高度IT人材」にも経営者的知見は必要ないと思います。(あるに越した事は無いですけど)

企業戦略まで考えることができる人に対しては、「高度IT人材」という括りではなく
「高度経営人材」のような別の括りで議論してもらった方が、話がすっきりするような。

だから「高度IT人材」=「ITSS高レベル」でいいと私は思います。

インドリ

こんにちは。
高度IT人材という名称そのものが目的を見失っていると思います。
現実は情報処理技術者が居てスキルに差があるだけです。
上流下流と区分し、階級社会的に物事を見ている時点で現実を見ていません。
本来はフラットな世界な筈です。
階級=給与という武家社会風の考えは何時になったらやめるのやら・・・
その発想を持っている限り日本は何時まで経っても三流です。
そんな区分を取り払って、常に全ての工程を体験させるぐらいの事をしなくては駄目です。
そうしないと、直ぐに知識は陳腐化し、世間知らずのプロジェクトマネージャーが大量発生するだけです。
何時まで経ってもデスマーチが発生する事になるでしょう。
それに、私もIT企業とやらに戦略性がないと思います。
だから経営者は無知でもいいなんて言葉が流布し、人月単価に依存する結果になるのでしょう。
あまりに遅れすぎていますので、早くまともな業界になる事を祈っています。

EarlGrey

私も放浪者さん同様、ITSS高レベルで的を得ていると思います。
ベースがIT人材である以上、ITの技術者であるわけで、
持っている技術が高度であれば、高度IT人材と捉えてよいと考えます。

一つ指摘しておきたいのは、
「高度/高度でない≠上流/上流でない」
というところです。
担当部分が上流であろうと下流であろうと、
高度な仕事をされる方は素晴らしい仕事をされますし、
それ相応な方はやはりその程度です。

さて、ご指摘の通り、『高度IT人材』という用語について、
コンセンサスが取れていないところはあろうかと思います。
高橋さんはおそらく、戦略級の指揮官を想定しておられ、
私は基本的に、戦術級の指揮官or実際の兵隊さんを想定しています。

戦略級の指揮官であれば、通常経営能力は必須でしょうが、
戦術級であれば、意思の疎通に苦労しないレベルまでで十分ではないでしょうか。
その意味で、経営知識ゼロよりはあったほうがいいのは確実ですが、
お互いの配慮次第で、ゼロに近くても回すことは不可能ではないのでは、と。

現実問題として、経営のプロとITのプロ、双方が分業しなければ、
「高度」な仕事はできない時代になってきていると思います。
結局、分業の際の『配慮』が、お互い欠けているだけだと思うのですが。

ノンビ

私もITエンジニアのはしくれですが、高度IT人材なんて意識すらしてないです。
 上から目線で育てようと企てることこそ、愚の骨頂だと思います。「会社の指定する資格攻め」もそうです。

 ここで言われる高度IT人材が育たない理由は、

1.出る杭を打って、ムリヤリ会社が育てたい方向に持っていこうとするから凹む。→戦略がないから必要な人材が見極められない?

2.会社の仕事に関係ない個人で興味のある技術を持っていても、伸ばす努力を無駄だと怒られて凹む。→勝手に伸びてもらったほうがよいと思う。

3.ちょっとコンプライアンス的にちょっとでも危ない人は、すぐ叩かれる。→ウイルス作者を採用しない、Winny作者を採用しないのが典型例。外国だと雇っているのに。

というものがあるように思います。

 育てたい分野が確固として自分の中にある人は、自腹で勝手に育ちます。その分野のオタクになります。資格はないけど、そういう人こそ上から下まで網羅している「高度IT人材」じゃないでしょうか?才能の無駄遣いをしてる、やりすぎエンジニアはいっぱいいます。やりたい奴はどんどん勝手にやらせて、それをうまく扱ってあげるリーダーシップのある社長や、上長がいないのが問題だと思います。

高橋秀典

wonaさん、

 コメントありがとうございます。
私の知る限り、「高度IT人材」という言葉は経済産業省、特に情報処理技術者試験やその周辺の委員会から出てきたようです。当初は聞きなれない言葉だったと思いますが、今では結構あちこちの報告書など公的ドキュメントに登場します。

 しかしながら、受ける印象はまちまちで、wonaさんが言われるように、かなり小さな印象を受けて、目指そうという感じではないですね。抽象的で分かりにくいものではなくて、エンジニアが夢を持てるような現実感のある表現があればいいのですが・・・。
 私が思いつくのは、ITSSのITアーキテクトやITサービスマネジメントくらいですが、まだまだ浸透していないですね。

高橋秀典

放浪者さん、

 ありがとうございます。
たしかに、経営者と技術で支えていくエンジニアは別だと思います。
育成計画も共通点もあるでしょうが、基本的には別物ですね。

 ただし、経営戦略とエンジニアを結びつけるものが必要だと思っています。
本来は、経営者にそれができれば問題ないと思いますが、技術が分かる経営者は余り多く無いと捉えています。そうすると、技術側で経営戦略や事業戦略を認識して方向を間違わないように、リードしていく人材も必要かと。

 しかし、それを「高度IT人材」というには確かに無理がありますね。

 ITSSを策定しているメンバとして、ITSSをITエンジニアのベースとして認めていただいているのは、とても嬉しいことです。

高橋秀典

インドリさん、

 お久しぶりです。

 同感です。おっしゃるように、システム開発や運用に関っている人材は、それぞれがプロフェッショナルであり、内容による上下はあるべきではないと思います。
 例えばよくある話ですが、USではウエイトレスであってもプロ意識があり、自分の職にプライドを持っていますね。(差別的表現ではありません)

 これも私の知る限りですが、SIerに代表されるIT企業の経営者で、「うちには戦略なんてないんだ」と平気でのたまわっている方も大勢いらっしゃいます。客の言う通りにしないといけないので、戦略など邪魔になるそうです。

 そんな魅力の無い企業に誰が残りたいと思うか、ですね。

 数千人の企業でさえそうなのですが、返って小回りの聞く中小の経営者の方が、素晴しい考えをもたれているのが私の印象です。

高橋秀典

EarlGreyさん、

 コメントありがとうございます。

 私の感覚では、結構経験を積まれているシニアな方のほうが、高度=上流のような枠にはめた考えをされるようです。議論になると、人の意見を聞かないのも特徴ですが・・。

 それと、コメントを読んでいて自分の考えが結構バランスがよくないことに気づきました。おっしゃるように、企業側の視点で捉えていて、どうもビジネスリーダーを意識しすぎている感じです。企業にコンサルテーションしている立場なので、どうしてもそうなってしまうのかと、反省しきりです。

 そして、言われるとおり役割分担は必要で、具体的なミッションまで落とさないと共通認識できないですね。ありがとうございました。

高橋秀典

ノンビさん、

 具体的なコメント、ありがとうございます。

 私も経営者、管理者、リーダの資質に少なからず問題があると考えています。
特に、「目標」と「目的」の、ごっちゃになっている方が如何に多いかと言う点です。

 数字しか出さない人などは、典型パターンでしょうか。

立場が人を変えるという言葉は、いいほうに使われることが多いですが、逆になっていることもかなりありそうです。

 おっしゃるように、好奇心=チャレンジ精神で、周りから何といわれようが、自分のなかでPDCAを廻せる人こそ自己実現ができ、企業にも必要な人材だと信じています。

放浪者

> 育てたい分野が確固として自分の中にある人は、自腹で勝手に育ちます。その分野>のオタクになります。資格はないけど、そういう人こそ上から下まで網羅している>「高度IT人材」じゃないでしょうか?才能の無駄遣いをしてる、やりすぎエンジニア>はいっぱいいます。

ニコニコ技術部とかほんと無駄遣いしてますよね(笑
あのようなhackerやgeekの方々がいるわけですから、
まだまだ可能性に満ち溢れてるはず。

あとは経営者がその人たちを使いこなす気があるかどうかですよね。

しっぱ

はじめまして。しっぱと申します。

コラムを拝見して思ったのは。

「日本語って見た目や語感が大事なんだね」

ってことくらいですね。
基本的にはEarlGrey様と同じように思っていますが、

「人材」

という言葉がクセ者ですね。

皆様が考えるのはまず「自分の立場で」という視点になるように思います。

①技術者としての視点での「高度」の
 ・技術レベルが高い
 ・新しい技術を学んでいる
 ・効率の良いシステムを作る

などかなと思います。

②経営者(又はマネジメント職)としての視点
 ・クライアント要望をITで効率化するアイデアを出せる
 ・部下の教育をしつつプロジェクトを円滑に動かす
 ・問題解決力
 ・品質管理

などになるかなと思います。

どちらも私の思い付きですが、ここで問題になるのが「人材」って言葉かなと思います。
立場も違えば職務も違う方々を「高度IT人材とは?」という形で聞いてしまっていいのかな?と思います。

高度IT技術者
高度ITプロジェクト管理者

どちらも今、私が勝手に作り出してしまった言葉(ありきたりなのでどこかで定義されているかもしれませんがw)ですが、少なくとも「人材」という一括りにはできないかと思います。

おそらくこの葛藤を利用してディスカッションが活発になるように仕組まれているとは思いますが^^;

でも、やっぱり日本語は難しいなとw

ちなみに
>「HowではなくてWhatが定義でき、周囲に示しリードして結果を出せる人材」

この部分非常に好きな言葉でした!
私自身現在はSEなのかプリセールスなのか自分でもよく分からん仕事をしていますが、高橋様のおっしゃられている部分に行きつく過程にある「why」が大事だと思っています!

クライアントの要望も可能/不可能ではなく「why」の精神で
「なぜ必要なのか?」
「どれだけ必要な機能なのか?」

疑問は連鎖的に発生します。その連鎖がプロジェクトの最終部分での矛盾などをある程度防げるのではないかと個人的には思っています。

はなしがそれました・・・^;
大変失礼しました・・・・・

高橋秀典

しっぱさん、

 コメントありがとうございました。

 現場では、エンジニアとか技術者という言葉は確かによく使いますが、「人材」は使わないですね。それを出したとたんに、人によって解釈や使い方が異なるので、結果的に意味不明になるのかもしれません。

 そうだとすれば、「人材」自体が第3者的言葉と考えられますね。場合によっては、指摘されたように目線や捉え方が変わってくるのだと思います。

 言われるように、・・技術者や・・管理者という表現は、結構しっくり来ます。

 また、最後に付け加えられた「Why」を意識するというのは、最近薄れてきたとつくづく思います。

 言われたことだけをやるという傾向が強くなっていると思いませんか?

気づかないというか、指摘すれば、そうですねということになるようですが、気の利いた対応を目にすることが極端に少なくなりました。

 昔は、小集団活動と称して、自分たちの身近な課題を話し合って何とかしようというアクションは当たり前だったと思いますが、最近はISO900XやJ-SOXのおかげ?か、標準的な仕組みに全体を合わせる流れになっていて、小集団活動のようなものは、反比例して減少しているそうです。そうすると、逆に範囲外のことに手を出してはいけないという雰囲気になっていると思います。
 こういったことも、気が利かないことが普通だという風潮を生み出しているような気がしてなりません。

teru

はじめまして。

このお題とリンクするか分かりませんが。

私自身、プログラマから初めて、設計、要件定義など、
いわゆる「上流」なるもの学んできたり、
プロジェクト、組織のマネージメントも経験してきたりしたのですが、
今私自身がぶち当たっている壁は、こんな感じです。

「結局のところ、仕事を取ってくる(あるいは創り出す)ことができなければ、
これらのスキルが意味をなさない」

正直、技術者上がりの私にとってこの壁がとてつもなく高い壁になっていて、
未だ、苦闘している感じです。

そもそもIT業界自体が、
これほどの不景気を経験していなかったので、
リーダーなど、上位レイヤーの人達でも、
経営戦略的ことを意識しなくてもやっていけたのだ思います。

>5年後の自分のゴールは?
>の問いにまともに答えられた方が1人もいなかったことです

おそらくこれは、「仕事を取ってくる(創り出す)」ことは、
別の人間がやることだとまだ思っているからではないかな?
と勝手に考えてしまいました。スミマセン。

とはいえ、個人の戦略次第で、まだ上積みが望めるという点では、
ほかの製造業と比べるとまだマシなのかなとも思いますが。。

高橋秀典

teruさん、

 コメントありがとうございます。

 言われるように、自分は仕事を取ってくる役割ではないと考えているエンジニアは少なくないと思います。また、別の観点では、与えられた(与えられると思っている)仕事の中でスキルアップ、キャリアアップしていくことも難しいと言えますね。

 仕事は選べないので、うまく成功パターンになっているプロジェクトにアサインされればラッキーで、そうでなければ運が悪かった、という話もよく聞きます。

 これだと、別にメンバは誰でもいいことになってしまいますね。それなら単価の安いアジア勢に・・・というのは自然な流れになってしまいます。

 だからと言って、自分の力ではどうにもならないと、嘆いているだけではどうしようもないと思います。

 営業とエンジニアが役割分担されていれば、たしかに仕事を取ってくるのはエンジニアのメインミッションではないかもしれませんが、コンサルタント的に動いてマーケティング活動や、提案活動に関ることができれば少し先を見通せることもできるようになります。

 そういうチャンスや場を与えるのは経営者の役割で、方針や戦略を明確にして社員に浸透させる、社員はそれを理解して行動に移す、という構図ができれば最高です。

 しかし、経営者の方が・・・、うちは営業なんていないよ・・・ではエンジニアはどうすればいいか・・・、堂々巡りで解が見えないのが常で、私はだからこそ、後ろ向きの方々には早くどいていただいて、若くてバイタリティのあるスマートな方々が経営者に就くべきだと考えています。
 (そんな簡単なものではないし、それだけでは解決しないかもしれませんが―。悩み多いですね)

toke

スキルやレベルをITSSという形で提示したことは、曖昧であったことが
明確になった効果があったと思います。

ただ、ITSSによる負の視点は、一定の枠組みでしか人材を判断することが
出来ず、枠を横断しスキル転換する、可能性を見出す、成長させる形には利用
されていないことがあります。

ITSS自体は、あくまでも一定のものさしを与える手段であったように感じて
いますが、実際にはITSSに従って判断をする目的として使われているシーンを
多く見ることができます。また、すべからくITSSに従うべき、ITSSの枠組みに
無いものは評価されないといった風潮も見られます。

また、5年・10年後というスパンにおいて、自分がどうありたいかを見いだし
にくいのは、どんな人になりたいのかという目標を見失っていることがあるかも
しれません。近くにいる上司や先輩、技術者。こんな人になってみたい、こんな
人になるためには何をしたんだら良いのだろうか?何故この人はこんなことが
できるようになったのか?と考えることも少なくなっている気がしています。


結論的に難しいことかもしれませんが、
 <ITSSが無かった時代>
   技術者が自身の行っていることに自信を持って、問題解決・成果を出して
  いた。(出すように努力していた)
   しかし、成果が給与や査定などに反映されない不満が残った
 <ITSSが提示された時代>
   技術者は、ITSSに従って成果を出せば認められるようになった
                    (なってきた)
   ITSSで評価できないものは評価されないため、記載されていること
  以外のことについての取り組みが消極的になってきた。

 定性的・定量的な部分と抽象的な部分をあわせて評価する方法や、レベル
上げをするためのストーリーが見える形にならないと、常に自問自答のジレンマ
を続けて方向性が見失ってしまう気がします。

 かといって形を作ってしまうと、右へ習えでその形だけに従ってしまう
危険性もあるので、常にアップデートを繰り返して永遠に続く完成形への試行が
必要に感じています。

 散文的で大変読みにくいとは思いますが、記事を拝見し感じたことを書き綴って
みました。

はじめまして、サトマモです。

面白いコラムで色々と共感する部分がありました。

・高度IT人材とは?

これも確かに定義が曖昧で、共通のイメージが持てていないところですよね。
私は高度IT人材とは何かを考えたことはないのですが、自分自身としては、得意とするITスキル、技術に対する先見性・情報収集力、仕事人としての素養(コミュニケーション、リーダーシップ、ビジネスマインド)を兼ね備えたビジネスパーソンを目指しています。

かたや、神の域に達するまで偏ってスキルが発達していれば、そういう方も間違いなく高度IT人材であり、必要な人材なんだと感じます。

後は、もっとお客様へ影響力を持てるエンジニアやリーダーが育たないといけないと思いますね。


・日本のIT企業のあり方

このテーマは非常に興味ありますね。何かディスカッションできる場がいただければ、ぜひお話したいところです。
私の場合は、IT企業というよりはお客様を含めたIT業界のあり方に、ものすごい歪みがあるんじゃないかと感じています。
すぐに変わらないし、変えられないことではありますが、将来的に日本のITを発展させていくのに、地道な意識改革を進めていく必要があるのではないでしょうか。

と、言いっぱなしのコメントで恐縮ですが…。

高橋秀典

tokeさん、

 コメントありがとうございます。

 ITSSについて、個人の意見としてこのくらい突っ込んだ内容を聞けることは、あまり多くありません。
 ほとんどの場合、企業が取り入れてエンジニアが半ば強要されて使わされているという状況で、エンジニアからはあまり積極的な意見が聞けないわけです。

 ITSSは、どのようなビジネスモデルの企業でも使えるように、共通的な部分のみ定義されており、そのまま使えば言われるように過不足があったり抽象的過ぎたりします。
 もともと思想的には、共通化されたものをベースに、企業としての目標や計画を込めたものとして作り上げることを前提に考えられています。

 ところが、IT業界では比較や自社アピールが一般的になっていて、まるで情報処理試験やベンダ資格のように、うちは○○職種のレベル○が何名いる、というような使われ方が先行してしまいました。

 一方で、ITSSは「ビジネス目標達成に貢献する人材を育成する」、という命題で出来上がったにもかかわらず、大手ITベンダが中小SIerの人材調達に使ったりしています。しかも、まったく人材育成とは縁のない購買部門が単価交渉のために使っているのが実態です。

 また、職種は人材像ではなく、「単なるカテゴリ」なので成果を出すための能力定義(コンピテンシー)は範囲外になっています。これも分かりにくいですが、「ITSSは各企業で作り上げるために、ベースとして用意されたもの」と考えればしっくりきます。

 ITSSの策定は、経済産業省系のIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が責任元ですが、そのような状況をよく認識されていて、打開するために活用に関する実証実験やドキュメント作りを進めています。このような動きは今までなかったもので、期待が持てると思っています。

 ただし、企業導入が主体なので、どうしてもtokeさんのような意見を吸い上げる方法がないのです。
 結果として、エンジニア個人の話は置き去りにされていると言えます。ここを何とかしないと、本当にいいものにはならないと考えています。

高橋秀典

サトマモさん、

 コラムに興味を持っていただいて、ありがとうございます。

 「高度IT人材」というワードのよしあしは別にして、ITに携わる人材が目標にできるものであってほしいと思っています。

 以前も書きましたが、私もはじめに目標としていたのは、OSやDBの「ITスキルの高い人」でした。周囲にそういう人を見つけて、この人のようになりたいと思っていましたが、それなりに分かってくると「仕事で成果を出せる人」に変わってきました。
 サトマモさんの言われるビジネスパーソンですね。そう思うようになってからは、以前ほどITスキルにこだわらなくなりました。

 大事でないというわけではなく、目的にあったバランスのよい人材として分かりやすく定義できれば、企業だけでなくエンジニア個人にも役立つと思います。

 話はそれますが、私は歌舞伎が好きで女形の坂東玉三郎の言葉を気に入っています。

 「型破り」というのは、何年もかかって基本形を鍛錬して習得した上に成り立つもので、基本がないのは「形無し」というのです。

 私もIT業界の状態は、他業界に比べて特異なところが多いと感じています。
しかも、その悪い面が特に目だってきているような気がしてなりません。

 言われるように、問題意識を持つ者同士が議論でき、発信できるような場があると良いですね。

高橋秀典

サトマモさん、

 コラムに興味を持っていただいて、ありがとうございます。

 「高度IT人材」というワードのよしあしは別にして、ITに携わる人材が目標にできるものであってほしいと思っています。

 以前も書きましたが、私もはじめに目標としていたのは、OSやDBの「ITスキルの高い人」でした。周囲にそういう人を見つけて、この人のようになりたいと思っていましたが、それなりに分かってくると「仕事で成果を出せる人」に変わってきました。
 サトマモさんの言われるビジネスパーソンですね。そう思うようになってからは、以前ほどITスキルにこだわらなくなりました。

 大事でないというわけではなく、目的にあったバランスのよい人材として分かりやすく定義できれば、企業だけでなくエンジニア個人にも役立つと思います。

 話はそれますが、私は歌舞伎が好きで、女形の坂東玉三郎の言葉を気に入っています。

 「型破り」というのは、何年もかかって基本形を鍛錬して習得した上に成り立つもので、基本がないのは「形無し」というのです。

 私もIT業界の状態は、他業界に比べて特異なところが多いと感じています。
しかも、その悪い面が特に目だってきているような気がしてなりません。

 言われるように、問題意識を持つ者同士が議論でき、発信できるような場があると良いですね。

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