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第58回 人脈を広げるということ

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 キャリア相談を受けていると、よく「人脈を広げる」というキーワードが出てきます。一見すると聞こえのいい言葉ですが、今回はこの言葉について掘り下げてみたいと思います。

■次のステップに上がるため、人脈を広げます!

 独立をしたいと考えているITエンジニアがいました。この人を仮に山口さんとします。山口さんは自分のキャリアを実現するためには人脈を広げる必要があると考え、起業家が集まるコミュニティに参加しました。本人は「ここでたくさんの起業家と知り合いになれれば人脈が広げられる。これで、独立にも一歩近ける! 」と意気揚々でした。

 しかし、結果は形だけの名刺交換をするだけで、ほとんど誰からも相手にされなかったそうです。それでも山口さんはめげずに、名刺をもらった起業家にアプローチをし続けました。その熱意もあって、最初はほとんどの起業家が相手をしてくれていたそうです。ただ、それも最初のうちだけで、一人減り、二人減り、徐々に相手にしてもらえる数も少なくなり、最終的にはコミュニティに参加したときと同様、誰からも相手にされなくなったそうです。

■人脈って何?

 しかし、山口さんには人脈が広がらなかった理由がさっぱり分からなかったそうです。これまで積極的に動いてきたし、たくさんの起業家とも交流を持とうとやってきた。にもかかわらず、起業家から相手にされないのは、自分が起業家じゃないから相手にされないんだ、という結論に至ったそうです。

 そもそも人脈って何でしょうか? ネットで調べてみると、以下のように書いてありました。

ある集団・組織の中などで、主義・主張や利害などによる、人と人とのつながり。(デジタル大辞泉より)

 この記述をみると、山口さんがなぜ人脈を広げられなかったのかがみえてきます。人脈とは人と人とのつながりですが、その前提として『主義・主張や利害』などが絡んできます。主義・主張については思想や思惑など一言では語れない部分があるので、ここでは利害にスポットをあて、山口さん、起業家それぞれの視点から利害を考えてみます。

 まず、山口さん。山口さんには起業家とつながりを持つことで、人脈を広げるというメリットがあります。逆に、山口さんには起業家とつながりを持つことによるデメリットは特に考えられなそうです。

 次に、起業家。起業家が山口さんとつながりを持つことのメリットは何でしょう? 将来性のようなあやふやなモノはあるのかもしれませんが、明確なメリットは出てきません。逆に、デメリットとして、山口さんとつながりを持つことで、山口さんの相手をしなければならないという時間的な拘束が考えられそうです。

 こうやってみてみると、山口さんと起業家との間には利害が一致していません。これでは、起業家から相手にされなくなるのも当然といえば当然の結果です。

■どうすれば人脈を広げられるのか?

 少し乱暴ないい方になりますが、人脈を広げることを利害の一致による人とのつながりとするならば、人脈を広げるためにその人ができることは、相手の利になることを提供することしかありません。そこを正しく見極めず、山口さんのように一方的なアプローチばかり続けていたら、いつまで経っても人脈を広げることはできないでしょう。このように考えると、まず最初に山口さんが起業家に対して何か利になることを提供する必要があったのではないでしょうか。

 筆者は山口さんにこの話をし、起業家の利になることを考え実践するように勧めました。山口さんはいろいろと考えた結果、起業家が実施するセミナーや研修のアシスタントを無償で行うことを始めました。実際には、無償とはいえ、いきなりアシスタントとしては使ってもらえなかったそうです。しかし、繰り返し、繰り返し、根気強く起業家にアプローチをした結果、少しずつアシスタントして使ってもらえるようになったそうです。その結果、山口さんは何人もの起業家との間に接点を持つができ、当初の目的である人脈を広げることに成功したそうです。

 その後、しばらく経って山口さんと話す機会があったのですが、当の山口さんは起業家のアシスタントに一生懸命で、人脈を広げることをすっかり忘れてしまっていたそうです。一生懸命アシスタントを続け、起業家に利になることを続けた結果、いつの間にか人脈が広がっていたそうです。

 そんな山口さんも現在は独立され、一起業家として忙しい日々を送っておられるそうです。

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