髪盛ってるから森姫

クールな高校生と情熱派技術者のインターンシップ

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 「わが社ではインターンシップを実施する。対象は某商業学校の高校2年生。期間は3日。担当は森姫とする」

 出た! 社長の鶴の一声!!

 なぜわたしが担当なんだよ!! と逆ギレしそうになったのですが、対象となる某商業高校がわたしの母校だったからという単純な理由からです。

 インターンシップのイの字もわからない人間がそんなことして大丈夫なのか……そもそもインターンシップってなにものなんだろうか……。

 でも、やれといわれたからにはやるしかないのだろう。仕事だから。

◆そもそもインターンシップってなに?

 インターンシップ、用語辞典で調べると「企業体験」とのこと。

 つまり、学生さんが会社にやってきて「働くっていうのはどういうことかわかってんだろうな!!」的なことをいわれて、凹んで帰るシステム。

 または、学生さんが会社にやってきて「お客さん以上に丁寧に扱ってちやほやしてやる!!」的なことをされて、社会を甘く見るシステム。

 ということですね。あ、上は極端な話ですけど。

 要するに中間層はなく、厳しくされるか甘やかされるかどちらかですね。だって、社員ではないし、バイトではないし。どちらかというとお客さんのような扱いですよね。

 それにしても、3日で「IT企業とは」を教えるのって無理があるんですけど……。とりあえず大まかなスケジュールは立てておいたので、ヒアリングしてから予定を決めましょう!

◆高校生から奪う青春3日間 :1日目はオリエンテーション

 高校生といえば青春時代です。2度と戻らない貴重なお時間です。そんな青春の3日間を奪うだなんて責任が重すぎます。

 初っ端のオリエンテーションにてその高校生は、

「将来はSEになりたいんです!!」

といいました。

 もしかしたら、この3日間でこの子の将来が決まってしまうかも……。このままIT業界を志すのか、あきらめるのか。彼に夢を見続けさせるのも、夢から覚ますのも、

……わたし次第ってことかー?!

◆高校生に教えるIT業界の実態

 「やっぱりIT業界っていえばプログラミング!!」

 わたしが高校生のころはそんな憧れを抱いておりました。なので「会社に入ったら好きなプログラミングが山ほどできる!!」と考えていたんですよね。ですが実際。単調なテスト作業が続いたり、入力作業が続いたりでプログラミングができるまでは相当な時間がかかったわけですよ。IT業界はそんなドロドロしたところなんです。

 わたしの場合は、気が付くのにまるっと4年半ぐらいかかっちゃいましたけど。そんなドロドロを高校生に体験してもらうことにしました。

 「IT業界で働くっていうのはテスト作業が特に重要で、それを体験しないことにはSEにはなれないんだよ」

ということを笑顔で厳しく教えるそんなお姉さんです。

◆2日目は鬼のようなテスト項目

 ちょうどいいことに、納品したてのプログラムがあったので、それのテスト作業をしてもらうことにしました。

 単調なテスト項目を200項目。それを5回ずつ。10回ずつにしようと思ったら後輩から「それ、普通にいじめだからね」と止められました。

 試験票を作る際に自分で通しで1回やったのですが、あまりにも単調すぎて自分の集中力が途絶えました。

 これはいかん! と思って、ちょこっとコードを入れてバグを入れてみたり。わざと試験票にありえないパターンを書いたり。いい加減にやったらわかるような感じで試験票を作って高校生に渡しました。

 高校生は、「本当に普段からそんな表情で勉強してるの?」とこちらが疑問符を浮かべるぐらい真剣な顔でテストをやっておりました。緊張しているのか、そういう性格なのかわかりませんが、こちらが意図したとおりの結果でやってくださいました。偉いなぁ……。わたしだったら絶対いい加減にやってますな! (笑)

 しかし、顔を見る限り「単調でつまらない……」と無言の訴え。  

 わたしは自分に何度も言ってきた言葉を高校生に投げました。

 「かっこいいだけじゃ仕事はできないからね」

◆最終日:自分で軽く作ったものを動かす感動を教えたかった

 インターンシップの間とはいえ、わたしにも仕事はあります。

 急に振られた集計業務を手伝ってもらうことにしました。さすがに複数人でやると早い早い。これこそ企業体験! 高校生の緊張もほぐれた……と思いたい。

 集計業務が思った以上に早く終わったのでせっかくだからお楽しみをつくることにしました。Javaのプログラミング実習です。

 環境インストールからはじめてHelloWorld!! から画面へのボタン配置、実際に動かしてアクションするものまで。さすがに一から意味を教えていたのではキリがないので、かーなり省略して教えました。

 3時間かけて、ボタンを押したらメッセージがでるところまで打ち込ませました。

 「これでボタン押したらメッセージがでるからね!」

と画面を起動させてボタンを押して、感動の画面!! のはずが……。

 高校生、無表情。

 え? ノーリアクション!?

 「もしかして、これぐらいは学校でやった?個人でもできるレベルだったかな?」

 「いえ、学校で習うプログラミングは紙に書くだけで、動かしたことありません」

 「COBOLだよね?」

 「はい」

 「ボタン押したらメッセージが出るのって感動しない?」 

 「……。すごいな、とは思いますけど」

 ちょっと!! もっと感動してよ!!

 ボタン押したらメッセージが出たんだよ!? すごくないの!?

 無表情のまま、高校生は挨拶を終えて帰ってしまいました……。

◆最近の子はクールなのね……

 インターンシップを終え、学校側に提出する書類に「ノーリアクションで困った」と書きながら、企業体験の意味を考えておりました。

 これでよかったんだろうか?

 高校生はIT業界に何を思ったんだろうか??

 個人的には、「仕事ってのは辛いこともあるけど、楽しいこともできるんだよ! がんばれ!!」と言いたかったのですが、伝わったのでしょうか?

 社長は「お前はよくやったよ」とおっしゃってくださいましたが、社長……オリエンテーションの時間以外留守だったじゃない!!

 もっとテスト作業やってもらったほうがよかったのか? いや、それだと硬すぎるし……。

 もっとプログラミングを教えた方がよかったのか? いや、それだと体験学習だし。

 過ぎ去った時間に「~してれば」はありません。

 結論。

 「これでよかったんだよ……と思いたい」

 他のIT企業さんがどうやっているかわかりませんが、たぶんこれで良かったんだと思います。

 ここを読んでインターンシップに臨まれる企業さんがいたら、高校生に遠慮することなく、立てたスケジュールでやってしまえばいいと思います。仕事場の体験であるわけだから、日常のままでいいんです。

◆好きです

 最後にふと、自分がインターンシップにいったときのことを思い出しました。

 実はわたしもインターンシップを経験したことがあるんですけど、高校生ではなくそれから先でした。その時なにをしていたかというと……その会社に入社することが決まっていたので
使ったこともない言語でひたすらプログラミング。しかも講師なし。

 それがその会社での日常だったので、日常をそのまま教えてあげればいいんじゃないのか?

 現実は夢よりも辛いものだけど、それを突き付けて、はいあがってくるのをひたすら待つべし!!

 後日、高校生から会社宛に手紙が届きました。

 「SEに向いているかどうかは3日間ではわかりませんでしたが、とてもいい経験になりました」とのこと。

 この高校生が将来SEになって大活躍するのか、はたまた別業種にいくのかはわたしの知ったことではありませんが、

「ITにくるなら覚悟してこい!」

以上で締めます。

Comment(15)

コメント

インドリ

こんばんわ森姫さん。
いいインターンシップだと思います。
私だったらもう夢中になります。
それにしても今の高校生ってクールなんですね。
私なんか中学生の頃のワープロの授業で情報に惚れてしまって今に至っているのに・・・
画面に文字が出る事が感動だったのに・・・
私なんて「えっ何?何?どういう仕組みだ?解析してぇー。もっと知りたい!」ともう一瞬で将来を決めてしまいました。
うーん今の子は何でもあるから感激しないのかな?

しっぱ

はじめまして。

インターンシップもそうですが、人に物を教えるとか経験させるって難しいですよね。
私も現職で社内システム講師なぞをやっていたりするのですが、最初は暗中模索で・・・

講師を担当し初めてからやはり「反応」は気になりますよね。

研修をした相手がどのくらい理解したのかさっぱりわかりませんし、どこか自分の伝え方でわかりづらかった部分はないかとか。。。。

でも、最後は自分のしたことに自信をもつしかないんですよね

これが私の行きついた結論でした。
当然毎回改善はしていますがw

でも、泥臭い部分と物を作る楽しさをたった三日で実践されたのはすごいことだと思います。
きっとその高校生も表情には出ないだけでよい経験になったんだと思いますよ!

hyuga09

自分はインターンシップ行ったことも、来てもらったこともないので、なんか森姫さんが羨ましいです…。

#文章で読む限り、鬼教官みたいでしたが。

高校生にしてみれば、若干夢(浪漫?)が無かったのかもしれませんが、楽しそうな感じですね。
いい経験になったんじゃないでしょうか!

あずK

IT業界のドロドロした部分を、
「SEになる前から味わってもらう」か、「SEになってから味わってもらう」か。
難しいですよね。人によって考え方は分かれると思います。
自分なら後者かもしれません。
学生のときくらいは、いい夢(笑)を見てもらいたいかなあと。

最近の高校生はクールだ、ということですが、
> 「将来はSEになりたいんです!!」
と初日に言っていた生徒が実はクールな性格だったとは思えないんですよね。
なぜかと聞かれても今は「うーん…」という感じですが…(苦笑)

インターンの指導は未経験ですが新人研修の講師の経験者として
非常に興味深い話なので、自分のところでも考察してネタにさせてもらいます(笑)

Ahf

私はインターン制度を経験したことがないので、「こういうものなのか」という感じに読ませていただきましたが、講師役となるとやはり色々大変ですね。

実際に受けていた高校生たちがどう思われたかは定かではありませんが、
「現実」を体験できたことは大きい経験になったと思えます。

最後の方であまりリアクションのない話が書かれていますが、恐らく今の若者たちはネットが普通に存在していますから、目が肥えているのではないでしょうかね?
簡単にできる、と私達にしてみれば誤ったイメージを持っていそうな気がします。

そういった幻想に一石投じただけでも成功だと思いますよ。

akira

3日間だと出来ること少ないでしょうね…
高専行っているんですが、結構昔から4年生の夏休みに2週間インターンシップすることになってます。
企業によって実務的なことやるところもあれば、アルバイトのような扱い、見学が主などと結構違いはあるみたいですね。
しかし、学校で聞くだけでは分からない部分を少しでも実感することができるいい機会でしたよ。

ちなみに?僕の場合は1週間ぐらいは緊張して感動覚えるどころじゃなかったですね…

森姫

インドリさん

こんばんはです。
友人にも「最近の高校生はクールだよ」といわれました(笑)
私もインドリさんと同じく画面に文字がでるだけで
そりゃもう感動しまくりでしたよ~!!
どうやってでているんだろう?!っていう感じで。
今の時代
それは当り前のことだから感動もなにもないんでしょうかね?

森姫

しっぱさん

はじめまして~♪
「反応」が一番気になりますよね。
反応がないと「・・・大丈夫かな?間違ってないかな?」と思います。
ちょっとでも表情にでてくれればいいんですけど。
教える立場からすれば
「ちゃんとわかっているかな??」と思いますよね。無反応だと。
コラムに書いたとおりですけど
「これでよかったんだ!」と思うしかないですよね。

森姫

hyuga09さん

はい、鬼教官です。
あんまり人にものを教えたことがないので
どうしても鬼軍曹みたいになっちゃうんですよね(笑)
最初のうちはやっぱり緊張しちゃうみたいですけど、
これを機に社会人になるとは~!!を考えてほしいものです。
良い経験をさせてあげられた・・・と思いたいです。

森姫

あずKさん

いつもどうもです!
うーん、学精の時ぐらいは夢見させて・・・とも思うんですけど
就職って1回決めちゃったらなかなか変えられないので
就職する前に見させておいて、決めていただきたい・・・というのが背景にありました。

> と初日に言っていた生徒が実はクールな性格だったとは思えないんですよね。

その生徒さんは「ゲームがつくりたいんです!!」といっていたので
ゲームとかを実習であつかっていれば
また反応が違ったのかもしれませんね。
ちょっとあまりにも初心者チックで思ったよりも楽しくなかったのかも・・・です。
でも私の会社、ゲームは仕事で扱ってないしなぁ(苦笑)

森姫

Ahfさん

幻想に一石を投じた森姫です。こんばんは。
講師はずっと「講師」というわけにはいかないので
色々苦労しました。急に電話が入ったりした時とか。

ボタン押したら文字が出るぐらいケータイとかだと当たり前なので
目が肥えているのかもしれませんね。
私の時代にはケータイなんてなかった(あったけど、普及はしてなかった)ので。
JAVAになれていない先輩の方がリアクションが大きかったです(笑)

森姫

akiraさん

森姫です~。私は1か月インターンシップに行きましたよ。(高校以降の時代)
3日間はさすがに短すぎて、生徒さんもずっと緊張だったみたいです。
やっぱり知らない社会に3日間も漂流するのは
すごく疲れるでしょうね。

インターンを行うに当たってはいろんな企業さんの意見やカリキュラムを
参考にしましたが、本当にいろいろですね。
これでもくじけずにIT業界を目指してくれればと思います。

あずき

あずきです。こんにちは。
期間が短いということなので、そうなってしまうのは仕方ないのでしょうか。
私は大学時代「たくさん勉強したい!」と言って、いろんな企業に猛アタックして、ある企業に1ヶ月間以上インターンシップをさせてもらいました。(今はオープン系のSEをしてますが、インターンシップ先は組み込みの開発をしているところでした

テストの実施→テストパターンの作成→実装(大学でCをやっていたので)という感じでやらせていただいたのですが、組み込みなんてやったこともないし、あるものすべてが初めて見るもの(ICEなんて存在すら知らなかった。)だったし、とてつもなく感動したのを覚えています。

次回インターンシップを担当する際は、「初体験!」を目指すと学生側に感動が生まれるかもしれません。

森姫

あずきさん

遅くなってしまってごめんなさい。
やっぱり3日は短すぎ!ですよね。
でも高校生はもうちょっと遊ばせてあげたい気持ちです。
それにしても1か月以上のインターンシップはすごいですね!
「初体験!」や「感動!」がインターンシップの
キーワードになりそうですね!
うーん、でも現代の子は最先端なものはなんでもあるからなぁ~と。
難しいです・・・。

ばしくし

なるほど。
今の子は、生まれたときからインターネットがあるから
ボタンを押してメッセージが出るなんて
当たり前すぎて何とも思えないんでしょうな。

そこら中に溢れるWebサイト・Webサービスの中で
ボタンを押下したら画面が遷移するなり、メッセージが出るなんて、普通に当たり前じゃないですか。
そんなことができたって当たり前すぎて、だから何?っていう感じなんじゃないかと推測しますね。

「用意したテキストエリアに文字列打って、ボタンを押下したら
自分のアカウントでtwitterにツイートされた」

なんてものを作ったら、別な意味で感動があったんでしょうな。

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