@IT メールマガジン「@IT通信」に載ったアイティメディア社員のコラムを紹介します。

洗剤のいらない洗濯機

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 2001年10月10日の「@IT通信」に掲載したコラムを紹介します。「洗剤のいらない洗濯機」、あまり聞かなくなりましたね。「既得権益を守ろうとするところが苦しんでいる」というのは、まさにそのとおりだと思います。

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 先日、日本石鹸洗剤工業会が、三洋電機製の「超音波と電解水で洗おう」という洗濯機に対して、反論を行った。この洗濯機が「洗剤ゼロコース」というモードを持ち、洗剤のいらない洗濯機とされたため、その洗濯機で洗剤を使用しない場合に、洗えるとしてカタログに記載されている肌着について白さが次第に失われる、繊維が傷みやすい、汚れが再付着するなどの調査結果を発表したのだ。

 結果として、日本石鹸洗剤工業会の行動はヤブヘビだったといえよう。マスコミは三洋電機対洗剤業界の構図で報道し、日本石鹸洗剤工業会はどちらかといえば悪役だった。しかも、その報道は「洗剤のいらない洗濯機」の存在を知らない人間にまでその存在を知らせてしまった(かくいうわたしがその1人だ)。

 だいたい、本当にその洗濯機できちんと汚れが落ちないのであれば、洗剤業界ではなくて、消費者が三洋電機に抗議するはずだ。実際には、三洋電機は「洗剤ゼロコースでは、無機物の汚れ、衣類の繊維内にこびりついた汚れなどは落ちない」と断っており、全面的に洗剤の存在を否定しているわけではない。日本石鹸洗剤工業会はいらぬケンカを売ったように思われる。

 さて、では本当に洗剤なしで洗濯可能な機械が登場したら、どうだろうか。ユーザーの立場、あるいは環境保護の立場からすれば喜ばしいことだろうが、洗剤業界にとっては(おそらく日本石鹸洗剤工業会が持っている危機感のとおり)、壊滅的打撃となる。その場合、洗剤業界の存在を守るために、洗濯機を禁止すべきだろうか?

 IT業界のように、いつ“新型洗濯機”が登場するか、常に気を配っていなければならない世界も過酷だが、いま本当に苦しんでいるのは既得権益をムリに守ろうと保護されてきた業界ばかりであることを改めて思い出すべきであろう。

  (T/S)
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