地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

団体とかもういいんじゃないかな

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 つい最近に世間一般をにぎわした話題といえば、某ボランティアな話題でしょうが、Anubis さんが時空を曲げるほど曲解されて書かれていたので、私は違う局面からこの話題を扱いたいと思います。

 件の記事では、4 万人のセキュリティ技術者が必要、という目的のもとに新しく団体を立ち上げ業界で協力する必要がある的な、夢物語を語っていました。その数字が正しいか誤っているか、ボランティアという方法がどうなのかという点については、多くの方々が憤りを感じているように、何を思いそれが適していると考えたのかも一切納得できません。

 個人的な主観が多く含まれますが、こと IT 業界においては複数の企業が集まって立ち上げる団体というものに、あまり良いイメージを抱かせることはありません。往々にして、特定の利権に絡ませることを感じさせるような、どちらかというと排外的な領域を作り出すために思えるような、実際に関わる人間からしてみると「そのような集まりは必要ない」と言い切れてしまう集まりが多いように思えます。
 もちろんそうではない団体が存在することも承知していますが、こと記事に上がるような集まりとなると、マイナスの面ばかりが目についてしまうのも仕方ありません。

 私は経営側の経験がないので、もしかすると私の知らない理由でこのような団体が必要なのかもしれません。ただし、少なくとも現場側にはほとんど無用の存在であることは、それほど外れていない事実ではないでしょうか。

 今までの経験の中で、この団体は有用だ、と思えるのは主に業界内でのルールを定義するための団体です。この類の団体がなければ、各社自由なルールでやりとりを行おうとします。それに伴い、様々な無駄が生まれてしまいます。そのような無駄をなくすためにも、ルールを定義する団体というのは非常に有用です。

 しかしそこに商売を絡めているものは、軒並み不要なものと化している気がします。ルールを作るのは良いが、そのルールに則るためには幾何かの費用を求める、このような団体も実際に存在しています。面倒なのは、そのような団体に加わっているのが大手企業や力のある企業であり、中小企業などはそこに逆らう術を持たないところです。下手をするとその団体に関わらないでいると、仕事にありつけないということも多々あります。

 業界内で自浄が働けば本来は良いのでしょうが、これもなかなかに難しいところだと感じます。今回のようなケースでは、団体に加わっていない、または加わっているけども賛成しないような企業が、もっと声を上げる必要があるのではないでしょうか。現場側のエンジニアがいくら声を上げたところで、経営側の人間の集まりにはさして影響はありません。同じ立場に立っているからこそ、上げた声も届くというものだと思います。

 このコラムを読んでくださる方の中に、経営側に身を置かれる方がどれほどいるかはわかりません。もしそのような方がいらっしゃるのであれば、まず意見を表明してみてはもらえないでしょうか。そのような反論がなければ、声の大きい人が勝つ、という非常に残念な結果か、無駄に費用をかけてどうしようもない結果に終わるといった、業界としても望まない結果で終わる可能性が多々潜んでいます。そうならないためにも、現場側ではない人間の意見として、形に表していただきたいものです。

 これだけ Web が一般的になった世の中です。意見を表明する経路はいくらでもあります。私は経営側を知らない人間ですので、根本的に間違っている考え方をしていることもあります。私のような人間の誤りを指摘するためでも良いですし、先に書いたように団体へ対しての反論としてでも良いと思います。何もしないで放置しておくことが最良、とは私は思いません。ここで皆さんの考えを表に出すことが、今必要なことではないでしょうか。

 これを機に、現場側と経営側で活発に意見交換ができるようになると、今回のような事態も減らすことはできると思います。現状、現場側の意見は経営側に届いていないですし、経営側の思想も現場側には伝わっていない環境が多いです。そこが少しでも改善されるようであれば、この業界もより良く進むこともできるのではないでしょうか。

Comment(8)

コメント

Anubis

どうも。捻じ曲げた時空の狭間からこんにちは。

> 複数の企業が集まって立ち上げる団体というものに、あまり良いイメージを抱かせることはありません

これには同感ですね。大人の事情が複雑になるだけだ。
今、世の中に求められているのは団体より変態じゃないだろうか。

結束より、一人の変態的な天才の出現だ!

オレンジ

コラム趣旨に反して元記事についての意見だけど、
現場側はそんな騒ぐ必要ないと思う。
「1ヶ月ボランティアしてきてください。無給で」なんて経営側が強制できるもんじゃないよ。労基法違反でしょ。
経営側だって今稼いでる人を1ヶ月無償で提供するなんて損じゃない。
人数少ないとこなら尚更出せない。
なので、ブラックに近い経営者ほど反対するのでは?

むしろボランティア精神を求められているのは経営側ではないかな。
無償で人を提供しても給料は払わないといけない。
そういう形でしか実現できない話だと思うよ。

ごん。

経営側の思いが現場側に全く伝わらなかったのですね。
人材不足を解消するための深謀遠慮が、人材不足解消の恩恵を経営側とともに受けるはずの現場側から「ボランティア」という言葉で非難されてしまった。悲しいことです。

件の話の筋はこうだと私は解釈しました。
人材不足を日本国内で解消するためには教育が必要で、国の協力が不可欠。
国の協力を得るために、大きな団体で声を届け、五輪への寄与という価値を提示した。
五輪を舞台にするという意味でのボランティアであり、人材教育の費用を国(税金)が負担することを要求する中、五輪対応にかかる費用も国に負担せよというのはいかがなものか。(IT業界としてのtake & give)
というのが話の筋で、
思惑どおりに進めば五輪で急場の人材員数は用意できる。実際の対応にはベテランも投入する必要がある。この点をボランティアで参加することの是非については、団体所属の企業から人件費を捻出する案もある。(団体でtake & give)
というのが無償の批判に対する対案だと解釈しています。

人材不足の解消という命題に対して、中長期的な青写真として練られた案だと思います。
相応の人物でなければ容易に絵に描いたもちになる。けれど、今が千載一遇のチャンスで、教育に要する期間からするとギリギリなのだろうと思います。

それが、現場側に非難されてしまっている。


現場側が経営側を具体的かつマスコミ的に非難する場面は枚挙に暇がありません。
現場側が直面する問題は、具体的で端的に語れ、源泉は個人にあります。
一方で、経営側が直面する問題は、抽象的で複雑なものであり、源泉は他人にあります。
ブラックな経営者とは、ある意味現場側がする思考と近い思考をする経営者なのではないでしょうか。経営者個人の思想や理念が経営に強く反映されている経営者がマスコミに取り上げられていませんか?
一般的な経営側、現場側から経営側になった経営者というものは、そうそうブラックになれないものです。


現場側と人材不足の解消ですが、厳しい言い方をすれば、件の団体の案を非難するのであれば、団体の行動により人材不足が解消された際の恩恵を受ける権利はありません。
ですが、実際にはそうなりません。4万人の人材に職業・就職先の自由はあるのですから。
すべて上手くいったら現場側こそ対価なし恩恵を受けられる。丸儲けです。

現場側はそれでも経営側を非難することでしょう。そいういうものです。
いずれ、経営側になった時に経営側の悲しみを知るのです。それもまた、そういうものです。
親の心、子知らず。子は親の心を知りえない。そういうものです。

もちろん、経営は聖人君子では勤まらないので、相応に利益を得るはずです。
そうでなければ経営者は会社や社員を守ることができません。
清濁併せ呑む。それができなければ経営側で生きることはできません。


と、いうことを経営者は問われたところで個として回答することはないでしょう。
現場側の人間が思う経営側の心象。でした。

とり

団体が乱立して統一団体ができて、またそれが分裂してというのが肉体言語者の常かと。
まさに現実はエンターテインメント!
統一王者の登場が待ち望まれますな。

経営側で業界団体を6つも立ち上げた経験を持つものです。

Ahfさんのコラムを斜め読みしかしていませんが総じて賛成できますね。

権利を作るための団体、飲むための団体とかが大嫌いで結局飛び出て作りました。

過去に作った団体は認定試験の運営団体3つ、技術仕様を策定するXMLの団体が一つに、ビジネス支援団体二つです。

私は私が作った団体に利権が生れるのが大嫌いなので、そういうのを振りかざさないように規約で禁止しています。ただ一つの団体を除いては。。

そんな話はさておき、実はIT業界以外では業界団体はとても有用なものに見られているようです。東京商工リサーチのデータでは多くの会員が参加してその半分以上がビジネス的になメリットを感じています。

私がいまチャレンジしているのはまさにそれです。新しい技術が日本市場に現れた時、最初になかなか投資をしにくいので、そのビジネスの立ち上げを支援できるサービスを業界団体で作ろうとしています。これによって健全なOSSビジネスの新陳代謝がスムーズに行われるのではないかと考えています。

本業以外にこれをボランティアでやっているので、正直しんどい時もありますが、私が考える業界団体とはそもそもそういうものであるべきと思っています。(業界団体の役員業界発展のために持ち出し分を除きボランティアで志を遂げるべきという意味です)

Anubis

> 吉政忠志 さん

>経営側で業界団体を6つも立ち上げた経験を持つものです。

スゲェ。恐れ入った。

Ahf

返答が遅くなり申し訳ありません。
たくさんのコメントありがとうございます。

やはり件の記事についてはみなさんが色々思われているというのを
実感できました。
これからどう展開していくか、はたまたとん挫するのかはわかりませんが、
しっかり注視していきたいところですよね。

>これによって健全なOSSビジネスの新陳代謝がスムーズに行われるのではないかと考えています

吉政さんがすごく精力的に活動されているのは、とても素晴らしいことだと思います。こういう方ばかりが団体を率いられているのであれば、現場側としても非常に安心できますし、賛同もしやすいところだと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと陰ながら応援させていただきます!

オレンジ

団体についての意見で言えば。

エンジニアの教育に国も予算を出して欲しいということを前提とするのなら、私はむしろ団体は必要だと思うんですがね。
それも政治的に強力な団体が。

後のコラムを見ると前提のとこで意見が違うのかなーと思いますが、そのへんいかがなんでしょう。

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