地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

はじまりは軽い気持ちで

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 このコラム欄でも何度か扱いましたが、東京圏と他地方では圧倒的なまでの差があります。人材の量、仕事の量、情報の量など地方に住んでいた場合と東京に住んでいた場合とでは物凄い差があります。量が異なるということはそのまま質の違いにも表れます。対象となる母体数が多くなれば、質の高いものも増えるというのは当然のことです。ネットが一般化してきたとはいえ、まだまだ物理的な場所の制約を受けることは非常に多いです。ネットを通した仕事の受注は一部の業界で進んできてはいるものの、IT業界全般として捉えると殆ど増えていないというのが実情ではないでしょうか。

 ここ数年でコミュニティベースではありますが、全国各地で勉強会と称される集まりがますます開催されるようになりました。私も札幌で活動している CLR/H に参加させてもらい、月一度ペースでそのような集まりを開催させてもらっています。そういった場では、不定期でゲストスピーカーに来ていただいてなかなか聞くことのできない話をしてもらうことで、流通量の少ない地方でも出来る限り刺激を受けたい、受けてもらいたいと思っています。これは別に札幌という土地でスピーカーとして呼びたい方がいないわけではなく、新しい話をしてくれる方が札幌以外に多いということが影響しています。純粋に何かしらに携わる人の数が違いますので、呼びかけに答えてくれる人も多いという理由です。

 そのような環境が地方では多いですので、どうしても東京圏よりも刺激を受ける話を聞ける確率は減ってしまいます。そのような事もあり、私としてはできるだけ近場で開催される勉強会的イベントには顔を出していきたいと考えています。そうする事が後々自分のためになる、と思えるからです。

 しかし残念ながら地方で行う勉強会では、なかなか多くの人に参加してもらうことが難しかったりします。これも東京圏と地方との差なのでしょうが、興味をもって参加していただける人の割合も、地方であれば減少してしまうのが原因の一つだと思われます。余程の大手が企画するものであれば、参加していただける人の数も多くなるのでしょうが、地方を足場に活動している場合、ある程度以上の人数を集めるのは非常に困難です。参加される方の顔ぶれがどうしても固定化してしまうというのも、元をたどればこのあたりが原因の一つとして数えられるでしょう。

 そのような中、本州で行われているイベントの一つが札幌でも行われます。「クラウドごった煮(http://www.sec.jp/post/view/id/22325)」というイベントですが、6/15に札幌で開催してもらえることになりました。このイベントはクラウドに携わる人たちが集まり、多くの視点から面白い話をしてくれるイベントです。東京圏であればまだ聞くことのできるチャンスもありますが、地方ではなかなか聞くことのできない方々が集まっていますので、少しでも興味を持たれた方には是非参加してみていただきたいと思うところです。

 微妙に宣伝を交えてしまいましたが、運営側として集客に苦労している点は事実ですし、参加される側としてもなかなか興味を持っている分野のイベントが行われない、話を聞いてみたい人が来てもらえないといった悩みがあるかと思います。もしそのようにこの人の話が聞いてみたい、という気持ちがあるのでしたら、是非どこかの勉強会に参加してみるのをお勧めします。その理由も簡単で、運営側としても色々な人に来てもらいたいという気持ちがありますし、多くの人と言葉を交わしてみたいと常に思い続けています。技術との出会いも刺激を受けますが、やはり人と人との出会いが最も刺激を受ける材料なのではないでしょうか。

 もともと自分が CLR/H というコミュニティに参加したのは、「今まで自分だけでやってきた内容を人前で話してみたい、そして反応を見てみたい」という気持ちが大きいところでした。一人で物事を続けていくのは非常に多くのエネルギーが必要です。ごくごく一部の人しか、一人で物事を続けていくのは難しいのではないか、と自分の経験も踏まえてそう思えます。ですが、話を聞いてもらう、何かしら反応を返してくれる人がいることでそのエネルギーは補充することができるのです。そしてそれはさらに継続して勉強してみようといった意欲へともつながります。

 私が主に手掛けている分野は .NET の Workflow Foundation という非常にニッチな分野で Microsoft の人たちでさえなかなか利用する事がないものです。そんな分野に魅せられてずっと試行錯誤をしていたのですが、どうしてもある程度のところまで進むと、それ以上先へ進むためのエネルギーが不足してしまいました。そのような中、コミュニティに参加して自ら喋る事を行ったことで、他人の反応を聞くことができ「もう少しやってみようかな」と思えるようになったのです。

 自分たち CLR/H というコミュニティは特に先進的な事ばかり扱うとかはせず、時には基本的な部分に立ち戻って話してもらうことも行っています。ここは私見ですが、同じ題材でも話してもらう人が変われば、非常に新鮮に聞こえますし違う観点に気づくことができるのが非常に嬉しいところだと思っています。そのような集まりですので、もしこのコラムを見て興味をもたれた方がいらっしゃるのであれば、是非気軽に参加してみてもらえればな、と思います。

 自分なんて大したことは話せない、と思われている人もいるでしょうがそんなことはありません。上でも書きましたが、話す人が違うということは、それだけで非常に大切なもので、聞かせてもらう側としても大変参考になります。大したことではない、と思っているのは自分だけ、というのが実際にはほとんどのケースなのではないでしょうか。人気のある分野、人気のない分野というのはあるかもしれませんが、反対に言えば人気のない分野の話こそ、多くの人に刺激を与えることができる内容が数多く含まれているのではないか、そう私は感じています。

 最初のうちは、ただ話を聞くだけでもいいと思うのです。コミュニケーションがどうとか、そういったものは最初から考えなくてもいいのではないでしょうか。単純に人の話を聞くだけ、周りの人を見るだけといった目的でも、十分参加する意義はあります。それを繰り返していくうちに、次は話してみようかな、他の参加者の人とちょっとコンタクトとってみようかな、といった欲が出てくるものです。そのような気持ちを感じた時、そこではじめて行動に移せばいいのであり最初から色々な記事で言われているような、人脈を作ろうとか知識を披露しようとか、言い方を悪くすれば御大層な目的などは不要だと思います。

 もっと気軽に、もっと簡単に考えて参加してみるのもいいのではないでしょうか。そのような軽い気持ちこそが、この後につながる大事な一歩なのだとも思います。このコラムを読んで、ちょっと参加してみようかな、と思える方が一人でも増えてもらえれば非常に嬉しい限りです。

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