常駐先で、ORACLEデータベースの管理やってます。ORACLE Platinum10g、データベーススペシャリスト保有してます。データベースの話をメインにしたいです

【小説 採用大作戦】第三話 面接はボーカルオーディション!?

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 その日の20時。
 雄一はバンド練習のため音楽スタジオ『ポップロック』へ向かった。
 
「おいおい、これ見てくれよ」

 スタジオに足を踏み入れるなり、リュウジがスマホの画面を見せつけて来た。

  ◇みんなのバンド活動掲示板より(投稿者:natsu)
   地方都市で活動中のキングジョージってバンド、マジ最低。
   この前メンバー募集に応募して音合わせしに行ったら、クソつまらんオリジナル曲を歌えって指示されて
   こんな音楽やるなんて聞いてないって言ったら、ブチ切れられてdisられた。
   皆も、このバンドはクズだからメンバー募集は無視して下さい。

「なっ、なんじゃこりゃぁっ!」

 雄一はスマホに向かって怒鳴りつけた。
 雄一達がメンバー募集しているバンド活動サイト。
 サイトには個人やバンドが自らの活動を報告したり、ライブの告知が出来る掲示板がある。
 そこにキングジョージに対する誹謗中傷が数十件書かれていた。

「恐らく、鮫島夏美だろう」

 ツヨシが呆れたように言う。

「くっ、あの女......」

 雄一はスティックを握り締めた。

「ユーイチ。お前のせいだぞ」
「俺かよ!?」

 怒りの雄一はリュウジに食って掛かった。

「お前があの女を罵倒するからいけないんだ。合わなかったら、そうですねって普通に帰してりゃ良かったのに」
「プライドが傷付けられたんだぜ。黙ってられるか」
「ほんと、マジで大人になってくれよ。万が一デビュー出来たとしてもな、そんなことで傷つく様なガラスのプライドだったら......とても世間様相手にやって行けないぜ」

 リュウジは喚く雄一を無視し、ギターをアンプにつないで練習の準備を黙々としている。
 この風評が元で、キングジョージへのメンバー応募はピッタリと止んだ。

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 次の日。
 定時後18時のステイヤーシステムの事務所にて。
 受付のベルが鳴った。

「はーい」

 桜子が応対しに行く。
 そこには、黒髪ショートカットが凛々しい如何にもキャリアウーマンチックな女性立っていた。
 彼女はピシリと決めた黒いパンツスーツ姿で、一礼する。

「はじめまして。人材調達ナビの鴨川立夏です」

 桜子は立夏を会議室に案内した。
 室内では既に雄一が打ち合わせの準備を始めていた。

「よろしくお願いします」

 お互い名刺を交換する。
 
「御社を担当させていただきます。鴨川立夏です。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
「まず、弊社のサービスについて説明させてください」

 立夏は資料を卓に置き、テキパキと身振り手振りで説明をした。
 雄一と桜子は立夏に対して不明点があれば都度質問し、お互い齟齬の無いように話を擦り合わせて行った。

「では、御社が望む人物像を教えてください」

 桜子が答える。
 その内容を立夏はノートに書きつけて行く。

ブルルル

 卓の上の桜子のスマホが振動した。

「はい」

 スマホを耳に当てた桜子の顔が、徐々に赤く染まる。
 彼女の声が固くなっていく。

「そうなの......。他に手を出せる人は? ......いないの。うん、分かった。今から行くわ」

 スマホを切り、ホゥとため息をつく。

「どうしたんですか?」
「ちょっと障害が起きたみたい。今から行ってくる」
「大変ですね。俺......」
「君は、鴨川さんと打ち合わせ続けてて」

 桜子は立夏に頭を下げると会議室を後にした。

「大変ですね」
「いやぁ、システム障害はいくら対策しても起きる時は起きますから」

 立夏に同情されて雄一は少し気が楽になった。

「では、他に望むことは?」
「そうですね......」
「仕事以外のことでもいいですよ」
「え?」
「例えば趣味とか特技とか、スキルも大事ですが、その人の人間性も大事ですから」

 そう言われ、雄一の頭にはバンドのことが思い浮かんだ。

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 次の日。
 転職エージェントが紹介して来た第一号は、25歳の第二新卒の女だった。
 肩までの茶髪はパーマをかけているのか軽くウエーブしている。
 どんぐり眼にペチャ鼻でどこか幼い狸顔といった感じだ。

「春日山文月です! 今日はよろしくお願いします!」

 元気漲る陽キャラっぽい甲高い声が印象的だった。
 雄一はその活発さに目を細めたが、桜子はその辺りに余り関心は無いといった様子だった。

「志望動機をお願いします」
「はいっ! IT業界ってかっこいいなって前から思ってて、そこで輝けたらいいなと思って応募しました!」

 文月の瞳に星が浮かんでいる。
 雄一の視線の端に、桜子がガクッとなる様子が映り込んだ。
 その後、文月に対してスキル的な質問や、前職のことについての質問が投げ掛けられた。
 その答えに、桜子の顔は険しくなる一方だった。

「あんた、昨日あのエージェントとちゃんと打ち合わせしたの?」

 桜子が雄一に囁いた。

「はっ、はい。ちゃんとこちらの要望を述べました」
「じゃ、どうしてこんなに的外れな人がくるのよ」
「......そうですね、まあうちが望むスキル的にはアレですが、元気でやる気があるみたいでいいじゃないっすか! スキルがあっても人格が悪いとダメですよね?」
「そうだけどさ......」
「あ、あの......こっちから質問いいですか?」

 二人のコソコソしたやり取りに、文月が申し訳なさそうに入って来た。

「はっ、はい!」
「社内にバンドやってる人がいるって聞いたんですけど......」
「俺です!」

 待ってましたとばかりに雄一が応える。

「わぁ! 私、ボーカル志望でバンド活動も両立出来る職場が希望なんです。御社ならバンド活動してる人がいるってエージェントから聞きました。だからその辺理解があるかなって思って」
「俺ですよ。そのバンドマンは。ちゃんと仕事してくれれば定時で帰ってバンド活動に勤しんでくれていいよ。なんなら俺のバンドに入る? 今、ボーカル募集中でさ」
「わぁ! いいですね!」

 意気投合する二人を、桜子は三白眼で見ている。

「じゃ、ちょっと歌って見せてよ」

 雄一の促しに文月は「はいっ!」と立ち上がり敬礼のポーズをとった。
 彼女はアカペラ状態で歌うつもりなのか、口を開き掛けた。
 その時、

「おいこら! 有馬!」

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 面接が終わった後、桜子は雄一を事務所が入るビルの一階隅にあるゴミ置き場に連れて行った。

「てめぇ! いい加減にしろ! コラァ!」

 桜子に尻を蹴られた雄一は、勢いよくゴミ袋の山に頭から突っ込んだ。

「す、すいません......」

 頭にリンゴの皮を乗せた雄一が、ごまかすような笑いで許しを請う。

「面接はバンドのボーカルオーディションの場所じゃないのよ!」
「はっ、はい......」
「本当のこと言いなさい」
「えっ?」
「ちゃんと鴨川さんに会社として、望んでいる人材像を伝えたの?」
「そっ、そりゃもちろん......」
「本当のこと言わないと......」

 桜子は右手をスーツのジャケットの中に突っ込んだ。
 内ポケットの中から何かを取り出そうとしている。

「刺すぞ」
「えっ......」

 おもむろにジャケットから出て来たのは、雄一が彼女にプレゼントした金のかんざしだった。

「あんたがくれた、コレ......役に立つわぁ。こういう時」

 桜子はキラキラ輝くかんざしの尖った先端を、愛おしそうに撫でた。
 雄一の首筋にその先端を当てる。
 冷たい感触が彼の全身を痺れさせた。
 彼女に美しくも恐ろしい凶器を与えたことを、雄一は後悔した。

「わっ、分かりましたぁ!」

 雄一は涙声で告白した。
 桜子が障害対応で中座した後、立夏に伝えた要望のことを。

「技術的には多少劣ってもそこは妥協します。全てを叶えるハイスペック人材なんてそういませんから。それよりも趣味がバンド活動でワークライフバランスを重視する人物がいいなあ」

 そんな寝ぼけた要望だった。
 その日の定時後、立夏との打ち合わせが再度行われた。
 雄一は蚊帳の外に置かれたまま、桜子によって要望する人物像の修正が行われた。

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 次の日。

「尾瀬保志と言います。よろしくお願いします」

 エージェントからの紹介第二号は、35歳の真面目そうな男だった。
 細身の体グレイのスーツをビシッと着込み、銀縁メガネに七三分け。
 顔に刻まれた皺は、ベテランといった風情を醸し出している。

「では、志望動機をお願いします」
「はい。御社は小さいながらも様々な業種のシステムの受託開発をやっておられます。ホームページをみたところPMから設計開発、そして運用保守まで一貫して対応しておられるようでそこに魅力を感じました。私としてはシステム開発の全工程に携わりたいと思っています。それがエンジニアの醍醐味だと考えているからです。それが出来るのは御社の様な規模の会社だからこそだと思います。そういったベンチャー的な企業で自分が成長することで会社も成長させて行きたいと考えています」

 背筋を伸ばし淀みなくハキハキと答える姿は、面接のために用意された答えをその場しのぎで読み上げる姿とは明らかに違う。
 自分の言葉で話している、雄一はそう思った。
 隣で桜子も、満足そうに頷いている。

「携わったシステムについて質問させてください」

 桜子が職務経歴書を見ながら、おもむろに問い掛ける。

「はい」
「食品会社のシステムリプレースでPMをやられたそうですね。リプレース後のORACLEデータベースのエディションをEnterpriseエディションからStandardエディションに変更した理由を教えてください」

 来たぞ。
 雄一は緊張で、その身が強張った。

「お客様の予算の都合で、EnterpriseエディションからStandardエディションに格下げしました」
「予算の問題で? リプレース前はEnterpriseエディションだったんですよね。そのエディションでしか使えない機能が沢山あると思いますが。例えばテーブルのパーティショニング、あとAWRレポートの出力。それらの機能を無視してエディションを変更して問題無かった?」
「PMである私と業務とインフラが協力して、リプレース前のアプリとデータベースを調査したところ、Enterpriseエディションで使える機能はアプリの改修で代替可能だということが分かりました」
「アプリの改修の方が予算が掛かるのでは?」
「Enterpriseエディションの導入費用と、アプリの改修費用を比較し、アプリ改修の方が予算の問題をクリア出来ると判断しました」
「なるほど......では......」

 桜子の鋭い質問を尾瀬は詰まることなく答えて行く。
 その堂々とした姿は、遂に真打登場--そんな感じだった。

「うん」

 桜子は雄一の方を向いて、目で合図した。
 それは合格のサインだった。
 だが、雄一は少し気になることがあった。
 彼の職歴だった。
 23歳から35歳までに10社ほど転職を繰り返している。
 そして、今の会社にまだ在職中のようだ。
 雄一は手を上げた。

「あの、私からも質問していいですか?」
「なんなりと」

 尾瀬は自信たっぷりに頷いた。

つづく

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Comment(8)

コメント

プリンセス

まさか桜子さんが騙されそうになるのを雄一がカバーする展開…胸熱

VBA使い

雄一の首筋にその先端「を」当てる。
→((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル


細身の体「に」グレイのスーツをビシッと着込み、銀縁メガネに七三分け。

foo

>「刺すぞ」
>「えっ......」
>
> おもむろにジャケットから出て来たのは、雄一が彼女にプレゼントした金のかんざしだった。

早くもこの桜のかんざし、桜子姐さんのトレードマークとなりつつあるな。

それにしても、桜子姐さんの腕力に耐えられるこのかんざしの材質は一体何なんだろう。高純度ロンズデーライト結晶とか、ウルツァイト窒化ホウ素あたりか?

はたまた、実はこのかんざし自体は普通の素材だが、桜子の豪腕と超絶技巧の合わせ技の結果、人間の腱を断ちテーブルに穴を空ける凶器に変貌する、とかだろうか。

何にせよ、雄一が涙目になってビビるのは納得の展開。

湯二

プリンセスさん。


コメントありがとうございます。


>雄一がカバーする展開
たまにはいいところ見せないとねっ!

湯二

VBA使いさん。


校正とコメントありがとうございます。


>ガクガクブルブル
命がいくつあっても足りませんね。

湯二

fooさん。


コメントありがとうございます。


>トレードマークとなりつつあるな。
ドラクエで言うとこの装備してる状態です。


>かんざしの材質
ダイヤモンドよりも硬度が高い材質なのか、、、
想像が膨らみますね。


>桜子の豪腕と超絶技巧の合わせ技の結果
まさに選ばれしものだけが使える武器。
ファイヤーエンブレムでマルスだけが使えるファルシオンと言ったところでしょうか。
この武器で、これからも数々の犠牲を生むことでしょう。
デパートに売ってるけど。

桜子さんが一番

やっぱ桜子さん最高やなw刺すぞ!やでw
しかもケツ蹴飛ばしてるしw

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。


>刺すぞ!
そのうち本当に刺したりして。
暴力沙汰でも訴訟騒ぎにならないところが、ギャグ小説の醍醐味だよなあ。。。

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