常駐先で、ORACLEデータベースの管理やってます。ORACLE Platinum10g、データベーススペシャリスト保有してます。データベースの話をメインにしたいです

【小説 しょっぱいマネージャー】第四十三話 俺が異世界で勇者に転生しても、極悪令嬢のツンデレ幼なじみ同級生は俺をヒールで踏んづけてくる件ですが、何か?

»

 8月26日(水)、19時。

「如月さん、マッチング率100%の人がいました!」

 寺山が嬉しそうに打ち合わせブースに走って来る。
 100%の男のプロフィールが記載された用紙を手にして。
 弥生は用紙を手にした。

  ■名前  :堀井良夫
  ■年齢  :28歳
  ■出身地 :地方都市
  ■同居人 :実家、猫
  ■休日  :土日
  ■身長  :162cm
  ■体重  :90kg
  ■職業  :コンピュータエンジニア(会社員)
  ■趣味  :アニメ、アイドル、漫画、ラノベ、フィギュア集め、コミケ、ゲーム
  ■特技  :同人発行、夕陽峠28の柚果ちゃんの追っかけ
  ■タイプ :夕陽峠28の柚果ちゃんに似てて優しい人
  ■一言  :『俺が異世界で勇者に転生しても、極悪令嬢のツンデレ幼なじみ同級生は俺をヒールで踏んづけてくる件ですが、何か?』
        の同人誌作成と展開の考察、あと聖地巡礼を楽しみましょう。
        ヒロインのシュキイ姫のコスプレしてくれると嬉しい。

 弥生は一瞬、目を疑った。
 それは、自分が望んでいたものとは180度異なるタイプの男だったからだ。
 写真に映った顔は、彼女の理想とは程遠いものだった。
 寝ぐせ頭を無理やり櫛で撫でつけたような不自然な七三分け。
 瓶底の様に分厚い丸眼鏡。
 アンパンの様に膨らんだ顔。
 ダブルのスーツのボタンが弾けそうなお腹回り。
 これが、AIが出した私にとってマッチング率100%、結婚確実の相手......なのか。
 突っ込みどころ満載のプロフィールを手に、弥生はブルブル震えだした。

「いかがでしょうか?」

 満面の笑みを浮かべた寺山が、弥生の顔を窺う。

「......他にいなかったのでしょうか?」

 乾いた唇から、問い詰めるような硬い声が漏れる。

「100%はこの方だけです」
「う、嘘だぁ......」
「如月さん、堀井さんは私の担当です。確かにプロフィールに癖はありますが、彼はいい人です」
「でも、私の好きなタイプじゃない」
「私も自分の勘と経験を頼りにしていたら、堀井さんを紹介することは無かったでしょう。ハッキリ言って私もAIが出したこの結果に驚いています。ですが、全会員のデータ、行動履歴を元にAIが割り出した結果でもあるんです。私は一晩中、堀井さんと如月さんのプロフィールを見直してみました。二人の人となりを思い出しながら。そうすると、この結果もアリなんじゃないかって確信を持ったんです」
「くっ......本当に......他にはいなかったんですか?」
「100%はこの人だけです」
「じゃ、90%、80%でもいい」

 弥生は食い下がった。

「60%から20%なら何人か......」
「その人たちを紹介して下さい」
「如月さん......」
「紹介して!」

 弥生は声を荒げた。
 寺山は仕方なし、といった態で席を立った。

(AIなんて信用出来ない......)

 現にこうして拒絶反応を起こしているのだ。
 5分後、寺山がピックアップしたプロフィールを持って来た。

「この人は60%。この人は45%、この人は......」

 卓の上には数十枚のプロフィール用紙が散らばっている。

「この人がいい!」

 弥生が指差した男のプロフィールは、彼女の感覚にとって理想そのものだった。

「この人とあなたのマッチング率は23%です」
「関係ありません! 私はこの人にビビッと来たんです!」
「如月さん、考え直して下さい。堀井さんにしませんか?」
「嫌です! AIなんかに......AIなんかに......」

(未来を決められたくない)


---------------------------------------------------------------

 8月27日(木)、10時。

「ふむ、なかなかいい結果じゃないか」

 テレビのディスプレイに映った鏑矢社長は用紙を手に笑顔だ。
 猿顔がクシャクシャになっている。
 会議室にて。
 雄一と三浦部長、そして大都会にいる鏑矢社長はテレビ会議を開いていた。
 リニューアル後の稼働実績を早速、鏑矢社長に求められたのだ。

「9月の売上が楽しみだな。この調子でよろしく頼むよ」

 多忙な鏑矢社長は、ディスプレイから去って行った。

「良かった~」

 雄一は胸を撫で下ろした。
 とりあえず、その場しのぎの偽装した結果で鏑矢社長を満足させることが出来たからだ。

「まったく、心臓に悪いよね。いつバレるかと思うと気が気でならん」

 三浦部長が額の汗を拭く。
 運用開始から二日が経った。
 その間の『初回会員出会い数』、それを鏑矢社長は気にしていたのだ。
 会員同士が初めて出会う時、お互いから一万円ずつ手数料を取る。
 鏑矢社長は売り上げを考え、それを増やそうとした。
 だから、土壇場でAIが出した結果を改ざんするという要求を突き付けた。
 それに対して抗った雄一達は、『初回会員出会い数』の改ざんという暴挙に出たのだった。

「やはりAIが出した結果を悲観して、初回会員出会い数減ってますね」
「仕方ないよ。今が我慢の時だ。長い目で見たらAI、そして会社の信用に繋がる」
「寺山さんが言ってた、あの人はどうなんでしょうね」

 雄一はそれとなく弥生のことを訊いた。

「やはりAIの出した結果に戸惑っているようだ。自分の理想と違う......とね」

 雄一は深く息をつき、目をつぶった。


---------------------------------------------------------------

 運用開始後、やはりいくつかの問題は上がって来た。

 例えば、
 会員検索画面が遅い → テーブルの統計情報を取得することで改善。
 バッチが終わらない → SQLをチューニングすることで対応。
 登録した覚えのないデータが表示される → 消し忘れたテストデータを削除することで対応。
 などなど。
 それらを一つ一つ解決し、課題管理表の項目、バグ票を消化していく。
 雄一はプロジェクトが落ち着いたのを見計らうと、16時に早退させてもらうことにした。
 今日の夜、秋華と食事する。
 そこでハッキリと自分の思いを伝える。
 そのための準備として、今までの感謝を込めたプレゼントを用意する。
 雄一は四越デパートに向かった。


---------------------------------------------------------------

 同日、19時。

 駅そばの切手ビルにあるマイフレンチ。
 その窓際席で、雄一は緊張しながら秋華を待っていた。

(遅いなぁ......)

 待ち合わせ時間をとっくに過ぎている。
 入口の方を見ながらヤキモキしていると、小柄な影が目に飛び込んで来た。

「来た!」

 口の中で叫ぶ。
 彼女は真っすぐな長い黒髪をなびかせながら店内に入って来た。
 セーラー服姿だ。
 胸元の薄ピンク色のリボンが目立つ。
 フランス料理店に一人で入って来た美少女に、誰もが視線を向けた。
 思わず雄一は立ち上がり、彼女を出迎えた。

「何、飲む?」
「私、未成年」

 差し出したドリンクメニューにはワインとビールしか載っていない。

「ウーロン茶で」

 数分後、飲み物が卓に置かれる。

「プロジェクト、お疲れ様!」
「おつかれ」

 琥珀色のビールと茶褐色のウーロン茶で乾杯した。
 サラリーマンと女子高生が差し向かいでフレンチを食べている。
 その姿は、パパ活と指差されても仕方がないものに見えた。

「なんか、いつもと違う」
「そっ、そうかい?」
「うん。バカっぽくない」
「バカとはなんだ! 大人に向かって!」
「あはは」

 雄一は極度の緊張からか、言葉少なになっていた。
 目の前の少女に向かってどのようにして思いを伝えるか思案していたからだ。
 ビールを飲んでも酔いが回ってこないし、せっかくのフレンチの味もよく分からなかった。

「今日、何で、皆呼ばなかったの?」
「え?」
「プロジェクトの打ち上げなのに」
「そ、それは......き、君が頑張ったから、まず君だけに特別に、ね」
「変なの」

 話が進まない。
 雄一は勝負をかけるべく、卓の上に四越の箱を置いた。

「賄賂?」
「なわけないだろ! 悪徳政治家じゃあるまいし! それに賄賂なら料亭で渡すだろ!」
「じゃ、何?」
「プレゼント」

 しつこく手渡してくる雄一に気圧され、秋華は怪訝そうな表情を浮かべながら箱を開けた。
 彼女の小さな手には、キラキラ光るピンク色のかんざしがあった。
 先端には桜の花が装飾されている。

「何、これ?」
「秋華さんの髪、綺麗だから。これで飾るといいかなと思って」

 秋華は手にしたそれをしばし眺め、こう言った。

「趣味じゃないから......いい」
「え?」

 雄一の視界が歪んだ。
 かんざしは彼女の手から雄一に戻された。
 敗色濃厚な展開であったが、雄一は諦めきれなかった。

「秋華さん、覚えてる? 移行作業でのこと......」
「ん?」
「君に言いたいことがあるって、俺、言ったよね」
「ああ......」
「俺、君の事......」
「いい」

 雄一の視界は更にグルリと歪み、渦を描いた。

「色々、忙しいし......それに」
「それに......?」
「好きな人いるから」

 雄一の全身は、その渦の中心部に吸い込まれるかのような虚脱感に包まれた。

「そ、そんな......君のAIのために俺は......」
「仕事とプライベートは別」

 ピシャリとそう言われ、うなだれるしかなかった。
 それにしても、秋華の好きな人とは一体誰なのか。


---------------------------------------------------------------

 寂しく一人、駅に向かう雄一は夜空を見上げた。
 何故か月が霞んで見えた。

ブルルル

 胸ポケットのスマホが振動した
 ディスプレイには安田桜子と表示されている。

「はい」
<無事にリリース出来たみたいね>
「お陰様で」
<お礼してよ>
「え?」
<少しは私のアドバイスも役に立ったでしょ?>

 あんたのせいでカットオーバーが前倒しになったり、田原が引き抜かれたりしたんだろ。
 そう文句も言いたくなったが、全て済んだことだ。
 まぁ、そのお陰で自身も成長することも出来たし。
 それに......

(もういいや......)

 手にした四越の箱をじっと見つめた。


---------------------------------------------------------------

「い、いいの? これ? 高かったんじゃない?」
「いいんです! 今までお世話になったお礼ですから、受け取ってください!」

 駅そばの切手ビルにある銀玉ライオン。
 そこの窓際席で、雄一と桜子は向かい合っていた。
 桜子は手にした桜のかんざしを手に、切れ長の目をさらに細めていた。
 雄一は行き場の無くなったそのかんざしを、桜子の手に落ち着かせたのだった。

「あんた、私に気があるんじゃないでしょうね?」

 桜子はキッと雄一を睨みつけた。

「無いですよ。あなたは私にとって偉大なるエンジニアであり師匠ですから」
「あっ......そう」

 寂しげな顔に見えたのは気のせいだろうか、雄一はそう思った。

「どう?」

 早速、ポニーテールにした黒髪にかんざしをぶっ刺している。
 桜子は、雄一にそれを見せるために首をブンブン左右に振っている。
 その度に、結んだ黒髪と、かんざしの先端にある桜が揺れる。

「綺麗っす」

 雄一は無表情だった。
 これが秋華だったらと思うと、激しい虚無感に襲われる。

「ふふふ」

 終始、笑顔で桜子は杯を重ねて行った。
 雄一は冷めた気持ちでこう思った。

(実はこの人、物凄いツンデレなんじゃないのか?)

「そんなことより」

 桜子は急に真顔になった。

「リリースおめでとう」
「ありがとうございます」

 そこからは仕事の話になった。

「うちは9月1日のリリース。そっちに一週間先を越されたのは悔しいけど、これ以上、工期短縮したらいいものは作れないからね」
「やった。今回は俺の勝ちですね」
「そうですね」

 桜子は悔しがる様子も無く、むしろ笑顔だった。
 後輩の成長を喜んでいるのか、プレゼントが嬉しいのか終始上機嫌だった。

「でも、安田さんの方が凄いですよ。なんたって府中屋の仕事とOGR.comの仕事をしながら、反社と戦って会社を丸ごと乗っ取っちゃうんですから」

(嫁にすると怖そうだ)


---------------------------------------------------------------

 8月29日(土)、10時。

 弥生は打ち合わせブースでうなだれていた。
 AIの結果を無視して、自分の直感に任せた。
 その結果、全戦全敗。
 AIが出したマッチング率に嘘は無かったのだ。
 それを身をもって感じていた。
 かといって、マッチング率100%の堀井良夫と会う気は無かった。

「お待たせしました。如月さん」

 寺山がパーティションの仕切りから顔を出した。

「お疲れ様です」
「ちょっと、今日はあなたに会わせたい人がいるんですよ」
「え?」
「堀井さーん」

 弥生は背筋が粟立つのを感じた。
 パーティションの向こうからドスドスと足音が聞こえてくる。

「ぐへへ。寺山さん、この人ですか? 僕とマッチング率100%の運命の人は」

つづく

次回は2/10。

あと3回。

Comment(9)

コメント

桜子さんが一番

おい!雄一。秋華ちゃんに振られたからって桜子さんにあげたらアカン、
そうゆうもんはメルカリにでも売らな。
>(嫁にすると怖そうだ)
確かに・・・そやけどオレ耐えれるで!知らんケドw
(なんの話やw)

VBA使い

タイトルを見て、雄一と桜子の事かと思ったw


ブルルル
胸ポケットを見るとスマホが振動した。
→ブルルル、となったから胸ポケットを見たので、
「胸ポケットのスマホが振動した」か「胸ポケットを見るとスマホが振動していた」がしっくり来ます


桜子ほど鋭いお方なら、一回開封してあるのを見抜いててもおかしくないね


堀井を勝手に連れて来たんだから、初回出会い料は当然タダだよね?

ななし

ぐ、ぐへへ…?

桜子さんが一番

あっ、ずっと気になってたんです。。。
銀玉ライオンの元ネタが気になります。
話中にでてくるハンバーガーショップも喫茶店もイメージできるんですが、これがわからん・・・

foo

むしろ、雄一が秋華を食事に行くとこまで漕ぎ着けられた事が意外。
雄一が秋華を誘おうとしたら、地獄耳を利かせてどこからともなく現れた桜子が「そこまでよ!」しにきて結局未遂、ってパターンが来るかと思ってたぜ。

>  鏑矢社長は売り上げを考え、それを増やそうとした。
>  だから、土壇場でAIが出した結果を改ざんするという要求を突き付けた。
>  それに対して抗った雄一達は、『初回会員出会い数』の改ざんという暴挙に出たのだった。

雄一達も結局この手を選んだみたいだが、鏑矢社長もこれを責められないだろうな……鏑矢社長の面の皮の厚さがオーバーフローしてなければ。
ただそうなると、こないだからほのめかされてる、弥生から鏑矢社長を説得するって策は不発に終わったんだろうか? それとも……?

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。


>秋華ちゃんに振られたからって桜子さんにあげたらアカン
こういうところが、いつまでも素人cherryである理由なのかなと思います。


>メルカリ
出品して売上をメルペイに入れて、キャッシュレス還元を受けよう!


>耐えれるで!
たまに飯は作ってくれると思う。

>銀玉ライオンの元ネタ
ビアホール銀座ライオンです。

その他、
チキン男爵→鳥貴族
コメダワラ珈琲店→コメダ珈琲店
エムドナルド→マクドナルド
養父乃瀧→養老乃瀧
星屑珈琲店→星乃珈琲店
突然!ステーキ→いきなり!ステーキ
マイフレンチ→俺のフレンチ

湯二

VBA使いさん。


>タイトル
ラノベによくある単語と長いタイトルを組み合わせてみました。


>胸ポケットを見るとスマホが振動
ですねー。
直しました。
振動することが始めからわかるとは、まるで超能力者みたいですもんね。


>一回開封
そこを見抜けないほど、嬉しかったということで。。。


>初回出会い料は当然タダ
イレギュラーケースなので、タダですね。
ただ、データとしてはマッチングして出会った履歴は捏造しておかないと。。。

湯二

ななしさん。


コメントありがとうございます。


>ぐへへ
まるでモンスターの様な登場の仕方です。
第一印象は最悪!

湯二

fooさん。

コメントありがとうございます。


>雄一が秋華を食事に行くとこまで漕ぎ着けられた事が意外
PM権限を使って。。。
ではなく、ご飯くらいならってのりでついて来たんだと思います。


>「そこまでよ!」
男女だから何があるか分からない。
相手が未成年だし。
桜子ポリスが検挙に来てもおかしくないですね。


>弥生から鏑矢社長を説得するって策
実は親子の対面はまだ、この先にあって、それは最終回までのお楽しみに!


コメントを投稿する