生涯現役のITエンジニアを目指して、日々成長していくためのコラムを紹介します

本を書くことは一体全体どういうことなのか?

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エンジニアライフ読者の皆様、こんにちは。平田豊です。

この度、22冊目となる著書が発売になったので、その宣伝も兼ねて、今回は本を書くということについてお話させていただきます。

新作発売

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「組み込みエンジニアが脱サラして独立起業した話する?」という本がまんがびとから2020/4/17に発売となりました。d(>_< )Good!!

電子書籍と紙の本(POD)で販売となります。noteの有料記事をベースに加筆修正を行っています。

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なぜ本を書くのか?

しばしば「どうして本を書いているのですか?」と聞かれることがあるのですが、端的に言うと、本を書くことが夢だったからです。

筆者は古い世代の人間ですので、学生時代(高校生)に初めてパソコンを使い出した時にはまだインターネットというものはありませんでした。IT(アイティー)という言葉もまだなかったですね。当時はマイコンという呼び方をしていました。「マイコンBASICマガジン」、通称ベーマガと呼ばれるコンピュータ雑誌を買って読んでいたのですが、定価が500円未満で、子供のお小遣いで買える値段だったのです。

IPA主催の情報処理技術者試験では「マイコン応用システムエンジニア試験」という資格区分がありました。のちの「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」です。

当時は、マイコン改めITを学ぶためには、書店で本を買ってきて勉強するしかありませんでした。本が自分にとって先生のような位置付けです。ですので、本を書いている人は自分にとって雲の上のような存在と幼心に感じていました。

そうして、いつか自分もITのスキルが身についたら、人生で一度でいいから本を書いてみたいと強く願うようになったのでした。

国語は苦手科目で、学校の宿題で出される読書感想文は特にきらいでしたね。宿題としての読書は好きではありませんでした。けれども、技術書を読むのは好きだったので、本を読むこと自体が苦手というわけでもなかったのです。

チャンスの神様は前髪しかない

本を書くにはどうやって出版社とコネを作ればいいのか分かりませんでした。そんなある日、工学社から「本を書いてみないか?」という依頼が来たのです。2001年の話です。もう今から19年前になるのですね。

工学社では月刊I/O別冊で時々寄稿をしていたことで、信頼を得たのかもしれません。しかし、2001年といえば、筆者はまだ25歳。本を書くのは、なんとなく年を取ってからかなと思っていたので、20代の若造が本を書いてもよいものか悩みました。

けれども、これは人生で一度しかないチャンスかもしれません。この機会を逃したら、もう二度とチャンスは訪れないような気がしました。チャンスの神様は前髪しかない、と言いますが、あとになってチャンスを掴もうとしても、時すでに遅し。掴むことはできないのです。

本といえば紙の本

本といえば、紙の本です。本屋や図書館にいけば、棚に並んでいるもの。というのは、昔の話。

2020年の現代では、全国から書店の数が減っていっており、本の売上も年々落ちているのが実情です。いまや、紙の本は高級品となりつつあります。特に技術書のように一冊数千円もする本を買うのは、富裕層のみとなりつつあります。揖保乃糸でいえば黒帯を買うようなものです。

モラルとしてどうかという話もありますが、買いたい本を書店でチェックした上で、メルカリやヤフオクで買う人が増えているのも時代を反映しているということでしょう。水は低いところに流れます。

はじめて本を出版したのは2001年で、2冊目を2002年に出しました。初版の発行部数はそれぞれ2500部、4000部でした。重版はしなかったので初版でおわりです。本は増刷で儲けるビジネスモデルなので、拙著では利益が出せていないということです。

著者としては売上部数が気になるところですが、当時は出版社に聞いても「わからない」と言われて教えてもらえませんでした。最近では売上の詳細レポートがもらえるので、具体的な数字が分かり、定量的な分析に活用しています。

出版不況はずいぶん前から起こっているのですが、それでも2003年は「PC書籍ブーム」と言われて、PC書籍がやたらと売れていました。大手出版社だと初版で7000部とかなので、なかなか羽振りがいい話です。

ベストセラーの明確な定義はありませんが、技術書では1万部いくとベストセラーと言われています。著書の中では「C言語 逆引き大全 500の極意」だけが1万部を超えていますが、22冊も書いてきてたった1冊なので打率は低いですね。

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ソフトバンククリエイティブから出版した「Linuxデバイスドライバプログラミング」は推定で売上7000部で、1万部は超えていません。ただし、この本は定価が4500円もするので、それでもよく売れたほうだと思います。2008年に出版して2013年ごろに絶版となったのですが、2017年にAmazonのプリントオンデマンドで復刊しました。復刊した理由はわかりませんが、正規の価格で販売できるようになったので嬉しいですね。絶版中は中古本が法外な値段で売られていましたから。

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2018年と2019年に出版した著書は、初版の発行部数はそれぞれ1000部、2500部です。昔と比べると、半分ぐらいです。出版不況を物語っていますね。売上を見ても、1000部を超えていないので、なかなか苦戦しています。

こうして紙の本の文化は終わっていっています。この世から紙の本が完全に消えてなくなるまで、もう少し時間がかかると思いますし、完全に消えることもないと思いますが、少し寂しい気もしますね。

電子書籍の現状

出版業界としては電子書籍への取り組みは以前からありましたが、鳴かず飛ばずの時代が長く続きました。電子書籍というと聞こえはいいですが、デジタルデータをサーバから配信するという形態で、読者は配信の権利を買っているのです。基本的に手元には残りません。出版社によっては、PDFファイルやEPUBファイルそのものを販売するケースもあり、その場合は読者の手元に残すことができます。

しかし、最近になって電子書籍の市場が活気づいてきました。理由としては、漫画村の一件で、電子書籍に関心を持つ人たちが増えたからと言われています。

筆者としては2018年の終わり頃から電子書籍の出版も手掛けるようになりました。売上で見ると、紙の本を上回っています。紙の本で出すよりも、電子書籍で出した方がたくさんの読者に読んでもらえることが分かりました。

著書の中でいえば、「私はどのようにしてLinuxカーネルを学んだか」がいちばん売れていて、発売して8ヶ月で売上5500部を突破しました。奇跡が起きました。

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電子書籍は物理的な場所を取らないこと、紙の本より安いこと、いつでもどこでも手軽に読めることなど利点が多いので、徐々に市場が広がりつつあります。

おわりに

出版不況が加速して、本という文化は終わりつつあるのかなと思っていたのですが、そうではありませんでした。今の時代、世間が求めているのは、手軽に読める本であり、需要も高いです。

商品を売るためには、商品に魅力を持たせること、適正な価格設定であることのふたつが重要です。従来のビジネスモデルでダメなら、ビジネスモデルそのものを変えていく必要があります。それが経営というものですから。

自分が面白そうと思ったことは、すぐにでも目標を立てて進んでいくだけです。あれこれ考えるよりも、行動することが大事。人生を歩んでいくためには、他人の目は必要ありません。自分はできると思い込んで前に進むことで、自分に自信が付き、人生が変わり、人生が面白くなるのです。

本を出せば、読者のみんなが喜んでくれます。これからも本を書き続けていきます。それが、わたしの夢を叶えるということだから。

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