文学部出身のややくせのある視点から見た、IT業界、人工知能、働くこと、などなどについての文章

読書感想文『ブロックチェーンの描く未来』

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 新年あけましておめでとうございます。消火器です(Twitterはこちらです→https://twitter.com/super_syokaki)。今年もお引き立てのほどどうぞよろしくお願いいたします。なむなむ。

 2021年は読書の年だ!ということで、新企画として読書感想文を書こうと思います。軽い投稿をバンバンしたいのでその一環でもあります。

 さて、今回は、森川夢佑斗『ブロックチェーンの描く未来』(2018)を紹介します。

読んだいきさつ

 前々から人工知能に興味がありましたが、ブロックチェーンは人工知能よりはるかに概念が難解そうで、ちょっと敬して遠ざけているところがありました。んで、何もない年末年始になにか読むものをと思って地域の図書館に行ったわけですが、いやー、変わってましたね!大学に通っている間は行くとしたら大学の図書館だったんで、久々に来てみたら貸し出し・返却処理が無人化されている!とたまげる羽目に。しかも大変スムーズ。冊数を入力してパッドの上に置くだけで勝手に読み取ってくれるので、ものの10秒ぐらいでできちゃう。すごい!とテンションが上がりました。

 ......図書館の話はどうでもいいんですが。で、もともと予約していたお目当ての本を回収したあと、なにかついでに借りるものないかなー、とふらふらしていて見つけたのがこの本です。図書館をあてもなくふらふらしているのは至福のひと時ですね。ついつい読みもしないものを借りてしまったりしますが、今回はちゃんと読んだぞ。

感想

 めちゃくちゃ面白かったです!

内容

 ブロックチェーンを支える具体的な技術の話はけっこうばっさりカットして、ブロックチェーンがいったいどういう目的で生まれた技術なのか、思想面にフォーカスした内容になっています!ブロックチェーンの性質を「お金」「記録」「契約」という側面から捉え、人類史と絡めながらブロックチェーンの革新性を論じたあと、ブロックチェーンがwebに対して与えるインパクトをまとめ、課題や展望、活用の具体例について述べる、という感じになっています!読んでてめっちゃわくわくしますよ!感想文のテンションも若干高めでしょ!?

 いまの暮らしの同一平面上にある技術であるというよりは、人々の生活に根本的な変革を与える技術なのだということがよーくわかりました。概念が難しく感じられるのは、自分たちが、さまざまなものの中央集権的なあり方にすっかり馴れきっているからだと思います。ブロックチェーンによって実現されるのは、さまざまなものごとの分散的なあり方の実現であって、「中央」が持つ(文字通りの)暴力的な力によって支えられている秩序から、プロトコルやアルゴリズムによる秩序への移行だと、自分は理解しました。何言ってんのかわかんないよ!という場合は、ぜひこの本を読んでみてください!

疑問

 人間社会の秩序がプロトコルやアルゴリズムによる秩序になった場合、個々の人間の、あるいは人類の主体性はいったいどのように認識され、扱われるのか、ということはちょっと気になりました。

 現行の社会において、秩序維持のために「中央」の暴力的な力が必要だった一因は、人間が自由に行動できるというところにあるでしょう。契約が履行されないという事象は、契約そのものが人間の行動になんら物理的な制約を与えない、ということによって可能になります。そして、契約を無理に履行させたり、双方に言い分のある紛争を調停するために、「中央」の暴力的な力が使われる、というわけです。

 ブロックチェーンが実現する秩序は、自分の理解に基づいて言ってしまえば、人間が自発的に秩序立って行動するように仕向ける、あるいはそう行動せざるをえないようなシステムを構築することによって実現する秩序です。この「自発的な向秩序的行動」をどう捉えるか、とか、あらかじめ人間の自由が制限されている状況をどう捉えるか、というのが、ド文系の自分としては気になるところです。

 たとえば、「自発的な向秩序的行動」は本当に自由といえるか、という問題が考えられます。これは倫理学の割と伝統的な問題と比較できそうです。自分は「詳しい人」ではないので正確じゃないかもしれませんが、カントは、自発的に普遍的な倫理法則に従うことこそが真の自由である、というような思想だったようなそうじゃなかったような。カントの場合は個々人の理性によって法則が導かれますが、ブロックチェーンの場合はシステム的な論理によって(法則が、というより、文字通り人間が)導かれることになる。これは似て非なるものです。外部から整えられた環境によって、人間があたかも自発的に望むように特定の行動に導かれる。この状況の内部の個人としては当然その行動が望ましい行動ということになりますが、この状況をメタ的に外部から眺めたときに、果たして本当に望ましいといえるか。ここで問われるのは、人間にとって自由とはなんなのか、人間が希求する自由とはなんなのか、という問いです。

 長くなりましたね。それではまた!

Comment(2)

コメント

白栁隆司@エンジニアカウンセラー

感想のその素直な一文がステキだと思いました!

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