社内SEの実態を公開

信頼関係

»

「せんぱーい、来月から私も情シスなんですよ〜。今引き継ぎしてるんですけどー、何言ってるかわからないんですよ~。先輩はどうやって覚えたんですかぁ?」

来月から異動でしてくる後輩の女の子から相談されました。私も情シスに来て3年だけど、まだまだ分からないことだらけ。とても教えられる様な知識はありません。

これまでは営業アシスタントとして事務の仕事をしていたのですが、出産・育児休暇後に復帰したものの、時短では営業現場に着いて行けず、情シスに拾ってもらいました。それからなんとか3年やってこれたけど......

「ぜーんぜん、先輩出来るじゃないですかぁ。わたしー、まじ言ってること意味不明的な感じで。宇宙語しゃべっている的な」

その話し方をなんとかしてやりたい気持ち抑えつつ、少し振り返って見ましたが、時短で帰る時の申し訳なさ、みんなの足を引っ張っている罪悪感で苦い思い出しかありません。それでも周りの人からはそれなりにこなしているように見えているのかな?

「うーん、課長と仕事をしてたら自然と身に付いたのかな......」

可愛い後輩の相談なので、課長に相談してみることにしました。チャットで

『相談したい事があるのですが、お昼空いてますか?』

と聞くと

『おー、ちょうどよかった、いいよ!』

と軽く帰ってきました。何がちょうど良かったのだか。

「忙しいところすみません。今度後輩が情シスに来るのですが、どうやって教育したらいいか悩んでまして。私自身どうやってきたか、あんまり覚えてなくて。すみません。課長はどうやって私に仕事教えてくれたんですか?」

スマホを机の上に置いて、水を飲みながら、少し考えて話し始めました

「そうだね、別に特に何も教えようとは思わなかったかな。ただね、ちょっとしたコツがあってね。知りたい?」

それを知りたいから相談しているんだ、と心の中で突っ込みながらも頷きました。

「分からなそうな単語が出てきたら、周りに悟られないように分かりやすい言葉に置き換えるんだよ。コイツわかってないって、感覚で分かるからね。システム用語って難しいから。君にだげじゃないよ、プライドの高い上司にもよく使うね。それである程度話している内容が理解できるようになったら、誰に聞けばいいかを教える。例えばネットワークの話題なら、こいつに聞け、アプリだったらこいつ、みたいな。これだけ。」

なんだか拍子抜けしてしまいました。時短の子持ちの身。時間も取れずに戦力にしてもらったんだから感謝せねば。でも、なんか頼られていなくて、誰でも務まるような気がして、自信がさらに無くなった気がしました。


「そういえば、いくつになったっけ?」

え、いきなりと思いながらも
「35歳です。アラフォーなんですかね。今度来る子は若くてかわいいですよ~」
その時、机の上の課長のスマホがなりました。何か急用ですかと聞いても気にしないでと言っています。

「ごめん、お子さんの年齢だよ。何歳になった?」

「うちの子ですが、5歳ですよ。ようやく子育ても落ち着いてきました。」

「そっか、かわいいね~」
と何気ない会話をしていると、また課長のスマホがなりました。メールが来ているのでしょうか?課長はちょっと真面目な顔をして語りだしました。

「情シスに来たからって、システムの知識が必ずしもマストとは限らないよ。あるに越したことはないけど。それよりも、個人の得意分野をうまく活かすのが本人も周りにとってもいいと思うんだよ。」

そう言うと、姿勢を正し私の目を見て話しました。

「君はコミュニケーション能力に長けている。誰とでも話ができて、後輩が相談してきたようにね。これって重要なことで、ユーザとシステムの橋渡しをするには大切なスキルなんだよ。」

なんだか正面向いて褒められると照れます。その後は食事をしながら砕けだ感じの会話に戻りました。

「5歳の子供だと、なぜ・なに・なんで、って質問されない。その時どう答えてる?もしかしたら知っていることを教えてあげるかもしれないよね。わからないことだったら、適当に答えるかも。お母さんは忙しいしね。一番いいのは、一言"どう思う?"って聞き返すことだと思うんだ。時間に余裕があるときは是非そうしてあげてね。そうすると、徐々に自分で考えだすよ。そやって自分なりに考えたことが物事として身についていく、それが成長だと思うんだよね。

仕事も同じで、自分で結論を導き出すために考えたプロセスが一番身につくんだと思うんだ。俺はヒントを与えたのではなく、そこにあるヒントをわかりやすい表現に変えただけ。それを元に仕事中や家事育児をしながら色々と考えたんでしょう。今ではユーザの意見を吸い上げて、システム側の適任者にきちんと伝えられる重要な役割を担っているよ。自信をもって。」

課長が自分のことを凄く気にかけて、陰ながらサポートしてもらって、とても嬉しく、なんだか恥ずかしく、顔が赤くなりました。

「どう?惚れた?」
と言ったそばからまたスマホが鳴りました。さすがに気になったので聞いてみると

「いやー、実はね......いま極秘で実験中なんだけど、パワハラ・セクハラ発言チェックアプリを試行中でね。管理職側から要望があって、何を言ったらNGなのか判別したいんだって。このご時世だからわからなくもないけど。あ、今回の会話は録音していないから心配しないでね。ほら、これが検知結果だよ」

スマホの画面を見ると
"いくつ"、"かわいい"、"惚れた"、などの単語がピックアップされています。ただ、前後の文脈が判定できないので、実用化にはまだまだのようです。

「まあ、オモチャみたいなもんだな。でも、さっき言ったことは本当だからね。後輩のいいところを伸ばしてやってね」

課長との話はありがたく、少し自信を持てたのですが、変なアプリを使うなら、事前に言ってくれればいいのに。最後に少し反撃です。

「セクハラ発言もお互いに信頼関係があれば単なる下ネタ以下ですよ。そこを学習しないと!そのアプリまだまだですね。いくつ、かわいいって言われても全然不快に感じませんよ......だって......」

と一呼吸置いて、課長の目を見つめ

「課長のこと好きですから!」

「えっ......あ......ええええええ!」

「あれ、これは反応しないんですね。なるほど、フフフ」

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する