社内SEの実態を公開

AIの瞳

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「部長と課長、また夕方からベンダーと飲みだってよ。打ち合わせの後、直帰とか言ってるけど、なんの打ち合わせしてるんだか。全部仕事は主任に押し付けて、上に取り入ることしか考えてないんだから!忙しいし、つまらないし転職しようかな......」

情報システム部業務システム課のメンバーはモチベーションが上がりません。今日も主任が一人で障害対応に追われて大変そうです。自分たちの仕事も忙しいので、手伝うのにも尻込みをしています。主任も人に仕事を振れないので仕方がないのですが。

「そろそろ子供のお迎えがあるので失礼しますが、明日でよければお手伝いしますので言ってくださいね。」

時短勤務の女性社員が気を使って主任に声をかけますが、

「ありがとう。大体片付いたから後は監視だけだよ。夜間処理待つだけだから楽勝!無事を祈っていてくれれば嬉しいよ!」
と笑顔で気にしないように接しています。


年が明けて2月初旬。来年度の人事を決めるため、各部の部長が管理下の課長を選出します。業務システム課の課長は何年も変わっていません。きっと部長が異動になるタイミングで引き上げようと画策しているのでしょう。所詮は玉突き人事。人事の儀式も形骸化しています。


数日後、情報システム部長が社長に呼ばれました。

「業務システム課長は今年も変更なしなのは何故ですか?もう大分長いのでは。」

との社長の言葉に、部長はすらすらと答えました。

「システムとマネージメントの経験がある人材がなかなか居ないのが現状です。それに今はシステムが立ち上がったばかりで、まだ不具合も多く、安定稼働するまでか彼が適任と考えます」


「マネージメントの能力とはどういうものだと思いますか?」

との社長の問いにも考える前に口が動いている様子で部長が答えます。

「それは、メンバーの能力を最大限に引き出し、組織目標を達成すること......」

と言い終わらないうちに社長が口を開きました。

「君も含めて、うちの役職者はマネージメント出来ていると思いますか?私はそうは思いません。最近、離職率が高くなっています。退職者に人事部からインタビューをすると、管理者への不満が大変多いです。コミュニケーションが取れない、丸投げされる、管理者が不在がち。情報システム部は部下の話を聞いていますか?何に不安があり、何に困っているかわかりますか?」

これまで顔色を変えなかった部長も答えに詰まっています。

「次の課長には業務システム課の主任を昇格させて下さい。君と課長は子会社に出向です。そこでシステム化による業務効率化を進めてください。本社と違って、子会社は予算も少ないです。ベンダーに丸投げせず、ぜひ今までの知見を存分に生かしてください。」

社長は笑顔で部長に伝えました。部長はあれこれ抗議していますが、決定事項は揺るぎませんでした。新しい情報システム部長にはデジタル推進課長が兼務することになりました。


今までの地道な努力をし、誠実な人柄の主任が来月から課長です。出世するのに主任の顔色は曇ったままです。終業後、次期部長のもとに向かい辞退したいと話しました。

「私は現場が好きで、とてもマネージメントが出来そうにありません。それに上の人達と飲みに行ったり、ゴルフするのも気が重くて。」

次期部長は

「明日業務システム課のメンバーを集めて少しお話ししましょう。」

とだけ話して退社していきました。


朝一で小さな会議室に集められた業務システム課の面々。次期部長がゆっくり一人一人見ながら話し始めました。

「今度課長になる彼は、マネージメントの経験がなくて課長が務まるか心配で辞退したいと言ってきました。気持ちは分からなくもないです。今日みんなに集まってもらったのは、彼を課長にしてあげてほしいと言うことを伝えたくて集まってもらいました。おそらく、彼は課長になっても仕事を抱え込み、メンバーに振らないでしょう。そんなときは、彼が仕事を任せられるように皆さんが力を貸してあげてほしいのです。マネージメントが出来るかどうか分からないと言いますが、今までも課の状況を把握し、メンバーとコミュニケーションを取っていたはずです。これが既にマネージメントでは無いのでしょうか。自信を持ってください。失敗しても構いません。あなたのような人材を出世させない事こそ会社のリスクなのです。」

ゴールデンウィークが明けて春の温かさを感じ始めたころ、まだぎこちないですが新任課長は右往左往しながら元気に働いています。課員も明るく前向きになった気がします。


「社長直轄の極秘プロジェクト、AI人事ですが、今まで目が届かなかった人材にスポットが当たり会社に活気が戻った気がします。AIの分析結果でも潜在退職者数も減少傾向です。」

「出世するためには上に取り入るなんて時代遅れだよ。それでは組織が硬直し、取り残されてしまう。優秀な人材を流出させないために、人の目が届かない部分をAIでサポート出来て良かった。主任だった彼と同様のスペックの人を採用し教育するのにどれだけ時間と金がかかることか。前の部長も昔は仕事熱心だったのだけどね。まあ"泣いて馬謖を斬る"って程でもないか。馬謖というより魏延かな」

「社長、また三国志ネタですか。人の目の届かないところにAIの目、AIのeyeなんちゃって!」

「デジタル推進課のボスのくせにダジャレのセンスないの〜」

Comment(2)

コメント

コバヤシ

さらっと読めるしおもしろですね~
デジタル推進課長かっこいい

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