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『ヒトとネコのコミュニケーション 第三の眼獲得』-アイリとミーの日常-

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皆さん、テレワークいかがお過ごしでしょうか。筆者は愛用の眼鏡を割ってしまい、テレワークの手元用の眼鏡を10年ぶりに新調しました。ブルーライトカット型でほんの僅かに白色が黄みがかった色に見えます。
今回はブルーライトを浴びけ続けた世代後のずっと未来のSF短編です。

強力なブルーライトを浴び続けた世紀に全く新しい感覚受容体を獲得した二種の哺乳類がいた。その世紀は短波長光受容時代と呼ばれ、今から千年前のことである。

文献によると、当時テレワークが極限に浸透し、コミュニケーションはLEDディスプレイとスマートグラスによるものだった。

人はブルーライトを眼から知らず識らず受容していた。それもかつてないほどの量に達していた。

一方、いつも主人の邪魔をしてディスプレイの直前に陣取っていたネコも人ほどではないがブルーライトをその夜目が効く眼に受けていた。そうヒトとネコがその眼に特殊な受容体を突然変異により獲得した。

第三の眼を獲得したのである。

視細胞から分化し、進化した細胞は光の可視化領域に反応せず、超微弱の電磁波に反応する磁波細胞が眼の中に生まれたのであった。

眼からの情報は視空間情報と電磁波情報が混在して脳に入ってくるようになり、次第に脳内では視空間情報による三次元空間の認識と共に、電磁波情報によるオーラ体がオーバラップされて認識できるようにヒトとネコのみが進化したのであった。

さらに、オーラ体の波紋が言語中枢と連携し、言語として認識できるようになった。

故に、この世紀以降のヒトは目視範囲であればテレパシーを使う。ネコともある程度コミュニケーションが可能になったのであった。

今の時代、訓練によってヒトは五歳、ネコは八歳にしてテレパシーを使えるようになる。そんな時代のある日の日常は次のようなものである。

「ただいまにゃん」オッドアイの目を持つスコティッシュフォールドの八歳のミ―が言った。

「今日はどこに行ってきたの?」五歳になったばかりのアイリが幼稚園で学習したテレパシーで問いかける。

「西の教会さ」

「いつも神社なのに、何しに行ったの?」

「ボスには内緒だよ。下僕よ」目を細めてアイリに圧を掛けて言ったつもりだが、アイリにはそれは可愛い仕草にしか映らなかった。

「うん。それで何しに行ったの」

ミーはアイリが生まれる前からこの家に自らやってきた。とある満月の夜に玄関でポツンと雨宿りをしていたところをパパさんと目が合い、認められてこの家のパートナー猫となったのである。

それゆえ、この家の序列はボスのパパ、次にネコのミー、次にパパの相棒と最後に新たな住人になったアイリで、ミーから見ると下僕なのであった。

「それはにゃ、西の教会に出るという噂があってな、その捜索だよ」

「何が出るの?」

「それな内緒なのにゃ」

「ほら、これあげるから。教えてよ」アイリはポシェットから透き通った水色の飴玉を差し出した。

「我はな、そんな物は食べないにゃ」分かってないなこいつはという目でアイリを見つめた。アイリにはそれは可愛い仕草にしか映らない。

「じゃ、これは」アイリはさらにポシェットをさぐり対アイ用の"いうこと聞かせアイテム"のジェムを取り出した。

「よかろう下僕よ」

「で、あそこに何が出るの? そんなこと幼稚園で聞いたことないよ」ミーを抱き上げてその水色と金色の目を覗きこんだ。

「それは妖精にゃ」ミーはアイリの目を見つめて、妖精の姿をオーラ体に包んで送った。

「絵本で見たのと全然違うわ。これが妖精なの?」

「これはにゃ、下僕には見えないにゃ。というかボスにも見えない。こいつを家に招き居れたところは大いなる幸福を得られるにゃ。それによって我も恩恵をうけるにゃ」

「まって、これはもしかして噂の"ちっちゃなおじさん"だわ」

でもおかしいわ。皆の噂では神社の裏山に居るっていってたもの。教会にはいないわ。やっぱり違うのかな。

「そこにゃ。我は縄張りは東の神社なのは知っておろう。そこでは妖精を探していたのだがな。最近西の者から聞いたのだよ。妖精は数が限られており、姿を現すのはめったにいないにゃ」

「だから、それって妖精じゃなくてただの"ちっちゃなおじさん"だって」パパに聞いてくる。

「まて、まて下僕よ。大人の人には知らせてはならない。知られたらこの家に来てもらえなくなるにゃ」

「いいよ、かわいくないから。こなくていい」妖精とこういうものだとアイリはミーに妖精の姿をオーラ体に包んで返送した。

「ああ、それも妖精にゃ」ミーにとって小さくて実体がなくオーラ体だけのものは全部妖精の範疇なのであった。

「とにかく、わたしも見に行くわ。連れてって」アイリはポシェットからまた一個ジェムを出した。

「しょうがないにゃ。絶対ボスには言っていけないよ」

「わかった」

満月の月明りに小さい女の子と白いネコの影ができる。

はたして"ちっちゃなおじさん"こと福の神を無事に家に向かい入れることができただろうか......

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