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第464回 キャリコンはオワコン?

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 先日、あるキャリコンの方からこんな相談をされました。

 「国家資格キャリアコンサルタントの資格って取っても意味がないんですか? 」

 どうもその方は国家資格キャリアコンサルタントが有用でないと謳っているサイトの情報をご覧になられたらしく、とても悔しい思いをしたそうで、それを私に伝えたかったみたいでした。今回はこの話から資格の有用性について考えてみます。

■キャリコン資格って意味ないんですか?

 その方が言うには、そのサイトにはこんな情報が書かれていたそうです。

・国家資格キャリアコンサルタントを取得するためには多額の費用が掛かる
・費用が掛かる割に、資格を取って得られる優位性が名称独占資格でしかない
・別に資格を取らなくてもキャリコンはできる
・そのため、この資格は費用対効果が悪く、取得する必要性はない

 「確かに的を得てますね(笑)」と私が返すと、その方はびっくりされて「高橋さんまでそんなことを言われるんですか! 」と怒られてしまいました。。。本当のことを言っただけなのになぁと思ったのですが、このままだと埒が明かないので、少し私の考えをお伝えすることにしました。

■業務独占資格は万能?

 世の中にはたくさんの資格があります。私自身もITエンジニアの時分から換算したら20以上の資格を持っています。中には全く役に立たなかった資格もありましたし、ITエンジニアを引退した今でも有効に使っている資格もあります。そういった中で私が感じた資格感は、

資格は持っているだけでは役に立たない。使い方を与えてこそ資格は生きる

と考えています。唯一例外があるとしたら、自動車運転免許位ですが、それ以外の資格、例えば弁護士や医師免許のような業務独占資格についても私は同じだと思っています。

 例えば、弁護士資格について考えてみます。弁護士資格を取得するためには司法試験を受け合格した後、司法修習の期間を経て晴れて法曹資格が取得できます。しかし、法曹資格を取っても、弁護士として活動するためには弁護士事務所に就職しなければなりません。

 しかし、その方の性格に難があったり、コミュ力が低かったりしたら、弁護士事務所としてもその方を雇うかどうか躊躇してしまいますよね。つまり、法曹資格を持っているからと言って100%弁護士事務所に就職できる訳ではないのです。法曹資格を持っていることは弁護士事務所に就職する上で必要条件ではある一方、十分条件ではないということですね。

■PMPを取ってプロマネの仕事をもらった話

 業務独占資格ですらこんな有様ですから、他の有象無象の資格は言わずもがなです。それは私自身、多くの資格を取得してきた率直な感想です。ただ、それでも私は資格をうまく使って仕事をしてきたと思います。例えば、私の場合、PMPがその例に当てはまると思います。

 PMPはProject Management Professionalと言われるプロマネの国際資格です。今では多くの人に認知されているプロマネ資格のデファクトスタンダードのような位置づけになっていると思いますが、当時、私がこの資格を取得したのは今から20年以上前の話でした。

 その当時の私はSE的なポジションで仕事をすることが多かったのですが、そこから先のキャリアを考えた時にどうしてもプロマネをやっておきたいと常々考えていました。しかしながら、プロマネ経験のない人間にプロマネを任せてもらえるほど世の中は甘くありません。そこで、その当時少しずつPMPの情報が現場界隈でささやかれるようになったのを耳にして、この資格を足掛かりにプロマネをやらせてもらおうと考えました。今でこそPMPを学ぶための教材は充実していますが、当時は英語で書かれた問題集程度しかなく、それを自分なりに和訳しながら学んでいきました。そうして2回目の受験で何とかPMPを取ることができました。

 その後、意気揚々と「PMPを取ったんでプロマネやらせてください! 」とお客様に伝えたのですが、案の定、門前払いを食らってしまいました。。。

 そこでアプローチの仕方を少し変え、PMPがいかにプロマネ業務の効果性を高められるか、そのPMPを持っている私をプロマネとして使っていただくことの有用性をお客様に伝えるために自分で企画書を作り、お客様にプレゼンさせてもらいました。そうして、何とかプロマネのお仕事をいただくことができ、そこを足掛かりにどんどんプロマネの仕事をやらせてもらえるようになりました。

 ここから私が学んだことは、苦労して取ったPMPという資格は持っているだけでは何の価値も生まないということでした。PMPという資格に使い方を与えてあげられるのは他でもない私です。私がPMPの資格をどう生かしていくかを考えて行動しないと資格としての価値は生まれないということでした。この考えは今の私の資格感に繋がっています。

■キャリコンはオワコン?

 そう考えると、キャリコン資格を持っている方の中には資格を取得された後、その資格を活用しようと自分で考え行動されている方はあまり見受けられないように思います。実際、最初の例にあるように、そういった行動を取れる方は端から資格などに依存しなくても自分で道を切り開ける方でしょうから、キャリコン資格には依存していないのかもしれません。

 ただ、私から言えることがあるとすれば、資格に依存しなくてもやっていける一方、資格をうまく使うことで選択肢が増えることはあるように思います。実際、私はキャリコン系の資格を持っていますが、これを使って色んなことをやらせてもらっています。そういった意味では、私にとってキャリコンはオワンではありません。しかし、それは私だけの話なので、その考え方を他の誰かに強制することはありませんし、誰かを屈服させて認めさせる必要もないと思っています。だから、キャリコンはオワコンとおっしゃられている方がいたとしても、それはその人の中で真実なのだから、それで良いのではないかと思います。

 大切なことは資格を前にして自分ならその資格を使って何をするのか? 何ができるのか? それを考え実践することにあるのではないでしょうか。そういったことを考えないまま、ただ単に資格を取ることだけを考えて行動していると、今回のように周りの情報に流されてしまうのではないかと思います。

 そんなことを冒頭のキャリコンさんにお話しした所、ご納得いただけたみたいで、自分なりの資格の活かし方を考えてみるとおっしゃっておられました。。。

Comment(4)

コメント

匿名

いつも楽しく読ませていただいております。
資格については会社から言われて(精々面談の成果にするぐらい)、と言う面が多分にありますが、体系立てて学習出来るというメリットがあると思っています。
ですが、活用していく視点は無かったので新鮮でした。(本来はそうあるべきですが)
取得すればゴールではなく、取得して何をしたいかや、何を得たいかを考えないといけないと感じました。

ちゃとらん

いつも、楽しく拝読させていただいています。


私も『キャリコンはオワコン』とまでは言いませんが、国家資格と言われてもピンとこないところがありました。
情報処理技術者試験も国家試験ですが、手当目的に受験(それもありですが)だけにしか使い道がないと思っていましたので、今回のお話、非常に参考になりました。

白栁隆司@エンジニアカウンセラー

これから、国家資格キャリコンを取ろうと考えている自分について、身につまされるお話でした。


僕にとって、キャリコンは「何かをするための資格」ではなくて、一つの方向性を持った勉強をした結果、得られた資格だと考えています。

キャリコンをやりたいのなら、今でも十分にできると確信しています。

産業カウンセラー等、類似の資格との差別化も難しいと感じています。

でもやっぱり、キャリアコンサルティングについて学び、面談の練習をし、その結果を証明する資格が欲しいなと、そう考えています。

キャリアコンサルタント高橋

匿名様


コメントありがとうございます。


「学ぶ」という視点において資格は入口になりやすい方法だと思います。
ただ、学びの理由を考えた時に、学ぶことで何を実現させたいのかが次に出てくる話になると思います。
そういったことを考えて資格に向き合うことが、資格をより有効に活用させる方法になるのかもしれませんね。


ちゃとらんさん


いつもコメントありがとうございます。


私もITエンジニアの時分に手当をもらうために資格を取得することをやっていた時期がありました。
当時は手当をもらうことが資格取得の目的になっていたため、その後現場で活用したという記憶はありませんでしたw
とは言え、そういった関わり方についても、資格取得に対する一つの向き合い方なのかもしれませんね。。。


白柳さん


コメントありがとうございます。


勉強の結果として資格の取得があるのは目標を定める意味やモチベーションを高める意味でも大切なことかもしれませんね。


私自身、これまで数百人以上の方に国家資格キャリコンの対策トレーニングをさせていただいておりますが、こういったトレーニングを積むことで傾聴技法やキャリコン技法が深まっていかれる方は多くおられます。
コラムでは書かなかったですが、こういった自身のスキルを高め、そのスキルを現場に活かすという意味で国家資格キャリコンは有効な資格だと思います。


ただ、誤解を恐れずに言えば、資格を通して一人前にキャリコンができるようになるには国家資格キャリコンではまだ少し物足りなさを感じます。
それは、国家資格キャリコンの更新講習に参加される方のレベル感から見て感じる所でもあります。
できれば2級技能士辺りまでの実力がついて、技術面に関して一人前かなという感覚はありますね。

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