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【小説 愛しのマリナ】第十五話 挑発からの挑戦状

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 意表を突かれた森本は、目が点になっている。

「明日、お前の漫画を見せてみろ」

 それを聞いた森本は、一瞬迷ったような顔をした。

「何だ? 俺に評価されるのが怖いのか? 漫画ってのは皆に読まれてナンボだろ?」

 敢えて、慶太は挑発的な物言いをした。
 森本の表情に赤みが差した。

「あなたに僕の漫画を見せる義理は......」
「そんなに自信が無いものを描いてるのかよ? 仕事休んでまで」

 慶太は森本の言い訳に食い気味に反論した。
 森本の表情が怒りに満ち溢れたかのように真っ赤になった。

「分かりました。明日持ってきます」

 流石に、プロジェクトルームで漫画を読むわけにはいかない。
 明日の昼休み、職場の対面のベロッチェで読むことにした。


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 森本が土日加勢してくれない以上、堀井の単体テストを慶太ひとりでやる必要があった。
 自分が受け持つ機能の開発も並行して行わなければならない。

「すいません、うちの森本が土日出れないんで、加勢をお願いできないでしょうか?」

 苦渋に満ちた表情で、荒川に頭を下げる。

「あ? なに?」

 わざと意地悪そうに耳に片手をあて、聞こえないというジェスチャーを交えながら荒川が訊き返した。

「森本が土日出れません。私と一緒に堀井さんの単体テストをやってもらえませんか?」

 会議で一度引き受けておきながら、荒川に加勢をお願いするのは悔しかったが、仕事が滞るのは問題である。
 それにリーダーである荒川にもこの状況を把握してもらう必要があった。

「森本君に始めから、土日出れるか訊いてから提案してほしかったな」

 嫌味たっぷりに言う。
 顔には、ざまあみろと言ったような醜い笑顔が張り付いている。
 だが、先に森本を調整していなかった慶太にも落ち度はある。

「お願いします......」
「さあ、どうかな......、私も他の仕事を持っていてそっちもしないといけないし、元々あなたが提案したことを尊重してたから予定を空けて無いんだよ」

 こうなったのは、お前のせいだと言わんばかりの言い方だった。
 荒川なりの溜飲の下げ方なのだろうと思った。

「私も一緒にやりますよ」

 田中が話に参加してきた。
 それを堀井が横で心配そうに見ている。

「田中さんは、自分の仕事をやってください」

 その提案をぴしゃりとはねのけた。

「私も土曜日の午前中までなら仕事できます」

 堀井も参戦してきた。

「荒川さん、大丈夫ですよ。みんなで協力すれば結合テストまでに間に合います。私たちを信頼してください」

 田中が諭すように言った。

「もとはと言えば、あなたがこの忙しいときに用事を入れるから行かんのだ!」

 荒川は、堀井を指さしながら怒り出した。
 それを聞いた堀井は目に涙を浮かべている。

「だいたい私の引いたスケジュール通りに動けばうまく行くはずなんだ。それを勝手に自分たちで手伝いあって、乱そうとするからうまく行かなくなるんだ」
 
 外山が昔、荒川が外注ともめて手を上げたということ言っていた。
 それまでは、皆と協力し合って仕事をしていたという。
 現在の荒川の極端な考え方と、事件が起こる前の考え方は真逆だった。
 まるで、他のメンバーを信頼していない。
 過去に、相手を信頼しきったことで失敗でもしたのだろうか。
 話を打ち切り、荒川は喫煙室に移動して行った。


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 翌日の昼休み、ベロッチェで慶太、森本の二人は向かい合って座っていた。
 森本は自分が描いた漫画の原稿が入った封筒を、慶太に渡した。
 今度の週間ヤングマガデーの新人賞に投稿する作品だと言っている。
 慶太はその原稿を、封筒から取り出し、読んだ。

「おお......」

 慶太は驚いた。
 絵は確かにうまい。
 これが普通に雑誌に載ってたとしても、違和感はない。
 絵に関しては、プロと何の遜色も無いのである。

 ただ、肝心の話が面白くない。

 慶太は沢山の漫画を読んできた。
 その慶太をして、森本の実力はデビューは出来てもこれじゃ十中八九連載レベルは難しいと思えるものだった。

 原稿から顔を上げた慶太を、期待するような目で森本は見ていた。

「どうですか?」
「面白くない」
「え!?」

 森本の顔は紅潮した。
 それは自分の漫画に自信がある森本にとっては、予想外の回答だったのだ。
 そして、自分の意に反した回答を下した慶太に、敵意と怒りを感じていた。

「どこが面白くなかったか言ってください!」

 森本は周囲もはばからず、大声で慶太に問い掛けた。
 それはいつも冷静と言うか、どこか上の空である森本の風情とは、真逆だった。
 漫画への熱い激ぎりが沸点に達し、その思いが吹きこぼれたかのような叫びだった。
 
(こんなに熱い思いを持っていたのか)

 と、慶太は内心驚いたし、何よりこの思いを仕事にぶつけて欲しいと思った。
 慶太は具体的にどこが面白くないか、こうすればいいのではということを一読者目線で語った。
 それは普段から漫画を読んで、ああすればこうすればと夢想している慶太にとっては、容易いことだった。
 そして、森本にとってその答えは、いちいち納得できたし頷くものがあった。
 だがその分、森本は打ちひしがれた。
 慶太が森本の仕事ぶりを見て打ちひしがれたのと同じように。

「森本、お前は漫画の才能が自分であると思うか?」

 残酷だが最後に慶太はこう問いかけた。
 
「どういうことですか?」
「はい」と一発で返事をしないところに、自分の才能に迷いがあると慶太は踏んだ。

「お前には才能ないよ」
「は......!?」

 森本の眉間にしわが寄り、こめかみに青筋が立った。
 
「もう一度言う、お前には漫画の才能はない」

 森本は慶太を真っすぐににらみつけた。
 こいつに何が分かる、という森本の怒りの感情が、慶太に伝わった。
 
「二十三にもなって新人賞の佳作にもなれないくらいのレベルなら、それは凡人レベルだよ。才能のあるやつはもっと若いときからデビューしてるって」

 わざと軽い感じで言う。
 慶太はそうすることで森本を挑発していた。
 
「軽々しく言いますよね......漫画描いていないあんたに何が分かるんだ」

(おう、もっと熱くなれ、熱くなれ)

 慶太はそう思った。
 そしてこの若者がそれだけ物事に熱くなれることを知った慶太は、そのことを頼もしく思った。
 この情熱を仕事に向けさせることが出来たら、こいつは絶対大物になると思った。
 そしてその才能が、このデスマーチから自分たちを救う。
 そう確信を持った。
 問題はこいつがどうやったら仕事に本気を出してくれるか? だ。

「おまえが自分の漫画を面白いという自信があるなら、俺と勝負しろ」
「勝負!?」
「おれも漫画を描いてみる」
「え!?」
「お互い描いた漫画を同じ賞に投稿して、上位に入賞した奴の言うことを聞くんだ」

 漫画を読むことが好きな慶太は、自分にとって面白く無い漫画に出会うと、いつも自分だったらこうするのにと思いながら読んでいた。
 だから、ストーリーは常に頭の中にあった。
 描いたことは無いが。
 だが、森本に仕事をしてもらうにはこれしか方法がない。
 
 残酷だが慶太が勝負に勝って、森本に自分のレベルを認識してもらう。
 それを起爆剤にして、仕事に向かわせるしかなかった。

「俺はこの土日で投稿用の作品を描き上げる。森本は自分の自信作を投稿すればいい」
「本当に何でも言うことを聞くんですか?」
「ああ、好きなだけ休んでいいぞ。しかも休んだことは社長にバレないようにしておくし、こっちで徹夜でも残業でもして仕上げておくから、その替わり負けた時は分かってるな」
「......本当ですね?」
「ああ、男の約束だ」

つづく

Comment(4)

コメント

匿名

主人公が勝つと釈然としないし、森本が勝つと話というか仕事が進まない…うーん
土日に仕事と子供の世話を抱えて、さらに入賞しうるクオリティのマンガを初挑戦で仕上げるって素人目に見るとマンガ描くって行為を主人公は舐め過ぎに見えますがどうなんだろう…湯二さんも以前マンガ描かれてたとかだった気がするので、釈迦に説法でしょうけど。
先が読めなくて続きが気になります。

湯二

匿名さん。
コメントありがとうございます。
先を気にしてくれてありがとうございます。

ファンタジーで強引な展開ですよね。
主人公の頭の中でネームが出来上がっている設定なので、あとは描くだけなんです。
描くのはやっぱり時間が掛かるので、金曜の夜から徹夜でって感じで。。。
16ページくらいのものだと、アシスタントがいれば何とか行けるかなって感じですね。
ただ、主人公、絵をあんまり描いたことが無いからなあ。

atlan

「面白いけど絵が描けない」主人公と「ストーリーが作れないけど絵がうまい」森本でチーム作って漫画家に転職するんですね

湯二

atlanさん。
コメントありがとうございます。
ストーリー予想もありがとうございます。

それは思い付かなかったですね。
実際面白いアイディアだと思いました!

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