たまたま脆弱性検査担当者になって、仕事がらみで日々感じる雑感

リバイバル

»

悪夢の続き-作成者

(このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。)
「あいつを・・・たすけられなかった・・・何もできなかった・・・」
Cさんは向きを変えて椅子に崩れるように座った。

「いずれ、私達も同じところにいくんです。星から見れば大した違いではないです。」
私は沈黙に耐えかねて、慰めにもならないことを口走った。恒星や惑星の寿命に比べたら、50年の違いも、たいしたことないと。馬鹿なことを言ったものだと恥ずかしくなった。

Cさんは話し続けた。
「さっきA課長が、開発者のPCの中に残っていたというデータベースの仕様書を送ってきた。Excelファイルだった。」
ゆっくりとCさんは言葉を継いだ。
「そのファイルのプロパティ情報に、作成者が残っていた。ほら・・・」

私はCさんのPCのディスプレイに「彼」の名前を見つけた。私もまた、「彼」の名前を痛ましいものとして記憶していた。あのプロジェクトの話は誰もが知っていた。「彼」の名前から、「彼」の姿、交わした会話、言葉、表情が瞬時によみがえった。ディスプレイに向かっている後姿、説明する静かな口調、はにかむような笑顔、暗く沈んだ面もち・・・

「命を削るようにして作ったデータベースの仕様書を・・・」
Cさんもまた心の中に「彼」の姿や声をよみがえらせながら、静かに言った。
「こんなところで見ることになるとは、思ってもいなかった・・・」

液晶の画面に表示されている「彼」の名前を、私は両手ですくい上げたいような衝動に駆られた。「彼」はどこかで生きていると思いたかった。だが、作成日時は三年前だった。

のどかな春

思えばちょうど一年前はHeartbleedの問題で大変でした。PCに張り付いて情報収集していました。Heartbleedのおかげか、あるいは他の事件のおかげか、この一年で情報セキュリティが話題になることが多くなったように思います。今年の春はのどかに過ごしたいものだという、ささやかな願いを抱いています。

お読みいただき、ありがとうございました。

Comment(0)