エンジニアが敬遠しがちなプロジェクトマネジメントを、テレビドラマを題材に解説する

「たべるダケ」「テストダケ」「要件定義ダケ」「見てるダケ」

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■出没、食べるだけの女

 主人公の女性が「いただきます」ぐらいしか言わない異色のドラマ「たべるダケ」。主人公の女性は年齢・職業・名前(シズルという名前?)が不詳、そして神出鬼没。行動は、本当に食べるだけの女性です。その食べ方が、エロちっく(謎)。狂言回しの男性の周りに現れ、その男性の知人・親族と一緒にさまざまなものを、美味しそうに食べていく。書いてみると、よく分からない。まぁ、食べるだけのドラマです。

■IT業界にはびこるダケ職種 ―テストダケ―

 ドラマでは、本当に食べるだけの女性が登場しているですが、IT業界でも「XXだけ」の職種が当然あります。幾つか紹介しましょう。

 まずは、テストダケ。システム開発のテスト工程を仕事にしているエンジニアのことです。意外と多数いるのですよ、にぱー(死語)。

 テスト仕様書をもらって、テストの実施だけを行うエンジニアもいますが、設計工程からテスト設計を行うエンジニアもいます。ある人に聞いたところ、「テストクラスタ(テストに関わる業界)」は、なかなかディープで厳しい世界で、ちょっとした間違い発言でも、関係者から集中砲火を浴びる世界らしいです。

Testkinoko 
 
■IT業界にはびこるダケ職種 -要件定義ダケ-

 次は、要件定義ダケ

 普通、システム開発は最初から最後まで1つのベンダーが担当することが多い(と思います)。しかし、大規模案件、官公庁案件、金融案件等では、工程ごとに違うベンダーが担当することがよくあります。

工程担当会社成果物
要件定義 A社 要件定義書
設計 B社 設計書(基本設計書)
プログラミングと試験 X社、Yコム、Zシステム ソース、テストレポート、納品書等
総合試験 B社 試験成績書、試験報告書等

 そして、要件定義工程をコンサルティングファームとかベンダーのコンサル部門に依頼し、そこでビジネスモデルなどを作成し、要件定義書(らしきもの)を作成し、それを基にシステム開発会社がシステムをつくる、というパターンはよくある構成です。

 この要件定義書(らしきもの)を作成するだけして、さっさとそのシステム開発から抜ける人たちを「要件定義ダケ」と命名しています。

 この「要件定義ダケ」、とても金額が高いのです。それに洋モノが多い。「ビジネス要件を明確にするのは目的」「顧客ロイヤリティを向上させるためのベース作り」とか「エンタープライズ・ソーシャル・クラウド(って何?)」など、独特の言語体系を活用し、いろいろなアウトプットを作成してくれます。そして、そのアウトプットが役に立たず、再度やり直さなければいけない率は50%以上(というウワサ)。

 やはり、「要件定義ダケ」の言語は独特なため、開発工程間の共通基盤化・グローバル化が必要なわけですね。

■IT業界にはびこるダケ職種 -見てるダケ-

 最後に、見てるダケ

 見てるだけ、手は動かさない、というよりも動かせない。システム開発にタッチしない。そういう種類のダケもいます。まぁ、「監査関係」の人たちも「見てるダケ」の方々ですが、それ以外にもこんな人がいます。

 ――「見てるダケ」Aさんのある一日(半日)――

 ある日の9時。その日はAさんの会社で開発した某ECサイトのオープン日、オープン時間は9時。システム開発部門がぎりぎりまでプログラミングし、テストし、デバッグしまくっていたシステムの開始日です。

 Aさんは、開発の人ではありません。スタッフです。そして、今回はこのECサイトのプロジェクト状況を、幹部へ報告する仕事を任されていました。

 出社してそのサイトにアクセスしましたが、工事現場のアイコン付きの「ただいまシステムメンテナンス中です」文言しか表示されません。――「ん?何かあったのか」

 10時:まだ、「メンテナンス中」の表示。オープンが9時予定だったため、1時間オーバーである。――「まぁ、一時間くらいの遅れはよくあることだし」

 10時30分:まだ、「メンテナンス中」。少し心配になってきたが、ここで騒ぐと、(たぶん)一生懸命リカバリしているだろうシステム開発部門が、リカバリに集中できないだろう。Aさんも元開発でリリース当日の修羅場は経験しているので、じっと我慢。

 11時:まだ、「メンテナンス中」。自分は我慢しているが、周りが騒ぐ可能性がある。また、上が大騒ぎして、プロジェクトに負荷がかかると困る。そこで、上司に「予定より遅れていますが、オープン準備を進めています。もう少し静観をお願いします」との連絡。

 12時:まだ、「メンテナンス中」。心配で食事にいけない。

 12時20分:サイトにアクセス可能になる。食事に直行。

 A氏は見ていたダケの人ですが、周りの「文句ダケ💢」や「報告しろダケ📝」の発生をうまく防止していました。こんなダケもIT業界には生えています(スーパーレアですが)。

 それでは、また別の話で。


「たべるダケ」
2013年7月12日から、テレビ東京系列の金曜深夜に放送。主演は後藤まりこ(役:謎の女性 シズル)、共演に新井浩文(役:バツ3の男性 柿野義孝)、石橋杏奈(役:柿野の同僚の素敵女子 薮内久美)等。原作は高田サンコによるマンガ。9月27日最終回。
主人公シズル役の後藤まりこはロックバンド「ミドリ」の元ボーカル。テンションが上がると過激で衝動的なパフォーマンスを披露することで有名。伝説として、「聴衆の上を歩きながら歌う🎵(ナウシカかい)」、「黄金パンツ=シューティングスター✨」等。

 

Comment(3)

コメント

ardbeg32

監査というのが業務監査なのかIT監査のことなのかわかりませんが、「みてるダケ」というのはとても心外ですね。
ここで監査の中立性だの云々を開陳しても仕方ないですが、監査が前線の兵士から一歩引いた立場でなければならないことを考えてほしいなぁと思います。

ところで見てるダケの人が良い人のように表現されていると思いますが、これって前線から見た都合がいいダケの人ですよね。
半日遅れた所で、客先契約や業務運用に影響しないシステムならば、様子を見に行ってありのままを上司に報告すればいいだけのことだし、逆にお客様に契約違反を問われるようなPJなら「報告しろダケ」が怒るのは当然ですよ。だってお客様に対しての説明責任があるんだから。
そんなの前線にはカンケイナイネ!っというなら、じゃあお前らの給料はどこから出てるんだよカンケイネーっていうなら給料もいらないよね、って話だと思いますよ。

匿名

「最近、促成栽培型「テストダケ」が以上繁殖中。「なめこ栽培キット」のブームをはるかにしのぐ勢い。中には「業界未経験、入社3日目研修無し」を提案してくれるような黒い会社が…。促成栽培型が故に柔で短命。昔も似たようなことがありましたが、この現象が繰り返される度に業界が劣化して行くような印象を持っています。」

匿名

「~だけ」でもその成果が完璧なら問題はない。
しかし、開発なり、保守運用なり、「~だけ」の後を引き取った会社にとって迷惑でしかない、品質の悪い無意味な成果物を残して、契約の範囲をたてに逃げていくから、
こういう否定的な見解が生まれてくる。

現実問題、一つのベンダーが最後まで面倒を見るのは無理なことも多いから、そういうことになっていくのだが、なら、いやでも最後まで面倒見ることになるユーザー側の情シス担当がもっとまともなスキルつけてほしいとは思う。
ユーザー側の情シス担当にありがちなのは広く浅くかじった程度で知ったかぶりする輩
長年の経験で数多くそういう連中に出会ってきた。
そして、そういう人たちは根拠のない自信がある人たちだから、いうことも常に上から目線。
それが、発注先のSEたちに馬鹿にされているとも気づかずに。
何にも知らない人より始末に悪い。

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