ハッピーなエンジニアライフを目指して
はじめまして。このたびコラムを執筆させていただくことになりました高田です。このコラムが、皆さまのエンジニアライフに何かしらの気付きを与えるきっかけになればと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
わたしがコミュニケーションの大切さについて考えるようになったのは、エンジニアとして仕事をする中で、人間関係においてたくさんの失敗をしてきたからです。技術的な問題であれば本を読んだり、人に聞いたりすることで解決策が見つかりますが、人間関係についてはどこを調べても、誰に聞いても答えは見つかりません。だから人間関係についてはとても、とても悩み苦しんできました。
また、わたし以外にも多くのエンジニアが人間関係で悩んでいることを知りました。お互いにグチグチ言ってスッキリしているうちは良かったのですが、ある日突然会社に来なくなって休職してしまったり、解雇されて音信不通になってしまったり等、わたしたちエンジニアの世界では珍しくない出来事です。
もしわたしが職場の人間関係を順調に築けていたのなら、コミュニケーションの大切さを知ることはなかったでしょう。今となっては数多くの失敗体験のおかげで、大切なものに気付くきっかけとなったと感じております。又多くの同僚が今も悩み苦しんでいる姿を見て、ますますコミュニケーションの重要性を認識するに至りました。コミュニケーションについてお話しすることはわたしに与えられた使命なのかもしれない、と感じたのです。
さて今回はわたしがエンジニアとして悩み苦しみ、そしてコミュニケーションの大切さに気付いていく過程についてお話しさせていただければと思いますので、どうぞお付き合い下さい。
■IT業界へ転職
わたしは26歳のときにIT業界に転職しました。転職したての頃は全くコンピュータの知識がなく、また研修をさせてもらうこともなくいきなり開発プロジェクトに放り込まれました。わたしなんか使い物になるわけがないと思っていたのですが、意外にも現場ではそれほど低い評価ではありませんでした。その理由について当時のリーダーは「きちんと話ができるから」と言って下さいました。メンバーを管理する立場からすると、「何に困っているのかがわかれば教えることができるけど、何も話をしてくれないと助けることも手伝うこともできない」とリーダーに言われたことを覚えています。
ちなみに前職は営業だったのですが、転職した会社の人たちと接してみるとあまりの人種の違いにカルチャーチョックを受けました。話をするときに目を合わさず、自分からは決して話さず、鳴っている電話を取ろうともしません。無断で会社を休むこともしょっちゅうでした。これが社会人? と感じたことを覚えています。
そのため他のエンジニアと比べ、わたしはコミュニケーションがきちんとできるように見られたようです。技術的な知識・経験が乏しく、負い目を感じていたわたしでしたが、コミュニケーション能力という点では合格点をもらえたようです。転職して最初に評価されたのが技術力ではなくコミュニケーション能力だったことはその後のエンジニア人生に少なからず影響を与えた気がします。
■辛かった開発プロジェクト
ある開発現場での話ですが、参加初日にいきなりプログラムを作ってくれと言われたことがありました。設計書はなく、また口頭での説明もなく、いきなり作れるのかなと思っていたものの、とても「作れない」とは言いづらい雰囲気がありました。ですので文句も言わず(正確には「言えず」)、「やります」と言って一所懸命に作りました。
しかし、作り進めるたびに設計不足の箇所が見つかり、新たな仕様が追加され、当初の想定の2倍くらいに工数が膨れ上がりました。そのため予定していた進捗どおりに作業が進まず、なんとか盛り返しを図ろうと徹夜したり休日出勤したりしたのですが、その程度の稼働では到底追いつくことはできませんでした。結局、進捗が予定通り進まず「おまえのせいでプロジェクトは失敗だ。全部おまえが責任取れ!」と大声で怒鳴られる始末でした。
今にして思えば、リーダーの見積りの甘さやコミュニケーション不足が原因だと思うのですが、当時のわたしにはそんなことを言うことができませんでした。毎日毎日、机を叩きながら大声で怒鳴られ、心臓がドキドキする音と窒息しそうなくらい薄い空気の中、逃げ出したい気持ちを抑えるのに必死でした。いつ自殺してもおかしくない状態だったと思います。
■優秀なシステムエンジニア
精神的に辛い思いをする一方で、いくつかのプロジェクトを経験し、設計・プログラミング・テストといったSEに必要なスキルを徐々に身に付け、やがてわたしもプロとしての自覚やプライドといったものを持つようになりました。与えられたタスクの納期は必ず守り、品質の良いプログラムを実装することが、いつしかできるようになったと思います。
しかし、SEとして技術面ではそれなりに成長があった反面、気配りとか謙虚さといった、対人関係についての配慮を疎かにしていたように思えます。転職当初は技術面で劣等感があったため、人間関係には気をつけていました。その分、むしろスキルダウンしていたのかもしれません。
例えば、わたしのソースコードが規約どおり作られていないことを指摘されても、「この方が良い!」と言って譲らなかったり、途中で仕様が変わると大声で「ふざんけんなよー」と叫んだり、それはもう扱いにくい人間だったと思います。しかし自分は仕事ができて優秀な人間だと、完全に勘違いをしていたのです。
■リーダーになって
さらに月日は経ち、わたしもリーダーとしてメンバーの上に立つようになりました。SEとしての知識や経験も増え、わたしがチームをぐいぐい引っ張るものだと信じて疑いませんでした。今までわたしの上に立っていたリーダーたちと違い、わたしがリーダーになればお客さまとの折衝もスマートにこなし、細部まで漏れなく設計されるなど、メンバーの育成も含め全てが上手くいくはずでした。
が……実際は違いました。かつてのわたしのような“優秀な”メンバーが黙ってはいません。自分たちのやり方が正しいと信じ誰も協力しようとしてくれません。挙句の果てには「あなたのやり方が悪い」と言い捨てられる始末です。かつて、わたしをメンバーとして抱えていたリーダーたちはこんな気持ちだったのだな、と感じた瞬間でした。
■ハッピーなエンジニアライフを目指して
以上、わたしのエンジニア遍歴を紹介しましたが、同じIT業界で働く方々であれば、似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか?
わたしたちが開発するコンピューターシステムは処理効率や論理性などが重要視されますが、それらを構築するエンジニアの人間関係にまで同じような考え方を当てはめようとする風潮がこの業界にはあるような気がしてなりません。「おしゃべりは時間の無駄」とか「用件を簡潔に伝える」とか。しかし、一見無駄に思えるコミュニケーションが、ストレスを多く抱えるエンジニアにとって必要な栄養素だったりします。コミュニケーションが乏しいと、チーム内の意思疎通が図れなくなり、チームもまとまらなくなり、そしてエンジニアはますます心の孤立感を深めてしまいます。
チームがまとまらなくなるとプロジェクトが上手くいかなくなり、エンジニアは無茶な残業をさせられ、よりいっそうストレスを溜めこむことになります。やがて遅刻・欠勤が目立ち、挙句の果てにはうつ病などになって退職してしまうなんてことに……。コミュニケーションを大切にしないプロジェクトはビジネスチャンスも人材も失ってしまうのだと思います。
人間関係についての特効薬はないかもしれません。しかし働きやすい環境を作るために、ひとりひとりが何かをすることができるはずです。例えば、いつも1人でいる仲間をランチに誘ったり、一緒にジュースを飲んだり、お菓子を分けたり等。ひとつひとつの行動はそれほど大きな効果はないかもしれませんが、小さなことを積み重ね、良い人間関係を築くことで、プロジェクトチームの雰囲気を大きく変化させることができると思います。そして、システム開発がうまくいけば、わたしたちエンジニアは心底ハッピーになれると思うのです。
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次回からは、「開発現場が楽しくなるコミュニケーション」についてお話ししていきたいと思います。




高田善教

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