システム導入時のユーザ教育に関するノウハウを書いていきます。

第12回 システム導入教育(9) システム操作マニュアルを作る前にやること(目的・範囲と作成方法)

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 こんにちは、エル・ティー・エスの忰田です。このコラムでは、システム導入時のユーザー教育を中心とした「システム展開支援」サービスについて、その目的や内容を紹介しています。

 前回から引き続き「システム操作マニュアル」の作成をテーマに、今回は「マニュアル作成前にやること」について書きたいと思います。

■何をどこまで作るかを決める

 まずは、マニュアルを作成する目的と範囲を決めます。読み手は誰か? いつどのように読むのか? などの情報を集めて、どんなマニュアルが必要なのか? またマニュアルでどこまでカバーするのか? を決めていきます。

 そして、例えば

 「システム利用者に対する基本操作の教育は研修でカバーする。業務シナリオごとの操作手順については、該当するマニュアルを参照することで利用者が独力で操作を完了できるようにする。ただし、例外操作や業務上のルールについては別途フォローする仕組みを作る」

 など、ユーザーとのコミュニケーションの中で「マニュアル」が達成すべき目標を決めて共有します。

 大事なのは「ここで決めた目標を達成するレベルのマニュアルを作成する」また「決めた目標を超える内容まではカバーしない」という方針について関係するメンバー間で共有することです。可能であれば、マニュアルのサンプルを作成してどのように、どこまで書くか? まで含めて共有して認識を合わせましょう。

 また、作成する範囲と期限を決めます。これは、マニュアル作成に使える時間と、マニュアルを「最初にいつ使うのか?」を考えていけば決まってくるでしょう。研修を実施するまでに○○業務と××業務のマニュアルは必要、とかユーザーテストまでにマニュアルができていないとマズイ、など多くのシステム導入プロジェクトではシステム稼働前の時点で必要になるケースがほとんどです。

■どうやって作るかを決める

 書き手の考えや意見を書く論文やエッセイなら、書き手の頭の中にあることを整理して書き出せばいいのですが、マニュアルに書き手の考えを書くことはありません。マニュアル作成に必要なのは「誰が書いても同じになるようにする」ための、共通したインプット情報とルール、作業工程です。

  • インプットとなる情報

 マニュアルを作成するための主要なインプットとして挙げられるのは、業務フロー・画面設計書、あとは仕様書などの関連資料です。これらの「システムを開発するために必要なドキュメント」から必要な要素を抜き出し、整理して再構築することで「システムを利用し業務を回すために必要なドキュメント」=マニュアルを作成します。

  • 作成ルール

 インプットとなる情報をどう使うか? またどんな目次構成・ページ構成にするか? 表現や言葉の使い方のルールやファイルの設定ルール、サーバへの格納ルールなど、諸々の作業ルールを決めます。一度標準的なルールを決めてしまえば他のプロジェクトでも流用できる部分はありますが、業務やお客さまの組織固有の言葉の使い方やインプット情報による作業プロセスの違いなど、個別に変わってくる部分も多いのが現実です。

  • 作業工程

 ネタとルールが決まれば、あとはどんな工程を経て完成させるか? を決めます。大きく見れば作業工程も作成ルールに含まれますね。

 インプットを基に初期作成後、セルフレビューをしてマニュアル作成をするチーム内でまたレビュー、その後システムの仕様と合っているかのレビューと業務観点のユーザーのレビューに進む、が基本的な流れです。ただし、多くの場合システムが完成する前にマニュアルを作成するので、マニュアル作成の途中での仕様変更にどう対応するか? のルールも決めておく必要があります。

■この後は……

 マニュアルの作成目的と作成範囲、さらに作り方までを決めよう、というところまで進みました。そろそろマニュアル作成を開始できそうですが、あと2つ事前に考えた方がいいことがあります。

 それでは、続きは次回に。

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