システム導入時のユーザ教育に関するノウハウを書いていきます。

第7回 システム導入教育(4) システム操作研修を考える

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 こんにちは、エル・ティー・エスの忰田です。

 このコラムでは、システム導入時のユーザー教育を中心とした「システム展開支援」サービスの目的や内容を紹介しています。

 今回からは、システム操作研修について書いていきます。

 ■なぜ、システム導入教育で「研修」をやるのか?

 あらためて思い返すと、どうして研修が必要なのか? というテーマを具体的に考えたことはないような気がします。いい機会なので「研修を実施する理由」について考えてみようと思います。

 まずは1つ目。

 ユーザーさんから「マニュアルが(分かりやすく)ないからシステムが使えない」「まともな研修も受けていないから使い方が分からない」などの話を聞くことがあります。こういった話を聞くと、「マニュアルがあれば、研修を受けていれば、システムが使えるんですか? 本当に?」と思ってしまいます。

 立派なマニュアルがあっても、充実した研修を受けても、使えない人(=覚える気がない人)は使えません。使えるようになるのは、「仕事だし仕方がないから、新しいことを覚えよう」と覚悟を決めた人だけです。

 それでもやはり、「マニュアル」「研修」というキーワードを強く言い続けるユーザーさんは多い。なぜだろうか? と考えると、それは単に「マニュアルも研修も、当然あるべきもの」と考えているから、ではないでしょうか。

 高いお金を払って買ったor開発した「新しいシステム」という箱の中には、当然のように立派な「マニュアル」が入っていて、使い方は専門の講師が「研修」をやって教えてくれる、と思っているユーザーは多いです。本当に多いです。本来、システム導入は導入先組織の業務の仕組みにシステムを組み込む、ということなので、どう使うか? 利用者にどう使い方を伝えるか? はユーザー側が主体となって考えるべき話です。ですが、どうしても自分たちを「お客さま」だと思ってしまい、やるべきことを見失うユーザーさんは多いです。多いですよね……。

 ということで、「なぜ、システム導入教育で研修をやるのか?」という問いへの1つの回答として「当然研修をやってくれる、とユーザーが期待しているから(やらざるを得ない)」が考えられます。

 2つ目の回答としては、「短期間での教育が必要だから、研修を実施する」です。

 新システムが稼働し始めたら、その新しい仕組みを使って業務を回さなければいけません。「新しいシステム? まぁ自分はゆっくり使い方を勉強するよ」ではいけないわけです。稼働する前の開発期間で教育を終わらせる、が前提である以上、集中的な教育提供が必要なため、結果として「研修」という形態を用いることになります。

 そしてもう一つ、これが最も大きな理由だと思います。それは「教育対象の人数が多いから」です。この「人数が多い」という点について、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

 ■最も効果のあるシステム操作研修とは

 
 「研修」、正確にいえば「集合研修」という形式で教育をする上で最も大きな課題は、多人数相手の教育のため一人一人の理解に合わせて個別にフォローできない、という点です。

 逆にいえば、教育効果を最大にしたければ「集合研修」ではなく「一対一」でシステムの操作方法を教えればいい、ということです。やはり、最も教育効果を出したければマンツーマンがいい、という結論に至るのです。

 といっても、現実を見るとシステム導入の現場にそんな人的余裕はありません。そのため多人数を相手にした「研修」の教育効果を上げようとする場合、いかに「1対1」の教育形式に近づけるか? を考える工程をたどることになります。

 ■教育効果の高い研修を設計する

 「1対1」の教育効果を多人数の集合研修でも発揮するには、という観点で研修を設計するポイントを考えると、以下の3点が挙げられます。

  • 同じようなスキルレベル・業務知識を持つ人たちを集める

 相手が一人であればその一人に合わせた説明をすればいいのですが、研修は多人数が相手です。受講者のスキル・知識の幅が広すぎると、どこに合わせても「合わない」人が出てきます。どんなスキル・知識レベルの人を対象とする研修なのか、を定義し、定義した想定ユーザー像に近い受講者を集めます。

  • 1クラス30名が上限

 研修を受講する人数は、少なければ少ないほどいいのですが、1回に受講する人数を減らすと研修の実施回数を増やすことになります。一度に終わらせた方が実施する側はラクです。が、一度に教えられる人数には上限があります。

 講師1名のみで実施する研修であれば10名が限度、講師に加えてアシスタント1名がいる場合でも、30名が限界です。できれば20名程度がベターです。私も何度も研修を実施したり、現場に立ち会ったりと経験していますが、上記の人数以上になると一気に研修の効果が落ちます。100名近くのケースもありましたが、もはや研修ではなく講師の演説でした。そして、後になって「あんな研修では分からない」と言われるオチが待っています。

  • 1回の研修時間は2時間まで

 人数と同じくらい重要なのが、時間です。一度の研修時間は2時間程度が最適です。それ以上は、一度に人が覚えられる知識量の限界を超えてしまいます。3時間の研修で「ラスト5分」という時に「最初に教わったことを思い出せるか?」と聞くと、なかなか難しいのです。「一対一」で会話しながら教わるのであれば、分からなくなったらその都度確認できる(講師も相手の理解度を見てフォローできる)のですが、集合研修ではなかなかそうもいきません。であれば、記憶できる範囲の時間で完結させる、が最適な対応になります。

 ■まとめ

 上記で書いたこと以外にも、あらためて考えてみるとイロイロとポイントはあげられそうですが、今回はこのへんでおしまいにします。そして今回はあまり触れていませんが、システム操作教育はその名のとおり「システム操作の方法」と「そのための前提知識」を教えるものです。ただ知識や手順を教える以上の難しさ・複雑さがそこには凝縮されています。

 次回以降は、その辺りに踏み込んで考えてみたいと思います。

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