社内SEの実態を公開

初志貫徹

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 どうも私のコラムは切ない話題になってしまいますね。狙っているわけではないのですが、情シスの日常なんてものは切ないことだらけなのかも知れません。

 私はよく映画やドラマを見るのですが、最近見たものは「龍馬伝」です。とても感動しました。あんまり幕末物を見ることがなかったのですが、とても面白かったです。坂本龍馬の大仕事と言えば「大政奉還」。これによって徳川幕府が終わって、新政府、そして今の世の中の基本が出来上がった……。ものすごい変化ですね。私が幕末に生きてたとして、こんな時代が来るとは想像しなかったでしょう。物事を変える……これはすごいパワーが必要です。

 情シスに配属されて、あまり会社の中の状況が分かっていなかったころ……。私はとあるシステムを担当しました。10年選手くらいのシステムです。しょっちゅう障害が起きて、いろんなところに電話したりメールしたり……。頭を下げまくって、リカバリをしたりしていました。毎日ユーザーからは「使い勝手が悪い」と文句を言われ、障害が起きると上司からは「根本的な対策をしなさい」と怒られ、ベンダと一緒にド残業して対応し……。でも予算はケチでなかなか再構築の承認が下りず。八方ふさがりの状態が続いていました。

 「もうやってられるか! ボケ!」と脳内で何回叫んだことでしょう。放り投げて転職しようかと何度も考えましたが、あきらめの悪い性格の私は打開策を探し続けました。

 そんなある日、あるセミナーにふらっと参加したら、あるではないですか! 打開策が! その打開策とは、ずばり「アウトソーシング」。今風に言うとクラウドの利用って感じ。面倒な運用や老朽化した設備、通信機器など全部アウトソーシングして、必要最小限のものだけ自社で構築すれば、運用負荷も減るし、コスト削減にもつながるし、いいことづくめ!

 早速、社内に持ち帰って提案書を作って、関係各所にプレゼンし、説得を始めました。最初の感触は良かったものの。

 「本当に外部のサービスを利用して大丈夫なの?」とか、「開発がいらなくなる分、サービス利用料が発生するけど本当に安くなるの?」とか、「契約とか損害賠償とか、どうするの?」とかとか……。

 「今までとやり方が変わることに対して、利用者は納得しているのか?」まで……。

 もっともな疑問から、そんなこと言われても……と、いろいろ言われました。

■費用面

 まず費用ですが、比較対象は自社再構築時の想定見積もりとの比較です。で、言われるのは「今の費用と比べるとどうなの?」……え、やっぱり気になります?……。ボロボロの保守もないサーバと代替の効かない通信機器とかで構築されて、償却もリースも終わり、費用は超低空飛行なのです。そこと比べると高くなるのはしょうがないじゃないですか。とは言いながらも、納得してもらわなくては予算が下りないので、今がいかにリスクがある状態で運営されているのかを説明しまくりました。分かってくれたような、くれないような……。ここは気迫で乗り切りました。まず、第1段階クリアです。

■契約面

 次に契約です。新しい取引先との契約なので、いろいろな部署の審査が入ります。とてつもない量の書類を書き、いろんな部署に会社とサービス概要を説明して、さまざまな部署の質問にすべて答えなくてはなりません。大体、「アウトソーシングしたときのリスク」をついてきます。超保守的な会社なので、システムの一部を外部に委託する事例もなく、そういう考えを持った人もいなかった時代です。無理もないかもしれません。「今のボロボロの設備と比べたら雲泥の差だよ!」と、叫びたいのをこらえて、切々と説明します。証人喚問されている気分です。若干ノイローゼ気味ですが、第2段階クリアです。

■利用面

 で、ユーザー説明に入ります。自社からアウトソーシングに切り替えるので、今までのやり方100%継続できるわけもなく、多少やり方を変える必要があります。これが、大バッシング。「いったい誰が許可したの!」「誰がこんなことを決めたんだ!」必要以上に責められます。特に長年使用してきたユーザーからはボロクソ言われました。でも、今回はユーザーの要望によるものではなく、会社としての方針によるもの。費用削減と安定した運用のために実施が決定したのです。ですが、ユーザーから言われると、今まで許可してきた部署の方々も「ユーザーの意見も少しは取り入れてくれ」と弱腰です。もうこうなると味方は1人もいません。膠着状態が続きます。この時の私の精神状態は「なんでこんな提案したんだろう。同じ構成でリプレイスしたほうが楽だったなぁ……」。何度もバッくれようと思いました。リアルに退職願と引継書なんか作り始めたりして。でも、なぜか最後の一歩でいつも踏みとどまり、今までの運用を思い返します。

 終日障害で停止したこともあり、皆に迷惑かけたなぁ……。

 ベンダと一緒になって深夜まで作業して大変だったなぁ……。

 私を最後に、この仕組みを面倒見れる人もいなくなるんだなぁ……。

 負けられねー。ここであきらめたら運用地獄から抜け出せない。同じ構成では、運用の負担軽減と品質の保証を得られるわけがない!これがベストの選択なんだ!「自分のため=皆のため」ということのみを心の支えにして、半ば無理矢理に実装します。多少嘘もつきました。「ほとんど従来どおりと変更ございません!」。

■数年後

 そして時は流れ……。現在、私は別の仕事をしながら、たまに昔を振り返って「安定したな」と思っています。ユーザーも最初は「え、これできないの?」とか言いましたが、まったく障害もなく日々過ぎていき、今は文句も言われません。

 費用についても最初はわーきゃー言われましたが、今は何も言われません。1年後に稼働当初と比べたレビュー会を行って、費用比較と品質について説明して、「結構減ったんだね……」とか言われましたが、それだけです。

 当時、契約について協議してもらった部署の方々は、ほとんどいません。ごくわずかの当時を知っている方が最近になって「クラウド使ってるんだよね」とか軽く言うと、イラっとしますが、まあ審査・協議部署なんてそんなもんです。

 別に感謝してもらおうと思ってやったわけではありません。あくまでも自分自身のためです。結果は大成功だと自画自賛しています。周りは誰も気にしていませんし、「いやー、よくやってくれた」なんて言葉をかけてもらったこともありません。

 安定した運用が日常となりました。障害もなく、ある意味で退屈な日々です。私は障害の切り分け、適切な指示と対応に定評があったのですが、今はその能力を発揮することもなく。内心ちょっとだけ「障害発生しないかなぁ~」って思ったりしています。

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