今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

024.リスクを取らないトップを説得する方法

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初回:2019/01/16

1.自己保身なトップ

 以前、017.(解説)理想的なトップは自然淘汰される(※1)で実際のトップは「自己保身を基本理念に行動している」為、危険な事には手を出さないとか、プラス評価よりマイナス評価で人事を決めるなどと書きました。

 逆に言えば、危険でなければ手を出すとか、マイナス評価に見えるがマイナスではないという事が証明できれば、こちらの提案にも耳を貸してくれるかもしれません。

P子「久しぶりに前向きな意見ね」(※2

 前進あるのみ!後ろは振り返るな!

P子「ダメでしょ」

 ここでは、リスクがある分見返りも期待できる提案と、リスクが少ないが見返りも少ない提案があった場合、本当はどちらが利益に貢献できるのか、という事を検証したいと思います。

2.リスクにはリスクがあるのか

 提案Aは、成功すれば売上「9」で失敗すれば売上「3」でその成功確率50%とします。提案Bは、常に売上「6」です。これらを製造するには、原価「5」必要とします。開発費は、提案Aも提案Bも同じだけ必要とします。

 確率計算がめんどくさいので、A,Bともに、2案件づつ進める事とします。(成功確率50%の定義)

C:\Users\chatrun>python
Python 3.7.0 (v3.7.0:1bf9cc5093, Jun 27 2018, 04:59:51) [MSC v.1914 64 bit (AMD64)] on win32
Type "help", "copyright", "credits" or "license" for more information.
>>> def f( 提案,原価 ): # 関数定義 ... y=[] # 製品リスト ... for i in range( 10 ) : # 10回(決め打ちです) ... y.extend( 提案 ) # 元の提案を順番に実施していきます。 ... y=[x for x in y if x>原価] # 原価を下回る製品は失敗なので製品リストから除外する。 ... 売上=sum(y) # 売上は製品リストの合計 ... 原料=len(y)*原価 # 原料は製品リストの数だけ必要 ... print( "{:2d}: 売上={:3d} 原料={:3d} 利益={:3d}".format(i,売上,原料,売上-原料 ) ) ... print( y ) ... >>> 提案A=[9,3] # 売上9と3 で 50% >>> 提案B=[6,6] >>> 原価=5 >>> >>> f( 提案A,原価 ) 0: 売上= 9 原料= 5 利益= 4 1: 売上= 18 原料= 10 利益= 8 2: 売上= 27 原料= 15 利益= 12 3: 売上= 36 原料= 20 利益= 16 4: 売上= 45 原料= 25 利益= 20 5: 売上= 54 原料= 30 利益= 24 6: 売上= 63 原料= 35 利益= 28 7: 売上= 72 原料= 40 利益= 32 8: 売上= 81 原料= 45 利益= 36 9: 売上= 90 原料= 50 利益= 40 [9, 9, 9, 9, 9, 9, 9, 9, 9, 9] >>> >>> f( 提案B,原価 ) 0: 売上= 12 原料= 10 利益= 2 1: 売上= 24 原料= 20 利益= 4 2: 売上= 36 原料= 30 利益= 6 3: 売上= 48 原料= 40 利益= 8 4: 売上= 60 原料= 50 利益= 10 5: 売上= 72 原料= 60 利益= 12 6: 売上= 84 原料= 70 利益= 14 7: 売上= 96 原料= 80 利益= 16 8: 売上=108 原料= 90 利益= 18 9: 売上=120 原料=100 利益= 20 [6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6] >>>

 提案Aでは、開発で[9,3]が結果ですが、3は失敗(売り出しても原価割れする)なので販売しません。つまり、9だけ残っていきます。提案Bは、[6,6]なのでどちらも成功して原価割れもしませんので両方とも販売します。開発費はどちらも同じだけかかるため計算に含めていませんが、利益は常に提案Aが勝っています。

提案A
9: 売上= 90 原料= 50 利益= 40

提案B
9: 売上=120 原料=100 利益= 20

 さらに、原料費は常に提案Aは提案Bの半分です。例えば、製造に余裕がある場合、提案Aで原料を100まで購入するとすれば、売上=180 , 利益=80 となり大きく提案Bより優れていることが判ります。

3.失敗するリスクを恐れて失敗している!?

 ここでは製品開発としています。さすがにシステム開発で失敗するとリスクが大きすぎます。失敗した場合は販売しないという環境で、開発費だけ捨てる事になる場合の事例と考えてください。

 新商品開発で、成功確率50%が高いのか低いのか私にはわかりませんが、「自己保身を基本理念に行動している」トップならそんな開発は許可しないのではないかと思います。しかし、この計算でいうと失敗すればとっとと次の開発に入ればよく、より競争力のある製品開発が重要であると思います。

P子「ちょっと話がうますぎる気もするけど」

 まあ、あくまで仮定の話ですから。

 問題はこれを保守的なトップが理解したとして、開発を失敗した「3」は販売しないが、失敗した担当者をどうするか、という事です。この担当者をマイナス評価すると、それを見た周りの担当者が失敗を恐れてしまいます。口だけでリスクを恐れるな、とか失敗を糧にしろなんていっても誰も信用しません。

 例えば、成功すれば「9」失敗すれば「3」として、成功確率50%の開発を行った担当者の評価を、(成功「9」+失敗「3」)/2=平均「6」になります。この場合、「6」の人と同じ評価になるという事です。

P子「よくわかんないんですけど」

 会社の利益が[9,3]>[6,6] なのに、担当者の報酬が[9,3]=[6,6] では割に合わないという事です。

 リスクを恐れるなという場合は、より成果報酬を強くする必要があります。といって、失敗を無かったことにするのもまずく、[3,3]の人と[6,3]の人はそれなりに差をつける必要があります。しかし、リスク覚悟で頑張っている開発者と、適当に手抜きしている開発者が[3]を出した場合は、[3]に対して、同じ評価にすべきか差をつけるべきか難しい問題です。

 理想的なトップの要件に

 ・タスクの結果を妥当性をもって判断
 ・タスクの結果を公平に評価する責任

 というのありますが、そもそもリスクの大きさも担当者の成果も定量化することが難しいので、妥当性も公平さも計れません。といって、多数決では奇抜なアイデアや競争力のある製品開発は難しいでしょう。

P子「そんな難しい勤務評価を普通のトップにできるの?」

 つまり、リスクを取らないトップを説得する方法は無かったという事です。ちゃんちゃん。

P子「ちゃんちゃんじゃないでしょ」(※3

ほな、さいなら

======= <<注釈>>=======

※1 017.(解説)理想的なトップは自然淘汰される
 http://el.jibun.atmarkit.co.jp/pythonlove/2018/11/017.html

※2 P子「久しぶりに前向きな意見ね」
 P子とは、私があこがれているツンデレPythonの仮想女性の心の声です。

※3 ちゃんちゃん
 021.金の斧銀の斧 で使って以来、ちょっとしたマイブームです。
 http://el.jibun.atmarkit.co.jp/pythonlove/2018/12/021.html

Comment(2)

コメント

samonji

提案Aが優れている理由がわからなかったので、
もう少し補足いただけないでしょうか?
 
2案件ずつ進める、1案件当たりの原価が5、
それを10回繰り返すのならば、AもBも原価は100のはずです。
すなわち10個の「9」を生産するために使った原価が100で
売り上げが90なのだから利益は-10になる様に思われます。
 
失敗の「3」を廃棄して原価も計上しないということは、
「3」を出した担当者に原価分の自腹を切らせた上で、
失敗作も引き取らせた(廃棄コストも負担させた)ことになりませんか?
 
失敗の責任は担当者に取らせて、大成功だけ会社で吸い上げる案が
優秀だというのなら、会社にとってはそれはそうなのですが・・・。
イマイチ直観的に腑に落ちなかったので知りたいなと思いました。

ちゃとらん

私の単語の使い方が、社内用語だったのかもしれませんので、補足します。


> これらを製造するには、原価「5」必要とします。→ 製造時に必要な費用
> 開発費は、提案Aも提案Bも同じだけ必要とします。→ 開発時に必要な費用


原価「5」というのは、製造時に必要な材料費や加工費と考えています。
2件の開発で、「9,3」の場合は、[9]の5件分の製品しか製造しないため、
9: 売上= 90 原料= 50 利益= 40
と言っています。10回繰り返しているのは、「9」のみです。
9: 売上=120 原料=100 利益= 20
は、「6,6」を10回=20個生産しているという意味です。
# 製品A:9 B:3 C:6 D:6 で、製品Bは破棄、製品Aだけ10個で、売上90、
# 製品CとDを10個づつで、売上120 という計算でした。


2件の開発時にかかった人件費や実験材料などのイニシャルコストは、「9,3」も「6,6」も同じなので無視しています。
これを考慮する場合、最終的な製品の個数で割り算することになります。例えば、開発費が100の場合、「9」が100個売れれば、1個当たり1が加算されますが、「9」が「6」の2倍売れれば、この開発費が同等になります。


> 製造に余裕がある場合、提案Aで原料を100まで購入する
が、「9」が「6」の2倍売れる場合に該当し、工場をフル回転させれば同じ初期開発費で製造原価が半分なので利益が大きい、という計算です。

確かに、ややこしいですね。

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