さとりのしょ

2013/06/19 14:45:00

 IT企業にしろ、ユーザー企業にしろ、企業内で技術系の部署に配属されれば自動的にエンジニアになれるというわけではない。

 配属された途端に速攻でエンジニアとなれる人もタマにはいるが、多くの人は、そう簡単にエンジニアにはなれない。そういう状態の人のことを、ここでは便宜上、まだ特定の専門的職種に就いていない状態を表すことばとして、広義のくくりで会社員を表す一般的なことばである「サラリーマン」と呼ぶことにしよう。そして残念ながら、技術系の部署に配属されながら、いつまで経ってもこのサラリーマンからエンジニアに転職できない人が多いのも事実だ。

■保守派?革新派?

 エンジニアとサラリーマンの違いとは、ひとことでいうと興味の持ちどころの違いといえるだろう。

 サラリーマンは、組織の秩序を忠実に守って、逸脱しないことに命を賭ける。エンジニアは、ITを使って秩序を再構築しようとする。もう、そもそもの志向からしてまったく正反対なのだ。保守派と革新派の違いというか。

■転職したい?したくない?

 サラリーマンにとどまっている人にも2種類ある。エンジニアに転職しようと努力し、あがいている人と、最初からエンジニアになるつもりがない人だ。

 前者は転職するために必死でレベルを上げつつ、「さとりのしょ」を探し求める。後者は、技術的なスキルのレベル上げには興味がなく、無遅刻無欠勤でイエスマンに徹し、優秀な組織の歯車であることを上司にアピールすることに忙しい。

 まぁ、後者のことは、今回は放っておこう。本当は何とかしたいところだが、まず最初に何とかすべきなのは前者の方だ。

■遊び人になろう

 血のにじむような努力にもかかわらず、なかなかエンジニアに転職できない人がいる一方で、なんの苦労もしないでエンジニアになれる人もいる。彼らは新しい技術が出現するたびに、にっこり微笑み、試して見てうまく行かなければ足がもつれて転んだり、天に祈ったり、モニターに向かってタンカを切ったりするし、うまく行けばなかまを呼んで騒いだり、ふしぎなおどりを踊ったりする。

 そんなドラクエの遊び人のような行動ばかりしている彼らは、さとりのしょもなしにサクッとエンジニアに転職できてしまうのだ。

 眉間にシワを寄せて、エンジニアに転職するために、さとりのしょを探し求めて苦労している人は、自分と彼らの違いに気づくべきだ。

 技術は征服すべきものでも、乗り越えるべき壁でも、戦うべき敵でもない。好きになって、楽しむべきオモチャなのだ。そう思って、遊び人として行動してみよう。そうすれば、いつの間にか、さとりのしょなどなくても転職できるから。

 あぁ、でも、ふしぎなおどりはあまり職場で踊らない方がいい。自分のMP(マネーポイント=評価)が下がる可能性が高いから。

エンジニアの育て方、もしくは放牧のすすめ

2011/12/13 14:15:00

■羊飼いをリスペクトしてみる

 皆さんは、羊飼いの仕事ぶりを見たことがあるだろうか。牧羊犬を使って広大な牧草地の中で、ときには1000頭にも及ぶ羊の群れを見事にコントロールするのだ。そのような、昔から変わらない彼らの仕事ぶりの中には、リーダーの神髄ともいえるエッセンスが隠されているのではないだろうか。

 そこで今回は、昔ながらの羊飼いのやり方を見直してみることにしよう。彼らの仕事ぶりを観察すると、大きく分けて3つのポイントに気付く。

 1つ。彼らは、牧草地の草の状態をしっかりと把握している。2つ。彼らは常に羊たちを注意深く見守っている。3つ。彼らは信頼できる牧羊犬に短い指示を出して群れを的確にコントロールしている。以下、これら3つのポイントについて、それぞれの意味を考えてみよう。

■牧草地の状態を把握する

 自分の働く環境を把握することは、どんな仕事にしろ重要なことだ。例えば業界動向や技術動向、市場動向などだ。これらについてしっかりと情報収集して、未来や将来についての自分なりの見通しを持ち、それに基づいて進むべき道を見定めることができるかどうか。これは重要だ。

 広大な牧草地のどこに美味しい草があるのか、リーダーなら知っている必要がある。あるいは、自分が最善と信じるものを知っている必要がある。でなければ、部下に指示も出せず、後輩たちを導くことも不可能だろう。後進のエンジニアを育てるためには、まずは羊飼いのように牧草地の状態の把握が不可欠だ。

■羊たちを見守る

 後輩や部下を持つようになったら、彼らをしっかりと見守ってやらなければならない。でなければ広大な牧草地の中で、彼らはそれこそ「迷える子羊」になってしまうだろう。しかし、目が届きやすいからといって、畜舎の中(つまり自社内)から出さないようでは、彼らの成長はイビツなものになってしまうだろう。

 鶏の例でいえば、畜舎内で育てるブロイラーの30%は、その成長の速さのために、自分の身体を支えられずに歩行困難となるらしい(まぁこれは品種改良に依るところもあるようだが)。後輩たちを、そんなイビツなエンジニアにしてしまってはならない。

 後輩や部下を広大な牧草地へと誘い、新鮮な空気とおいしい牧草を与えよう。言い換えれば、各種展示会や、技術セミナー、勉強会などに積極的に出るように促し、必要とあらば、自ら連れ出すということだ。そして、会社の内外で積極的に活動する彼らを、常に見守り、必要に応じて導くのだ。それがバランスの取れた成長を促すことになる。

■牧羊犬との信頼関係

 羊飼いと牧羊犬とは長年の付き合いの中で信頼関係を構築していて、常に意思の疎通ができている。だから羊飼いが短い指示を出せば牧羊犬は自分のやるべきことを理解して行動を起こせる。なんともうらやましい関係ではないか。

 エンジニアにとっての牧羊犬とは、何度も一緒に仕事をしてきた後輩や部下だ。どんなに長く一緒に仕事をしても、それだけで自動的に信頼関係が得られるわけではない。牧草地の状態を把握し、常に羊を見守っているからこそ信頼されるのだ。逆にいえば、その2つのポイントさえ押さえておけば、これは自動的に付いてくることになるだろう。

■放牧こそエンジニアの最良の育て方

 このような話は、あまりにも素朴すぎるし当たり前すぎるし古ぼけても見える。だから面白みには欠けるかもしれない。その半面、枯れた技術特有のどっしりとした安定感があるのも事実だ。

 ブロイラーは、食肉用の鶏を安定供給するために大いに役立っている。それは事実だ。しかし、ブロイラーのようなエンジニアを育てたいと思うヒトはいるだろうか。自分の足で歩くこともできないエンジニアを。そんなことはあってはならない。

 あってはならないにもかかわらず、現実を見ると、畜舎に閉じこもって外に出ていないエンジニアは驚くほど多い。彼らはブロイラー予備軍ではないだろうか。だから我々は、後輩たちのために、正しい放牧の仕方を心得た羊飼いにならなければならないのだ。IT業界の明るい未来のために。

 汝、良き羊飼いたるべし。

歳ニモマケズ

2011/09/07 15:41:24

■なにごとにも王道はない

 去年、私は友人に誘われて南房総で開かれたオープンウォータースイムレース(以下OWS)に参加した。OWSとは、自然の海や湖や川を長距離泳いで、時間を競うレースの総称だ。

 むかしから海は好きで、よく泳ぎに行ったし、特に地獄のようなプロジェクトの合間に休みを取って、南の島でシュノーケリングしながら熱帯魚たちとたわむれる極上の時間は、何ものにも替えがたいものだ。

 しかし、去年の私は、もう何年も泳ぎから遠ざかっていたにも関わらず、レース直前に数回プールで泳ぐ程度の準備しかできなかった。結果は、完泳するのがやっとという惨憺たるもの。要するに、何事でもそうだが、水泳にも王道はないということだ。日々の地道な努力が結果を生む。

 そのリベンジということで今年も参加することにしたのだが、去年の反省はまったく生かせず、今回もまた直前になってあわててプールで練習しているというていたらくだ(今年のレースは9/18の予定。8月末にようやく重い腰を上げて練習を始めたばかりだ)。

■去年のデータを振り返ってみる

 まぁ、そんな私のことは置いといて、去年のレース結果を振り返ってみよう。このスイムレース、10代から70歳以上までの老若男女が幅広く参加している。となると、おそらく皆さんは、若い方がパワーもスタミナもあって有利だと思われるだろう。

 しかし、去年のデータを見る限り、実際にはそれほどの差はないことが分かる。これは、なんでもかんでも歳のせいにしてあきらめムードを漂わせようとする自分に対して、「ちょっと待て!」とカツをいれてくれる格好のデータだ。だから私一人で見ているのももったいないので、皆さんにもお見せしたい。

■やはり若手は速かったが……

 データは、私が出場した去年のレースの男子1000mクラス(世代)別平均タイムだ。19~29歳が23分56秒98で、30~39歳は23分23秒56。働き盛りの30代というのは、20代に負けない体力を維持しつつ経験も積んで来ているので、若干ではあるがむしろタイムは20代を上回っているということか。とにかく、このあたりのクラスが一番いいタイムを出している。

■ベテランだってイイ線いってる

 次に40~49歳を見てみよう。「40の声を聞く頃からガクンと体力が落ちて無理がきかなくなった」という話はよく聞く。しかし、このクラスの平均は24分24秒68だ。思いのほか、若手との差がない。さらに、50~59歳になっても、24分54秒03に留まっている。一番速い30代と50代の差がたったの1分半弱しかないのだ。

 一般のサラリーマンでいうと、新入社員も中堅も定年前のベテランも差がほとんどないということだ。ベテランスイマーも、常にトレーニングを怠らずにスキルを磨いているヒトは、若手と同等のタイムを出している。これは心に響くデータではないか。

■定年?なにそれ?

 では、定年世代の60~69歳になるとさすがにガクンと落ちるのだろうか。そんなことはない。これも26分46秒30とかなり健闘しており、70歳以上でも27分52秒70という結果になっている。

 すべてのクラスを比較してみても、平均タイムでみると5分弱しか開きはないのだ! さらに個人別でみると、この世代でも若手の平均タイムを軽く超えているヒトだって多い。

 もちろん、50代以上になると、参加人数は著しく減少する。しかし、このようなレースに出場しようというほどなのだから、泳ぐのが好きで、日ごろからトレーニングを欠かさず、腕に覚えがあるヒトばかりということだろう。だからこそ、若手とも互角の戦いができているのだ。

■無駄に歳を重ねるのではなく

 これは、エンジニアの世界でも同じだ。歳を重ねるに従い、絶対数は減少するにしても、その仕事を愛し、常に最新情報にも接して自分を磨いているような、腕に覚えがあるエンジニアは、いくつになっても本物のプロフェッショナルとして、若手からも尊敬される存在であり続けるだろう。

 そういうエンジニアに、私はなりたい。

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onoT
「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

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