『天気晴朗ナレド 波高シ』の海をエンジニアとして、泳ぎ切るためのコラム

人間だもの 松下幸之助氏のお話し

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花形エンジニアだった頃は、肯定的なチャレンジ精神に溢れたエンジニア程、仕事が集中し、殺人的なスケジュールで疲弊してゆくのは世の常でございます。

忙しいという漢字は「心」が「お亡くなりになる」と書きますね。

そういった、猛者たちを上手く束ねるリーダー的な存在の経営者のひとりが、松下幸之助氏。

(今から書く内容は10年以上前の何かの本で読んだ内容です。かなり曖昧なので、間違えているかもしれません。)

「技術的なことは、全くわからんが、お客様の気持ちは判る。君たち技術者の都合で、お客様に我慢してもらうなんてもってのほかだ!」今の若い方達は知らないでしょうが、当時日の出の勢いのソニーとビデオ機器の熾烈なVHS対ベータという規格戦争があったのです。

たしか、最初はソニーの役員が「この度、ベータ規格のビデオを研究開発して実用のメドが立ちましたので、松下電器さんも、この規格でビデオ機械を開発しませんか?」と。

経営効率を考えて、ソニーの規格の話に乗れば、研究開発の費用も削減できるし、失敗した場合でも最小の損害で済む。こんなに良い話はない。他の国産メーカーはこの話に飛びついたのですが、松下氏は、「あぁ・・・それはそれは、ご苦労さんな事ですな。ここまで仕上げるのにご苦労された事でしょう。」とニコニコ。ソニーの役員は、では具体的に技術提携のお話しを・・・と言いかけたところで、「うちは、うちのやり方、考えでビデオ商品を研究開発します。今日はおおきに。気を付けておかえりを」といって、帰してしまったそうです。

他の規格に飛びつくのは、簡単だが、それでは弊社のエンジニアが育たない。折角のチャンスを他社に譲ってしまっては、松下はソニーの後塵を拝する会社になってしまう。苦労するだろうが、エンジニアを育てることが10年先の松下の為になるんやで。

   ◇  ◇  ◇

松下幸之助氏は「リーダーの条件を3つあげてください」と聞かれてこう答えます。

1番目は「愛嬌」、2番目は「運が強そうな雰囲気」3番目「後姿」と仰っています。「愛嬌」とは、憎めない人柄、松下のエンジニア達は、早く市場に出したいからと、頑張って試作品を作るわけです。そうして、課長→部長→と進んで、最終段階は松下幸之助氏が使ってみて、OKが出ないと商品として出荷すら出来ない。

残業や休日出勤をして、クタクタのエンジニアに「ここが使いずらい」「これはダメ」とダメ出しをする。

松下氏は松下電器の製品は、わが子も同然という気持ちでしたのでしょうね。(いやはや、頭が下がります。商品の検査を偽装する会社も散見するようですが、松下氏がお聞きになったら、何と仰ることか・・・)

松下のエンジニア達はガックリと肩を落としてしまいます。ようやく、製品化できるか・・・という段階でのダメ出しです。でも、凄いと思うのは「うちのオヤジの言う事だから仕方ねぇや、もう一丁、工夫してみるか!」と図面から見直して、指摘された以上の「不便さ」をそぎ落としてくる。オヤジさんの言う事だから間違いない、オヤジさんが「ええのんとちがうか」というその一言をもらうまで頑張る、という絶望しない、何とかなるという社風があの時代~今のパナソニックをも強くしているのだと思う。

3番目の「後姿」、松下電器がまだ電球を作っていた頃、当時の白熱球の電灯は良く売れた。戦後の日本は急速に電化製品を生活に取り入れる余裕が出来た。そうすると、物価が上がって、電球の卸値を上げなければならない状況になった。松下の役員や部長クラスが街の電気屋さんの代表に、来月から値段を上げますと報告する。「あ、そうですか・・・」と言われるだろうとタカを括っていたのだろう。

電気屋さんからは、「ふざけるな!そんな事をすると松下の電球は売れなくなる!今までの値段で供給しろ!」と叱られる始末。

そこで、全国の専売契約している電気屋さんの代表を、温泉旅館に集めて、説明会を開かなくればならない程の問題になった。役員たちは頭を抱えて、どうやって説得しよう・・ひょっとしたら松下の契約を解消されてしまうのでは・・・と腫れ物に触る様にしていつ中、全員が集まった中で、社長のご挨拶。

いきなり、こう始める

「皆さん、本日はお忙しい中、わざわざお越しいただいて申し訳ありません。本来なら、社長の私がお店に出向いて、一軒一軒頭を下げてお願いすべきところ、お集まりいただいて申し訳ありません。社長の私のチカラ不足で、値上げをお願いしないといけなくなりました。

このままでは、社員に給料が払えなくなって、会社が倒産してしまいます。どうか、皆さん、この私に愛想つかして、契約を解消しても、決して恨みません。ですが、皆さん、私を信じてくださるならどうか、私を助けてください。」と頭を下げた。

メーカーと販売店、力関係は明らかにメーカーが強い。電気屋さんも、上から「値上げする」と言われると思って、対決姿勢だったが、松下幸之助氏は、ペコリと頭を下げた。

集まった、闘志満々の街の電気屋さん達、大会社の社長が土下座している姿を見て、恐縮するやら、同乗して「松下さん、そんな水臭い!」と泣き出すやら。

「そうか、松下さんもしんどかったんやな、うちらみたいな小さい電気屋のことを、そないに大事にしてくれるなんて、今度は、うちらが松下さんに恩返しする番や!」と険悪だった会場の雰囲気は一転した。

「あんた、もう少し値上げしてもかましまへんでっ!」

「うちは、他の会社とも契約しとるけど、もう、あんたのとこ一社に契約絞るわ」

と電気屋さんのネットワーク出来上がる、扱い量が増える、どんどん、良い方へ転がり出した。

多くを語らない、虚勢を張らない、後ろ姿で全てを語る。

なんとも、凄い人物なのですね。

最後に、松下幸之助氏はこう言っています。

経営というと、団体や会社だと思われるかもしれません。国家も経営と言えます。ですが、家庭や個人も経営するという考え方は同じだと思うのです。

う~ん、私は、今まで良い経営者だったのだろうか・・・

Comment(4)

コメント

7743

そんな、戦前の話と昭和の時代を混ぜて、今現在に語られてもねぇ…

ななころび

コメントありがとうございます。
戦前と昭和は遠い昔・・・というご意見なのですね。
なるほど。
人間の本質は、平成であろうが、次の元号であろうが
そんなに変わらないのではないか?と私は思うのです。
そう思う事自体、時代遅れで、老人の妄言かもしれませんが・・・。
意見を交換し合う事は有意義です。
意見の多様性は否定致しませんし、勉強になります。
よろしくお願いします。

an ITエンジニア

私は全く逆の見方をします。7743さん寄りです。
 「うちのオヤジの言う事だから仕方ねぇや...」の件は、論理よりも人を重視する、悪い意味での日本文化だと思います。勿論、「オヤジの言う事」が正論である場合や、オヤジが創業時と同じように詳細まで把握しているスーパーマンである場合は、結果的には問題ありませんが。そうでない場合は、問題のある対応の仕方でしょう。そして、オヤジがスーパーマンのままでいるケースは、非常に少ないはずです。なぜなら、組織が大きくなってしまうと、オヤジは、個別技術の把握ではなく、全体を管理することに集中せざるを得ないからです。
 昭和の町工場や、現在でも中小企業では、よくある話ですよね。テレビ放映されるような人情ドラマだと、「うちのオヤジの言う事だから..」と似たようなエピソードは、肯定的に描かれていることが多いと思いますが、この手のエピソードを肯定的に描くのは良くないと思っております。
 オヤジが言うことに対し、社員が自由に反論・論破しても、全く禍根を残さないような、自由な雰囲気がある会社なら、オヤジが何を言ってもいいと思います。しかし、日本の会社で、そういう社風を持っているのは稀有なので、オヤジは自身の発言で、せっかく開発した製品や、社員をスポイルすることの無いよう、よくよく考えて発言する必要があると思います。

ななころび

 コメントありがとうございます。あなた様の貴重なお時間を割いて頂き恐縮します。色々なご意見をいただきありがたい限りでございます。この章では、経営の神様である松下幸之助氏のエピソードを書かせていただきました。
an ITエンジニア様の表現を拝借いたしますと、
>スーパーマン
という表現になります。
私の表現が稚拙な為、文章の趣旨が伝わらない箇所が多々あったと反省しております。松下氏は会社と社員のビジョンを共有することに努力された経営者だと思っております。ですから、この場合の「オヤジ」という表現は、松下電器産業(現パナソニック)と社員のビジョンを意味すると思うのです。大企業の経営を任されても、そういったビジョンを守り、浸透させて共感させる努力をした経営者として松下氏を尊敬いたします。街の中小企業のオヤジさんの話ではありません。誤解を招く表現箇所がございましたら、申し訳ありませんでした。
経営者は、経営の方向性を指し示す職務の人間です。「社長の想いが社員に伝わらない」と経営者は良くボヤキます。たとえば、製品やサービスのコンセプトのベースになるビジョンを共有して企業の風土となるまで、努力工夫をて、ビジョナリーカンパニーになりたいものです。
意見を交わす事は有意義です。
私も勉強させていただいております。
稚拙な文章ですが、これからも、よろしくお願い申し上げます。

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