組み込み系システムに3年、オープン系システムに7年。徹夜がこたえるお年頃。独身貴族から平民へと降格したホリは、墓場へまっしぐらなのだろうか……。

ホーム&アウェー(2)~イメージを覆せ!

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 今回のコラムは、独身エンジニアの方に、特に参考にしていただきたいのである。

 お義父さんというのは重要である。

 そんなの当然と思うかもしれないが、単純に居心地の良さを考えるならば、お義母さんの方が重要である。家庭を裏で仕切っているのは女性なのだ。では、お義父さんのどんな部分が重要かというと、一番良く見るべきポイントは、“お義父さんの家庭内でのポジション”である。

 奥さんの実家では、お義父さんは家事に関して一切手を出さず、リビングにふんぞりかえって命令するだけの人だった。対して、お義母さんは1人もくもくと家事をこなしていた。当然、奥さんは子供の頃からその環境で育っており、父と母はこういうものだという刷り込みができあがっていたのだ。

 父親とは家事を一切やらず、ふんぞり返るものというイメージ(先入観)ができあがっていたのだ。

 となると、夫に対してもそのイメージを踏襲し、僕に対して家事を手伝えということは一切言ってこないのである。これが積極的に家事を手伝うお義父さんだったら……。まさに冷や汗もんである。

■固定したイメージ■

 仕事においてもイメージは大切なのである。

 チームで仕事をする上で、メンバーに対して先入観を持ってはいけないということはよくわかっている。しかし、どうしても今までの経歴や、仕事ぶりを見ていると、ある程度固定したイメージというのは付いてしまうのである。

 彼にこの機能を任せるのは危険ではないだろうか。チームの足を引っ張る可能性があるから別の人にやってもらおうか……、などと考え、普段よりもレビューを念入りにやったりもする。

 良いイメージにしろ、悪いイメージにしろ、それを覆されるとインパクトは大きいのである。通常よりも1.5倍増しにはなるかもしれない。

 できる人というイメージが定着した人物が、ある時、突然ポカをする。その人がやるはずのないミスをする。ミスはしょうがないのだが、イメージとミスのふり幅の大きさから、ショックも大きくなるのである。

 当然、逆パターンもある。これはうれしい誤算ということで、喜びも倍増なのである。

■悪いイメージから良いイメージへ■

 前回のコラムにおいて、プロジェクトをアウェーからホームに変えることができたのは、イメージを覆したのが大きかったのかもしれない。

 恐らく中国人PGからすれば、

 「突然やってきたリーダーは偉そうに英語と日本語だけで命令してくる。チームとして和を重視せず、結果だけを求めている」

と見えていたのかもしれない。

 今、考えれば、プロジェクトへの途中参加という状況と、上からのプレッシャーのせいで焦りもあったのだろう。

 意図したわけではないが、悪いイメージから良いイメージに変えたことにより、チームメンバーの感動も大きくなったというわけだ。

 最初から中国語で話しかけていても、これほどの協力は得られなかったかもしれない。

■魔法の言葉■

 さて、僕が奥さんの実家で発した一言もこのパターンである。

 奥さんの実家では、お義母さん、お義姉さん、奥さんとすべての女性が、男は家事をしないものだというイメージができあがっていた。そして、お義父さんは当然として、お義兄さんもそうだったのだ。

 そんな中、新参者が新年の席で「毎週アイロンがけをしています……」と言ったもんだから大騒ぎである。この一言で、大きく状況は変わったのである。

 実は1人暮らしをはじめた学生時代から、なぜかアイロンだけは自分でかける習慣がついていたのだ。部屋はめちゃくちゃ汚いし、料理もしないのだがアイロンだけはかける。ものすごく変則的である。

 僕の一言により、お義母さんとお義姉さんは大絶賛。お義父さんまでもが「今の時代は男も家事を……」などと言うしまつ。お義兄さんだけはなんだか、いたたまれない表情をしていた。

 僕のイメージを変える一言で、奥さんの実家(主に女性陣)での僕の株はストップ高である。女性陣の好評価は、アウェーをホームに変えたも同然である。

 ただ、そんな中、微妙な表情をしていたのは、家事をやらせているという不名誉なレッテルを貼られた奥さんと、相対的に株が下がった形となったお義兄さんの2人であった。

 「アイロンがけをしています」

 この一言を言うだけで、会社の女性陣や奥さんの友達など、誰もが僕に対して“家事を手伝う良き夫”というイメージを持つのだ。

 これが僕にとっての“魔法の言葉”なのである。

※アイロンがけ以外は一切やっていないので、奥さんには申し訳ないことをしたと、この場をかりて謝りたい。

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