キャリア20年超。ずっとプログラマで生き延びている女のコラム。

データと暮らす

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 先々月、Motorolaのタブレット端末、XOOMを買いました。

 きっかけは、本棚に入りきらなくて床に積み上げておいた本がひんぱんに雪崩をおこし、そのたびに積みなおすのがめんどくさいし、本がいたむしで、これはどうにかしないといけない、と決意したことでした。

 今より広い部屋に引っ越すのは経済的に無理があるし、本を手放してしまうのも抵抗があったので、“自炊”ってやつで嵩を減らしてみたらどうかと思い立ち、つくったファイルのリーダーとしてタブレットPCを買ってみるか、と考えたわけです。

 数あるタブレット端末の中からXOOMを選択した理由は、ディスプレイが大きかったことと、Androidのヴァージョンが3.0だったからです(今は3.1になってます)。もともと、持っているSHARPのIS01が、1.6のままアップデートされなかったのがちょっと悔しかったので、できるだけ最新のAndroidが欲しかったんですね。

 XOOMには音楽データ、画像データ、“自炊”でつくったPDFファイルをがんがん入れました。すると、お気に入りが増えていくにつれて、XOOMが愛おしくなってきました。自分でもちょっとビックリするくらいです。

 そして、XOOMを購入して約1カ月後にOSC@京都に参加するため、家を離れました。わたしは部屋の中にこもるのが大好きで、ちょっとでも家から離れるとすぐに「帰りたい」を連呼しはじめます。でも、その旅ではそういった気持ちがほとんど起きませんでした。

 旅行そのものが楽しかった、というのもありますが、XOOMの中にお気に入りの音楽や本が詰め込まれているというだけで、ものすごく安心できたんですよ。「そうか。家にいたい、というよりは、お気に入りのものに囲まれてる環境から離れたくない、ってことだったのか!」ということに気づいて愕然としました。

 そして、気づいてしまいました。わたしが愛しているものは、ほとんどが「データ」になるのです。本も、マンガも、アニメも、音楽も……(←今更すぎる)。

 「わたしはデータを集めて、愛でて、暮らしてきたんかい……」と、なんとなくもやっとしたものを感じました。なんというか、自分が人間味に欠けてる感じがしたんですねえ。

 けれど、本を「物体」から「データ」に変換(?)して、床積みの本が減って、奥の方に埋もれて埃まみれになっていた本と久しぶりの再会を果たした時に、そのもやもやは吹き飛びました。

 装丁が気に入ってるとか、使っている紙が気に入ってるとか、本そのものに思い入れが強すぎるとかで、どうしても裁断したくない本はたくさんあります。けれど、その一方で、データになってディスプレイごしに読むことになっても、わたしの中ではまったく価値が下がらない本もあるわけです。

 それなら、データになっても価値の変わらないものはすべてデータにして、本という形のままで愛したいものはそのまま本として大事に持っておけばいい。本の量が減れば、その分、管理も楽になるから、大事に扱ってあげられる。データになったものは、どこにでも連れ歩くことができる。それって、わたしにとってはいいことづくしじゃないか、と考え直したんです。

 人間味に欠けるなんて、つまらないことを考えてしまった、とちょっと反省しました。デジタルなものには温かみがない、なんて考えを漠然と抱いていた自分が、我ながら不思議です(まあ、温度はないですけど、熱意は詰まってますよね)。

 というわけで、これからもデータを集めて、愛でて、暮らしていくことにしました(笑)。

 IT技術の進化というものは本当に素敵です。ずっと親しんできたものを、さらに身近にしてくれたんですから。楽しさのあまり、「子供の頃にわくわくした、SFのアメージングな世界が今、てのひらに~♪」と歌いながら、XOOMを手にくるくる踊る毎日です(←信じないように)。

Comment(4)

コメント

仲澤@失業者

鉄人28号をジョイスティックであやつり、流星号を腕時計の通信機から呼び寄せ、
いつでも誰とでもテレビ電話で話す・・・。
自分が生きている間はむりっぽ。と思っていたことが、ややトーンが穏やかでは
ありますが、似たようなことができるようになってきました。
自分は過去の物をあまり残してありませんが、「でぃあごすてぃー※」のサンダ
ーバードやUFOなどをぼ~と見てますと、失ったものを取り戻したような気分に
なります。あの時感じた興奮や恐怖はありませんけどね。
それとは別に写真や動画の中の自分、データになってしまった自分が妙におかし
くて、こっけいで。なぜか泣けてしまうのですよ、最近は。

とは言うもののまだまだ現役。タブレットも良いけど、手に持つところがぜんぜん
いけてね~。ヘルメットにしちまえよとか思ってます(アンテナ2ヶ付き)。
OSはAndroid X.x、女性用の愛称は「れぷりかんと」とかっ。

インドリ

私達人間は、「思い出」という名のデータとともに生きていると思います。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


仲澤@失業者さん。

はやくも2011年なのに、いまだにアトムも誕生していないし、パトレイバーも現れない、とか思ったりしますが、通信分野においては子供の頃に読んだSFの世界に近づいているような気がします。
プログラマもいずれは、ポッドみたいのに入って、360度すべてがディスプレイな中で仕事をするんじゃないですかね(笑)。

確かにタブレットPCは持ち方に困ることがありますね。立って使ってると、手からすべりおちそうで怖いです。
ヘルメット型だと髪がぺしゃってなってイヤなので、スカウター型になってくれるとうれしいと思います。


インドリさん。

おおっ、詩人ですねえ。
データは変わらないけれど、人間は変わるので、同じデータをいれても結果が変わったりします。プログラムが書き換わっていたり、環境設定が変化していたり、要因はいろいろですが。でもたまに、データが改ざんされていることもあります(苦笑)。

hirosan

私のことかと思いました(w
IS01からxoomにして自炊、最近全く同じことをしたばかりです。

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