株式会社ヌーラボ 代表取締役。製品開発、オープンソース開発、コア技術確立をテーマにトークしたログを公開。

株式会社ザイナスさんのSNS「ザイメニュー(ZIMenu)」の巻 その1

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 「製品開発」や「オープンソース開発」「コア技術の確立」に携わる人の体験談や、戦略を、気負いもせず、ダラダラと会話して、そのログを公開する「Software Development Talks」の第2回目です。

 「システム開発」「ソフトウェア開発」に携わるということの楽しい側面を、それとなく感じていただけたら楽しいなぁという思いで書いています。

 前回は、会話を紙にメモっていたのですが、今回は、ICレコーダーを導入し、会話を録音しました。楽に会話ができるのでボリュームが増えて、30分弱の内容になりました。さすがに長いので、こまめにまとめて数回に分け、掲載していきます。

 今回は、「株式会社ザイナス」の集客コンサルティングとコンセプトデザイン担当、吉良向生さん(以後、こーせーさん)と、自社で運営してらっしゃるSNSの「ザイメニュー(ZIMenu)」を中心に、「ネットでのコミュニケーション」「ネットコミュニティ」周辺の会話になりました。

 こーせーさんとは、「天神・大名WiFiプロジェクト」でお会いしました。とにかく話が上手で、ものすごいキャラクターの持ち主だなぁと思っていましたが、今回の結果、キャラだけじゃなかった(笑)という、Software Development Talksになります。

 今回は、僕がちょっと風邪気味だったので、ビールなしです。残念。


インターネット創成期と株式会社ザイナスの歴史

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僕:……ではですね、ダラダラとした感じで始めてしまいますが、質問事項も3つしか準備してないんですよ。

こーせーさん:本当ですか(笑)。

僕:はい(笑)。「株式会社ザイナスさんって、どういう会社ですか?」と「こーせーさんの立場、役割は?」と、「天神・大名WiFiプロジェクトってなんですか?」という3つです。まぁ、脇道にそれていくのを楽しむ感じで進められたら……と思います。まずは、「株式会社ザイナス」さんってどんな会社ですか? っていうところから。

こーせーさん:うちは13~4年前に、僕が何人かの仲間と熊本で作った会社が前身です。

僕:へー。熊本に作られていたんですか。その会社を始めるきっかけは?

こーせーさん:きっかけは「そろそろコンピュータの時代なんじゃないの?」っていうことですね(笑)。

僕:あはは(笑)。

こーせーさん:実はそのころ初めてAppleのコンピュータを2つ買ってきて、AppleTalkっていうので繋いで「っは!」っていう驚きがあったのが、きっかけの1つ。もう1つのきっかけは、パソコン通信ですね。

僕:ほー。

こーせーさん:ニフティサーブに入って、その中でいろんな事件に遭遇してですね。

僕:事件(笑)。

こーせーさん:事件というか(笑)、ある人が冗談で「トカレフ40万」という書き込みをして、それが大騒ぎになってですね。その人は(ニフティーサーブを)除名されて、始末書書いて戻ってきたんですけど(笑)、もう「英雄」だったんですよ。

僕:英雄(笑)。わかります、わかります。

こーせーさん:いわゆる「ネットで大騒ぎになるってこんなことなんだ」ということを初めて経験しました。それで「ネットやばいぞ!」っていうことで、パソコン通信のホストを始めたんです。その1年後くらいに「インターネットの風」が吹いて来て、ホストをやめて、インターネットのプロバイダを熊本で始めて、インターネットカフェをやったりしました。ホームページ作る仕事したり、プロバイダ作ったりする仕事で沸いたんです(儲かったんです)。でも、1年くらいで、いろいろな大手企業さんが地方にアクセスポイントを作るようになって、儲からないようになったんですよ。

僕:なぜ(笑)?

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こーせーさん:大手企業さんへの苦情電話が、なぜか全部うちにかかってくるんですよ。「お客さまは、どこのプロバイダを使ってらっしゃいますか?」って聞くと、うちじゃないわけですよ(笑)。

僕:あらら(笑)。

こーせーさん:大手企業さんは、地方に苦情受付拠点やコールセンターのようなものを設けずにアクセスポイントだけ増やしていってたんですね。当時、パソコン通信のニフティーサーブだってわずか27人くらいの社員でやっていたんですよ。電話なんか出られるわけじゃないじゃないですか(笑)。

僕:忙しいでしょうからね(笑)。

こーせーさん:で、大手企業さんが(苦情電話に)出ないから、うちにかかってきてたんです(笑)。そんなのを受けていたらきりがないから、プロバイダは辞めました。

僕:酷い(笑)。

こーせーさん:そんな残酷時代のあと、中小企業向けに、コンピュータのフィールドサポートを始めました。

僕:残酷時代(笑)。はい。

こーせーさん:最初はコンピュータの先生として行ってから、フィールドサポートをするんですけど。その後、福岡に移り、全九州で、業種はガス会社や葬儀屋など200社くらい。コンピュータ教えたり、ファイルメーカーでなんかちょっとしたものを作ってみたりしてました。でも、またこれも、だんだん大手のベンダさんが、受託よりも、フィールドで開発するようになってきまして……。

僕:そうですね。

こーせーさん:もう、言ってしまえば、大手に僕らが発案したやり方に食い込んでこられたんですよ。それでもう立ち行かなくなって、その仕事を締めるにあたって「何をしようか?」と散々悩んで始めたのが、株式会社ザイナスの「ザイメニュー(ZIMenu)」っていうSNSなんですよ。

僕:ほー。インターネット創成期以前から、残酷時代を経由したり(笑)、いろいろやってきて、そして、今、SNSになったんですね。


広告モデルをとらないSNS

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こーせーさん:収益をどこでとるか? ってところで、広告型のモデルはとらないということを最初に決めたんです。

僕:はい。

こーせーさん:広告モデルをとると、ユーザーをたくさん集めなければならないでしょ? ユーザーをたくさん集めるためには、見逃さなければならないことが出てきちゃいます。例えば、僕自身も、福岡に出てきて、友達が欲しくて、某大手ポータルサイトの掲示板で、友達を募集したんです。すると、友達は集まったんだけど、その友達同士のやりとりの中に、知らない人が割り込んできたりするんです。

僕:はい。

こーせーさん:女の子なんかは、「なんで顔も知らない人にブスって言われなきゃいけないの?」って傷ついちゃうような、すごい悪口を書かれるような状態が某大手ポータルサイトの掲示板にはありました。某大手SNSも、そういった状態になっていますよね。ユーザーをたくさん集めるためには、そういう悪口とか言う人を見逃さなければならないですよね。世の中、そういうサイクルが多いんです。

僕:なるほど。ありますね。

こーせーさん:最近、よくマスコミに言われることで「ザイメニューで登録の敷居が高いのはなぜですか?」っていうのがあります。

僕:僕もさっき登録してみたんですけど、確かに登録の敷居が高かったです。

こーせーさん:まぁ、単にインターフェイスとして洗練されていないっていう問題もあるんですが(笑)。

僕:うははは(笑)。

こーせーさん:あの(笑)。

僕:うはははははは(笑)。

こーせーさん:「そういうところを、ちゃんとしないといけないって問題」を置いといても、敷居は高いですよね(笑)。

僕:はい(笑)、確かに高いですね。

こーせーさん:これはやっぱり、しつこく「本名で入力してください」と言って、きちっと個人情報を登録していただくことが大事ですし、「顔写真を載せてください」っていう規約もあるんです。そのように敷居をあげることによって、ユーザー数は増えなくなるんですけど、公開して2年経ちましたが、まだネットトラブルがゼロなんです。これ、うちの自慢です。

僕:凄いですね。ところで、広告モデルを取らないとすると、収益源はどこですか?

こーせーさん:ザイメニューの収益源は、「お店の集客をする」ということと、「ブランディングをする」ということです。そこを仕事として、その流れをずっとやってきています。正直言って、ザイメニューには広告付けていますけど、Googleさんからいただいたお金は、半年で5000円ですよ(笑)。

僕:5000円!!! うははは(笑)。SNSを使うようなリテラシーがある方って、広告クリックしないですよね。

こーせさん:ですね。

僕:話を伺っていると、すごく、僕の好きな方向ですね。

こーせーさん:そうですか。ぜひ、一緒によろしくお願いします(笑)。

僕:うちら(IT側の人)だけでは、やっぱりピンと来なくて、例えば、プログラマだけではピンとこないなって。

こーせーさん:もちろん。

僕:デザイナさんでもピンとこないし、いわゆるIT側の人だけではピンとこないなって感じます。「ザイメニュー」のような道具を作って、それでITではない商売(集客、ブランディング)をやるっていうのは、僕の好きな方向です。

こーせーさん:そうですよね。

僕:えー、まとめると、ザイナスさんってのは、SNSの運営をしている会社で……。しかも、実名SNS。

こーせーさん:そうですね、実名、顔出し!

僕:顔出し(笑)。

こーせーさん:実際のやり取りは、「ニックネーム」っていうのがあるんですけど、特定できるって意味では、実名に近いです。

僕:そして、広告モデルはとらない!

こーせーさん:そうです。お店の集客をすること、ブランディングをすることが仕事です。

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 今回は、インターネット創成期以前から今の株式会社ザイナスの「ザイメニュー(ZIMenu)」を始めるまでの、こーせーさんの経験についてと、広告モデルでの運用を行わないSNSの話を伺いました。確かに、Webサービスというと、なにかと広告モデルに落ちがちですが、こーせーさんの言われているとおり、広告モデルにすると、ユーザーをどんどん増やさないといけない罠にかかってしまいます。

 次回は、「ネットでのコミュニケーション」「ネットコミュニティ」について、さらに会話して、なぜ「実名」「顔出し」のコミュニケーションなのか? というところに触れてみたいと思います。

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コメント

広告モデル以外でどう運営されているのか、とっても気になりつつ拝読しましたっ。

> ザイメニューの収益源は、「お店の集客をする」ということと、
> 「ブランディングをする」ということです。そこを仕事として、
> その流れをずっとやってきています。

この辺り、もちょっと詳しく聞いてみたいです。会員さんからお仕事をいただいているんでしょうか?

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