ドラマ「JIN -仁-」を見て、IT技術者ってなんでしょう?
2010/01/08 18:05:00
あけましておめでとうございます。昨年はたくさんの方にアクセスいただき、コメントいただきありがとうございました。今年こそ良い年にしたいですね。
で、のっけからあまり良い話題ではないのですけれど、たくさんコメントいただいて「IT技術者ってなんなんだろう?」と、いまさらながら考えています。
たとえば、医者について考えてみましょう。
物資がなかった頃は、注射器は普通に使いまわしていて、せっかくの医療行為が肝炎などの感染症の拡大につながるという皮肉な結果になりました。
それでも「注射器を使いまわすこと」が感染症の原因と分かっていない時点では、当時の医者が医療行為として努力していたことは責められません。こういった、医療が進むにつれて、過去の治療方法や処置が実は間違っていたということは、数年に1つか、もしかするともっと高い確率で起こることで、未知の事象に対してベストの対応ができないのは不可抗力で、その不可抗力を恐れていては、医療の発展はないのです。
しかし、「注射器を使いまわすこと」が感染症の原因と分かってもなお、医者側の都合で「注射器を使いまわす」ということをやっていたとしたら、普通は許せませんよね。
わたしは、2つの視点で問題があると考えます。
1つは、もちろん人間として、人の命に関わる問題であるということ。
もう1つは、職業人として、本来人の健康と命を守る立場である人間が、自分の都合で結果として人の健康を損ねることになったこと。
後者について、考えてみましょう。
当たり前ですが、「注射器を使いまわす」ことが危ないと分かった時点で、使いまわしてはいけない。分かった時点というのは微妙です。初めての論文が学会で発表された時点かもしれませんし、多くの事例が紹介された時点かも知れません。
一般に知られていなかっても、看護士学校の教科書に出てくるぐらいの常識になった時点で「注射器を使いまわすこと」をやったら、犯罪者として起訴される可能性があり、今現在「注射器を使いまわすこと」をやったら完全な犯罪者です。
医者には、基本的な医療技術の他に、患者やその家族の不安を取り除くことも非常に重要なスキルです。つまり、僧侶や牧師に匹敵するような高いコミュニケーション能力というよりも、カウンセリング能力も必要です。
しかし、僧侶や牧師やカウンセラーではなく、医者ならば、それらは必要であっても補助的な能力で(補助的だからカウンセラーを雇う病院はたくさんある)、最低限必須な能力は医療技術でしょう。
逆に、もし自分は普通の医者よりカウンセリング能力が高いから、「注射器を使いまわしても、患者を満足させられるからよい」と考える医者が存在するとしたら本当に怖いですよね。カウンセリング能力が高いだけに、患者側は信じてしまいますから。
患者側が、医者が間違っていると気づくのは非常に難しいことです。患者側がおかしいと思っても、医者が間違っていることを証明することは、素人である患者には非常に難しいことです。証明しにくいことだから、非常に多くの規制や法律で、医療を監視する体制を作ってきました。それでも、同じような馬鹿みたいな犯罪医療行為は行われていて、先日も、不潔な環境でレーシック手術をして失明させるなんていうとんでもない事件がありましたね。
IT技術者は命に関わるような仕事をやってないかもしれませんし、医療に比べれば規制や法律もほとんどありませんし、監査されることも多くはないのです。だから、何をしても良いわけではない。「分からない顧客を満足させるから」は、あるレベルから許されないとわたしは考えています。
ユーザーインターフェイスのデザインセンスも、カラーコーディネートも、コミュニケーション能力も、マネージメント能力も、その他もろもろの能力が必要であったとしても最低限必要で、最重要なのは「ITの技術力」なのです。
命に関わるような仕事でなくても、職業人としての責任は医者と同じようにある。医者は、何のために存在しているかというと、「患者の健康と命を守る」ために存在し、IT技術者は「顧客の業務を効率的にする」ために存在するのです。
つまり、IT技術者がまずこだわるのは効率です。それをないがしろにするのであれば、よほど大きな特殊な理由が必要です。医者が、患者の命より他のものを優先するとしたら、「尊厳死」のような特殊な問題以外あってはならないでしょう。命とトレードオフするのが「医者の都合」だったら「ふざけるな!」ってなりますよね。
繰り返しますが、IT技術者は効率をとことん追求しなければなりません。
患者は治る病気なのか、どのぐらいの期間で治る病気なのか分かりませんから、カウンセリング能力を駆使して誤魔化してよいなんてことはあってはならないように、IT技術者は技術力がない顧客を納得させることができたとしても、とても誉められたことではありません。
その上、誤魔化している理由が「未経験の高校生ができるレベルのことをやりたくない」では話にならない。
医者がカウンセリング能力が高いから、それをもって医療技術のなさを補うというのは恐ろしいでしょう? 医者も診療をしない医院長などの管理職になるなら、マネージメント能力が高ければよいかも知れませんけれど、現場を知らない医院長がいる病院にはできればいきたくないでしょう?
SIerも職業人として考えると同じと思うのですけれど、IT技術者は技術は要らないという人が多いし、会社の方針とするところも多い。それが正しいと堂々と主張する人が出るのが信じられないのです。せめて建前上は反対すべきじゃないかな~(苦笑)。
もちろん、心臓外科医に眼科医と同じ技術を求めるのは間違っているように、IT技術者も、全員に全部の能力が必要とはいわないし、次々に新しい技術が出てきますから全部を知るべきとはいわないけれど、「足切りされるべき最低限のライン」があって当然ではないでしょうか。
医者と看護士で要求されるスキルは違いますが、被っている医療技術(知識)で医者が看護士に劣るとしたらかなり問題です。つまり「注射器を使いまわしたらいけません」ということが看護士の教科書に載るようになった時点で、それを知らない医者は、もう、資格がないといえるでしょう。
何度も書いていますけれど、初級シスアドというのはユーザー向けの試験で、この業界を目指す高校生が毎年何千人と通るレベルです。初級シスアドの範囲と被る仕事をしているのであれば、その辺を「足切りされるべき最低限のライン」としてもよいでしょう。むしろ、低すぎるような気がしますけどね。
技術の移り変わりが激しい業界ですから、気づいたら「足切りされるレベルになっていた」ということはあるでしょう。それは気づいた時点で技術力を付ければ済む話ですから、今現在スキルがないということは責めたりしません。
問題は、「そのレベルになくてもプロである」と開き直って主張する人が出ることです。そんな人間を「技術者じゃない」と断定しても何の問題もないと考えます。
そういう人は、わたしには注射器の使い回しが危険なことを知りながらやる医者と同じにしか見えないのです。確信犯ですからつい罵倒してしまう。
とにかく、IT技術者を名乗るなら「効率」を軽視することはあってはならない。初級シスアドレベルの技術を避けるために「効率」を軽視するというのは、ど~う考えてもおかしいです。
わたしはSQLにこだわってるのではなく、「効率」にこだわっていて、RDBMSを使うのにSQLを十分に使わなかったら非常に非効率である。1年間そんなことばっかり書いていましたが、RDBMSを使っても「こうすればSQLを使うより効率的」。というまっとうな反論は1つもない。
何だかな~。
タイトルから離れすぎ(笑)。
イヤ、「JIN -仁-」を見ていて、まぁ、イロイロと思って書いたのですが、年末進行で投稿できなかったので大幅に書き直したのですけれど、タイトルは残させてもらいました。

生島勘富
