シリコンバレーで現役デバッガやってます。

BUG022 - シリコンバレーのIT企業なんて社員全員が大門未知子先生な状態

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ドクターX、見てますか?


 アメリカの主なケーブルTV局には「TV Japan」という有料チャンネルがあって、日本のNHKニュースを同時中継で見たり、日本で人気のドラマやバラエティ番組をほぼ同時期に見ることができます。アメリカのド田舎に住んでいても、ネットとTV Japanさえあれば日本の情報に遅れることはほとんどありません。便利な世の中です。私はあまりドラマは見ませんが、このドラマは毎回見ています。硬直、腐敗した大学病院の組織と一人で闘う大門先生のキャラに惹かれて視聴率が好調なのも納得できます。

 さて、シリコンバレーの嘘偽りない真実の姿を意識高い大手マスコミに負けず毎回このコラムで地道に紹介してきましたが、今日ハッと気づきました。つまりわかりやすく、そして少し極端に言うとシリコンバレーのIT企業は社員全員が大門先生な状態だと思ってもらえばいいのだと思います。

残業、休日出勤は「いたしません」


 シリコンバレーのITエンジニアは時間外労働は「いたしません」。9時過ぎに来て5時頃には帰ってしまいます。7時過ぎても残っているのは独身でやることがなくて渋滞を避けるためにネットで暇を潰しているような若者だけです。毎晩残業しないと仕事が終わらないというのは、仕事の配分がチーム内ですらできないマネージャの能力の問題です。よほどの緊急事態でなければ休日に出るなんて考えられません。夜間や休日にオフィスの電灯が煌々とついているのは誰かが仕事しているのではなく、防犯上の理由だけです。それでもまだ残業や休日出勤を強要されるようなら、どうせ年俸制で残業手当なんてでないのですからエンジニアはとっとと転職してしまえばいいだけのことです。

ゴルフ、飲み会のお付き合いは「いたしません」


 そもそも週末に会社のイベントが有るなんてことは聞いたことがありませんが、ゴルフに限らず、平日でも昼のランチ、夜の飲み会、そういった社員同士の付き合いは日本に比べるとかなり希薄です。実際、これはいいことか悪いことか判断が別れると思いますが、良く言えばお互いのプライバシーに立ち入らない、実際にはプライベートの時間まで社員同士の顔は見たくない、そういうことなのです。では会社側として社員の親睦はどうするのかというと、平日真っ昼間に堂々とハイキングに行ったり、バレーボール大会があったり、クルーズ船でランチにいったり、企画する会社のイベント企画班の苦労がしのばれます。

論文、仕様書、ドキュメントのお手伝い、「いたしません」


 アメリカでは各個人の職種がはっきりと定義、限定されているので、むやみに親切心で同僚の仕事を手伝ったり、おせっかいで他人の領域に手を出すのはかえって余計なトラブルの元です。また、上司が部下に決められた範囲以上の仕事を押し付けるのも明白なルール違反です。一見、社員のワガママに聞こえますが、こうすることで全体の効率を高めている、ということになっています。仕事の流れを明確に定義し、仕事を適切に各個人に割り振るのがマネージャの仕事です。トラブルが発生すれば全てマネージャの責任でよいのです。そのために雇われているマネージャなのですから。

そして極めつけは「私、失敗しないので」、ではなくて...


 実際の仕事はドラマではないので誰でも失敗はあります。自分のせいではなくても失敗してしまうことはあります。「シリコンバレーでは失敗は何度でも許される、それが再チャレンジの精神を産んでいる」みたいな話を聞いたことありませんか?いや、私自身のエンジニアライフを振り返ると、必ずしもいつも失敗が無条件に許されたということはなかったかと思います。失敗した後のフォローの仕方によっては日本と同じ、いやそれ以上に弱い立場に追い込まれることはあります。ですからここは「私、失敗してないので」と開き直れるタフな精神力が必要です。

あなたの職場に大門先生はいませんか? 


 いかがでしょう。あなたの職場に大門先生のような濃いキャラのITエンジニアさんはいませんか?もしいらっしゃったら、ひょっとするとその方はシリコンバレー向きかも知れませんよ。いやいつか、もし誰もが皆、大門先生のように「いたしません」と言える時代が来たら、その時はきっと日本からブラック企業なんて呼ばれる会社はなくなっているはずです。もちろん、それが結果的に良いことかどうかは別の問題ですが。

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