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なぜ情報システム部はきらわれるのか

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 異論反論覚悟で、新書判ビジネス書のようなタイトルをつけてみた。
当然、すべての情報システム部の評価をしっているわけではないし、その様な統計資料を持っているわけではない。ただ自分が知っている範疇を見渡すと、意外とタイトルの信ぴょう性は確率は高いように感じる。

 なので一般論ではなく、あくまでも独断と偏見という立ち位置で話を進めたいと思う。

○そもそも情報システム部とはどういう部署か

 これも、いろいろと立場や役割の違う情報システム部が存在すると思われるが、一般的にはシステムを本業としない企業のなかで、社内のシステムを運用・保守している部署である。ある程度大きな企業の中では、部署として独立しているが、中小規模の企業ではすこしコンピュータに詳しい人が、暗黙的な担当者になっている場合もある。グループに所属している企業などでは、同じグループのシステム専門会社に任せている場合もあるだろう。どちらにしろ、情報システム部がシステム基盤(パソコンやネットワーク、サーバ)と全社共通システム(ポータル、メール、基幹システム)のおもりをしている事には間違いない。では、新しい業務領域のシステム化は誰が進めているのだろうか。実のところ、ここに情報システム部が積極的に関与しているところをあまり見たことがない。決めるのは経営者と現業部署で、現業部門が開発まで担って情報システム部がインフラを準備する。もしくは、開発から先を情報システム部が担当するかのどち らかだ。開発から先を担当すると言っても、実際に開発するのはシステム会社のため、情報システム部の役割は契約やシステム会社と現業部署間との調整、インフラの準備が主な仕事となる。

○他部署は、情報システム部のどこがきらいか

[事例①]
 ある部署がシステム導入を考えており、その会社の情報システム部の担当から提案依頼がありました。他社へも提案依頼もしているとのことでしたので、差別化の意味も含めてクラウドでの提案をしてみることにしました。利用部所の担当者と情報システム部の担当者含めて提案内容説明の場が持たれたのですが、利用部担当者はクラウドの提案をいたく気に入り、そんなこともできるのか、という様子で打合せの場は終始和やかに進みました。しかし、最後に利用部の当者の「(クラウドという)こんなに良い方法があるのに、なぜ他社はクラウドの提案をしてこないのか」という質問に対して、情報システム部担当の返事が場を鼻白ませてしまいました。曰く、「それは、あなた達がクラウドで、という提案依頼をしないからだ」

[事例②]
 こんどは利用部所の方とシステム導入の話をしており、開発はつつがなく進んで行きました。当然の事、インフラについても話をしていかないといけないのですが、どうも、そこに話がおよぶと担当者の歯切れが悪くなります。いよいよ、切羽詰って情報システム部の方にも出てきてもらっての打合せになったのですが...。 後から担当の方に話を聞くと、どうも利用部所と情報システム部はあまり仲良くないとのこと。理由として以下の様な話を教えてもらいました。

  ・ウィルスメールを受信してしまった利用部所の方を机を蹴りつけながら叱責した
  ・基幹システムのアクセス状況が悪いという事で、いきなりアカウントをばっさり
   消してしまった(それも支社長の!)

  ・基幹システムにアクセスするには再度アカウント申請をしないといけないが、
   その追加までに二ヶ月以上かかる 等々

[事例③]
 すでにシステムを導入しているお客様の利用部所から業務変更に伴う改修依頼があり、他システムとの連係が必要となるため情報システム部担当と打合せを行いました。打合せ自体は、滞りなく終わり、連係方法や連係内容で情報システム部の了承を得たと思っておりました。ところが、改修を終えてリリースしようとメンテナンス申請を情報システム部に出したところ、リリース日前日になって情報システム部担当から、承認が下りない旨の連絡がありました。上長が連係のセキュリティに関して何かを気にしており、承認してくれないとのこと。再度、担当に連係方法や内容について説明し、説明資料を作って送っても承認がおりません。
 利用部門も運開に向けてのアナウンスをしており、リリースできるかどうかヤキモキしております。とうとう、リリース当日になっても明確な回答が来ないので、利用部門の偉い人に掛け合って、情報システム部門の承認者であるグループ長との直接打合せの場を設けてもらいました。結局、担当へ説明した内容の繰り返しとグループ長が何を問題視しているかを聞き出し、結果、Oracleのユーザアカウントの権限を変更することでリリースの了承を取り付けました。

 これらは経験してきたことのごく一部だが(一部脚色あり)、個人の気質に起因する事象は別として、情報システム部が嫌われる理由は大きく以下の三つがあるように思われる。
 
  1.利用部門のビジネスに寄り添っていない
  2.セキュリティや運用に関して厳しすぎる
  3.技術力が不足している

 利用部門としては自分たちがシステム的に何か困っているときに情報システム部は何もしてくれないくせに、いざ自分たちで何かをするときになるとセキュリティやコストを盾にあれがダメ、これがダメといってくる面倒くさい部署だと思っている節がある。特にセキュリティやコスト上、問題があるのであれば代わりになる方法を教えてくれれば良いのに、冷たくあしらわれてしまう。
 
 これが、他部署が情報システム部を嫌っているところではないだろうか。

○そうはいっても、情報システム部だって言い分がある

 利用部門からの不満は先に書いた通りだが、情報システム部には情報システム部の不満がある。彼らに成り代わって想像してみるに...。

  1.コンピュータの基本操作に不慣れで、初歩的なことを聞いてくる。しかも、
    別な人から何度も何度も
  2.セキュリティに対する認識があまく、少しでも気を抜くとすぐに様々なトラブル
    を引き起こしてしまう。そしてそのトラブルに対応するのはいつも情報システ
    ム部なのだ
  3.利用部門の人たちはいつも勝手に新しいシステムの導入を決めてしまう。結果、
    サーバはどんどん増えてゆき、情報システム部の面倒が増えてゆく

  4.たまに新システムや既存システム改修の相談を受けるが、夢のような話ばかり。
    タブレットが流行ればタブレットを使うと言い出すが、結局は棚でほこりを
    かぶっているシステムがどれほどある事か
  5.システムが増えれば増えるほどトラブルはますます増えてゆき、目の前のトラブ
    ル対応で精いっぱい。なのに利用部門は気楽に、やれ止まっただの、遅いだの
    文句ばっかり言ってくる

 冒頭でも書いた通り、情報システム部は社内システムのおもりが主な仕事である。しかし、このおもりの仕事というのは地味だけど大変な仕事である。トラブルが起れば昼夜構わず対応を迫られるし、そもそも何も起こらなくて当たり前。何かが起これば責め立てらる、というある意味報われない仕事でもある。加えて技術専門職でもあるので、経営者も含め、社内に自分たちの苦労をわかってくれる人は数少ない。
 ましてやセキュリティ関係は、何かあった際の影響は計り知れない。それなのに、利用部門の人たちは緊張感がなく、面倒くさいからと理由で勝手なことをしてしまうので、気が気ではない。加えて経営者は「セキュリティはしっかり」と口では言うものの、利用部門を統制するわけではなく、何か起こればオロオロとするばかり。

 この辺りが情報システム部の本音ではないだろうか。

○経営者だって言いたいことがある

 経営者にとっての情報システムは、モンスターに他ならない。便利になる、効果が出ると導入を決定するが、そのたび毎にコスト―オーバー、納期遅延が問題になる。加えてカットオーバー後の社員の反応は最悪で、こんなもの使えない、業務量が増えた、遅い・バグだらけ、などという不満が噴出する。追加予算を投入して、ようやく落ち着いたかと思えば、機器の保守が終わるのでリプレイスを...、とさらに追加予算。
 
 巷では、クラウドやビックデータ、IoTなどはやり言葉が蔓延し、これらを導入しなければ時代においてゆかれるように囃し立てられ、一方でセキュリティの怖さも連日の様に耳に入ってくる。しかしながら、自社がどのように向かい合えば良いかは皆目見当はつかず、最新技術について情報システム部に聞くと流行りもの好きと鼻で笑われ、セキュリティについて聞くと「やっています!」とムキになって怒られ、追加予算を求められる。

 これまで導入してきたシステム資産は老朽化してゆき維持費が上昇する一方で、古い技術が業務や経営の足かせになっているのではという心配もある。だからと言って今のシステムをゼロから作り直す勇気と予算は持ち合わせていない。どうしても技術という壁があるために、システムに対する経営判断をするには不安がある。できれば情報システム部がその辺のフォローをしてほしいのだが、彼らの話は技術的?すぎて何をいっているのかさっぱりわからない。だからどうしてもシステムについては情報システム部任せになってしまう。

○結局のところ何が問題なのか

 あらためて。
 情報システム部はなぜきらわれるのか?
 おそらく、情報システム部が置かれている立場の特異性にあるのではないかと考える。社内では情報システムというよく分からないもの扱う、得体のしれない部署。業界からすると、自社の情報システムしか知らない超ガラパゴスな人たち。ラットイヤーと言われる、この業界では技術は日々進化してゆき、システムは高度化、大規模化、複雑化の一途をたどっている。半面、情報システム部が取り扱うシステムはよほどの大企業ではない限り、何世代か前の古い独自システム。いくら勉強熱心で自己研鑽に勤しんだとしても、最新技術を身に付けることはできない。宣伝から得られるキラキラ情報を信じて導入時に苦労するか、実態が分からないまま尻込みしてしまい、導入を決断しきらないかどちらかであろう。ベンダーの技術者は覚悟を持って取り組み、苦労を技術として身に付けるため、その差は歴然である。
 そして、このロジックは裏返すと利用部門との関係にも適用できる。当然のことながら利用部門は自分たちの業務ついては深い知識と経験を持っているし、情報システム部にはそれがない。
 ようするに、業務に対する知識と経験は利用部門に及ばないし、新しい技術やシステムへの知識についてはベンダーの技術者に及ばない。詳しいことは今、自社で動いているシステムの事だけ。この中間管理職的立場が情報システム部が嫌われる大きな理由に感じられる。

○では、どうすれば良いのか

 先の嫌われる理由の中で、中間管理職的立場という比喩を用いた。中間管理職の悲哀は上司と部下の間の板挟みである。そして嫌われる典型は、上からの指示は部下の所為にして言い訳し、部下に何かをやらせるときは全て上からの指示だからと、丸投げするような輩である。これは情報システム部もよく似ている。利用部門からやりたいことを言われれば、技術やベンダーの所為にしてそれは無理といい、ベンダーへは利用部門が決めないから、もしくは無理を言っているからと言い訳する。これでは、嫌われて当たり前。しかし中間管理職という比喩を行う事により、情報システム部が嫌われる理由もはっきりしてきたし、その解決方法も見えてきたように思える。要は情報システム部独自の問題ではなく、企業によくある問題なのだ。だったら、その対応策も巷では多く考察されている。そ れを参考にすればよい。野中郁次郎はその著書の中で、中間管理職を企業の知識創造活動の中で重要な役割と位置づけ、強い会社での中間管理職の役割を事例と示されている。細かいことは、著書を読んでいただきたいが、その中間管理職の役割は充分に情報システム部の役割に置き換えて考えることができる。
 情報システム部が企業の知識創造部署としての役割を果たすことなのだ。

○本当の問題は何か

 情報システム部が嫌われる理由と、対応策について考察してきた。ひとつの方向性は見えたのではないだろうか。
 
 では最後に、本当の問題は何か?

 それは何より、情報システム部が知識創造部署として生まれ変われるか、ということである。。いま、嫌われているということは、現状ではその役割をはたせていないという事であろう。いまはたせていない事が、今後、その役割を担えるのあろうか。それは各企業の情報システム部次第という事であろうが、とてもハードルは高いように感じられる。
 では、変わる事が出来なかったら...。それは、巷で言われている第二の情報システム部門の創設が、現実味を帯びてくるのではないだろうか。

Comment(1)

コメント

ひろすけ

情シスがもっと勉強すればいいだけじゃね?

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