ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第305回 自分を俯瞰する

»

 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 前回のコラムでも書かせていただきましたが、私はキャリアコンサルタントを目指される方のトレーニングもさせていただいております。キャリアコンサルティング(キャリコン)のトレーニングでは主にキャリコンのロールプレイ(RP)をするのですが、なかなか思う通りにキャリコンを進められない難しさがあります。それは、戦略的に会話をすることの難しさでもあるのですが、今回はこのことについて書きたいと思います。

■キャリコンの流れ

 ちょっと小難しいことをお話ししますと、キャリコンにはいくつかの方法があるのですが、その中でも「システマティック・アプローチ」という手法が良く使われます。実際、私も良く使う手法でもあるのですが、主に以下のような流れでキャリコンを行います。

信頼関係の構築

問題の把握

目標の設定

方策の実行

 簡単にいえば、最初に相談相手(クライエント)との信頼関係を築いた上で、クライエントの話から問題点を把握します。その上で、目標を設定した上で具体的な行動(方策)を決めて実行に移す、という流れです。こうやって文章に書くと、ごく普通に行われるような相談に近いイメージがあるかもしれません。

■キャリコンの難しさ

 しかし、キャリコンはこれを意図して行う所に難しさがあります。例えば、問題の把握ではクライエントの話から問題点を把握するのですが、「クライエントの話している内容=クライエントが抱える問題」とは考えません。キャリアコンサルタントはクライエントの話している内容から「クライエントが抱える本当の問題(主訴といいます)」を把握するように努めます。

 例をあげると、クライエントが「さっさと仕事先を変えてもらいたいんです! 」と言ってきたとします。これがクライエントが抱える問題です。しかし、キャリアコンサルタントはこの話を聴いて、なぜ仕事先を変えたいと思うのか? その理由や背景を掘り下げていきます。そうして、「嫌な上司がいる」とか「やりたくない仕事がある」などといったことがでてきたときに、それをクライエントに投げかけ合意を取ることで、初めて「クライエントが抱える本当の問題」として捉えるのです。

 キャリコンではこれをクライエントとの会話で行います。そのためには、クライエントの話を傾聴しながら、どのような話し方をすれば良いのかを考え会話を進めなければなりません。しかし、実際にやってみると分かりますが、クライエントの話に集中すればするほど、会話の流れをイメージすることがが難しくなっていきます。。。

 こういったことから、キャリコンのRPを行うと、慣れていない人の場合、ほぼ場当たり的な会話になります。クライエントへの質問に一貫性がなく、何となくいろんな方向から話を掘り下げようとするので、クライエントからすると意図が良く分からない質問ばかりされているような感覚になります。そうなるとクライエントとの信頼関係が薄れ、そのキャリコンは成立しなくなります。。。

■自分を俯瞰する

 だからこそ、キャリコンでは戦略的に会話をすることが求められます。戦略的に会話をするというのは、システマティック・アプローチの流れに従って会話をするということでもありますが、会話は生き物ですので、毎回同じような流れで会話が進むことはまずあり得ません。

 それでは、どのようにすれば良いのか? 方法はいくつかありますが、私は会話を俯瞰するようにしています。キャリアコンサルタントである自分と相談相手であるクライエントを客観的な立場俯瞰するもう一人の自分を置きます。このもう一人の自分が私と相談相手との会話を聴き、そこからどうやってどうやって会話を前に進めていくことができるかを考えるようにしています。

 この感覚は慣れないと難しく感じます。主観的に会話をしている自分を客観的に捉えるのですから、簡単ではないと思います。しかし、やっていくとだんだんその感覚が掴めるようになってきます。そして、この感覚が掴めるようになると、会話をコントロールしやすくなります。私はこの感覚を掴むのに、徹底的に人との会話を観察する癖をつけるようにしました。どんな人の会話でも構いません。テレビの中の会話だって構いません。とにかく、人と人との話を客観的な立ち位置で聴き入るようにしました。そうしていくことで、次第にその感覚に慣れ、自分の会話すらも客観視できるようになってきました。

 この自分を俯瞰するという行為は、自分の客観性を高めることにも応用が利きます。自分の振る舞いや行動を客観視し、それが自分にとって正しいかどうかの判断ができるようになります。私の場合はミッションステートメント(詳しくはコチラをご参照ください)がその評価軸になりますが、こういった自分の振る舞いを見直すきっかけにもなっています。

 自分を俯瞰するのはトレーニングが必要ですが、一人でもできますし、何よりプラスの効果も大きいです。良かったら、ぜひやってみてくださいね。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する