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第204回 非日常の世界から

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 こんにちは、キャリアアコンサルタント高橋です。

 研修にせよキャリア相談にせよ、これらは受けられる人にとっては普段の仕事や生活とはかけ離れている非日常の出来事です。そのため、こういった場では普段の仕事や生活では経験できないようなことを体験できることがあります。先日、人づてに聞いた話なのですが、合宿形式で行われていたある研修の最終日、研修トレーナーや参加者が感極まって泣き出したそうです。そのときは、なんだかすごい話だなぁ程度に聞いていたのですが、後から少し思うことがありました。そこで今回は非日常の出来事について思うことを書きます。

■ある研修の話

 その研修はコミュニケーション系の研修で、1週間の集中合宿で行われていたそうです。受講者は日中の講義の他、夜間は復習やトレーニングなどを自主的にされています。そのため、受講者は寝る時間以外は研修だけに打ち込むような環境に置かれるのだそうです。そうして、1週間経つ頃には目的のコミュニケーションスキルを身につけ、無事研修が終了になるそうです。

 このような研修は期間中は受講者にはとても濃密な時間になります。今の世の中、1週間という長期に渡る期間を外界から遮断され1つの技術やスキルを習得するということはなかなか体験できることではありません。恐らく、受講者の方々は最初は外界のことが気になると思います。しかし、研修が進むにつれ、少しずつ意識が外界から自己の内面へと向かっていきます。そして、これまで自分がこれまで触れてこなかった、あるいは関わってこなかった自己の深い部分と向き合い出します。その部分は人によっては触られたくない部分かもしれません。しかし、こういった研修ではあえてそこに触れていきます。それはとてもパワーのいることで、ときには耐えきれず泣き出してしまう人もいるそうです。そうやって、少しずつその人の変革を促そうとします。

 そして、研修が終了すると、これまでの苦労や達成感などをトレーナー、受講者が共にたたえ合い、感極まって泣き出すのだそうです。

■非日常から日常へ

 研修が終わった直後、受講者は軽い興奮状態にあります。そのときは研修の成果を普段の仕事や生活に生かそうといろいろ考えています。しかし、実際に普段の仕事や生活に戻るとなかなか研修の成果を生かすことができません。そうしている内に、その人は少しずつその人の日常に戻ってしまい、いつの間にかあれだけ感動を生んだ研修は、その人にとっていい思い出程度にしか残ならないようになってしまいます。。。

 …と、実際にはここまでことにはならないケースもあります。しかし、これは実際に様々な研修を受講された方の感想を、私が直接お聞きしたモノです。ですので、当たらずしも遠からずといったところだと思っています。それにしても、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

 私なりの考えですが、研修というモノはその人にとっては非日常の世界です。言葉が正しいかどうか分かりませんが、例えるならばアーティストのライブのようなモノかもしれません。そのときはとても感動し、感銘を受け、心が震えます。しかし、それはあくまで非日常の世界です。どれだけ非日常の世界を素晴らしいモノにしたとしても、そこから一歩日常に戻れば、その人にはいつもの毎日が待っています。非日常の中にいる人は、決してその人の日常には入ることができないのです。

 研修やキャリア相談などで盛り上がり感銘や感動をしてもらったとしても、所詮は非日常の世界での出来事です。非日常を提供する側(=トレーナー)にとって大切なことは、その感銘や感動をどうやってその人の日常に織り込ませるかです。そのために必要なことは何か? 非日常(=研修やキャリア相談など)の中でできることは何か? 非日常を提供する側はこれらを考えて実践することが必要不可欠だと思うのです。もし、それらをしないでただ単に非日常の中で感動や感銘を与えているだけなら、それは単なるパフォーマーでしかないと、私は思います。

 私はパフォーマーを否定しませんが、パフォーマーとトレーナーは違う存在だと思っています。パフォーマーはあくまで感動や感銘を与えるだけの存在、トレーナーはその人の成長をサポートする存在です。いつも思っていることですが、私はパフォーマーではなくトレーナーでありたいと思っています。

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