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第182回 自分の世界がすべてではない

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 昨今、日本の企業は労働力を国内から国外に求める傾向があるそうです。そのため、日本語の語学力を身につけるため、日本語学校が流行っているそうです。そういったこともあり、先日ある日本語学校の視察をさせていただきました。一般的に日本語学校といえば外国の方が日本語を学びに来る場所ですが、その学校は少し様子が違っており、私自身多くの気づきや学びがありました。そこで、今回はこの日本語学校から思うことを書きます。

■外国の方が日本で働くということ

 日本の企業が国外に労働力を求めるのはいくつかの理由があります。その中でも最も大きな理由は国内で労働力を確保できないことにあります。景気が回復してきたことにより就職市場は買い手から売り手市場に変わってきました。そのため、質の高い労働者は企業同士で取り合いになります。それは給料の高騰などを招く結果となり、労働力の確保という問題を引き起こします。また、国外にも質の高い労働者がおられることが認知されてきたこともあり、積極的に外国の方を採用しようとする企業も増えてきているそうです。実際、私も研修などで外国の方と接する機会があり、彼らの勤勉さには本当に頭が下がる思いになります。特にここ数年は中国、韓国の方よりフィリピン、ベトナムといった東南アジアの国の方々をよくお見掛けするようになってきました。

 ただ、企業側が外国の方を雇い入れる上で大きな問題があります。それが言葉の問題です。そのため、ある程度の日本語力をおもちの方を現地で採用するなどをしてリスクを下げているそうです。しかし、それでも実際に働いてもらうと、言葉の問題でコミュニケーションがうまく取れず、トラブルになるケースも少なくないのだそうです。

 このような背景から、企業は外国の方が日本に来られてからも日本語学校に通ってもらい、さらに日本語を学んでもらうことで仕事に支障がないようにする配慮をしているそうです。しかし、日本語学校に通えばすべてが解決するか? というわけではなく、仕事で使う専門的な用語の理解、日本での仕事のルールなどが理解できず、実際には日本語学校に通っていても問題が解決しないケースもあるようです。

■日本語学校を視察してみて

 今回、視察させていただいた日本語学校は都心ではなく地方にあります。その日本語学校にはたくさんの生徒さんがおられましたが、その中では先生も生徒さんもすべて日本語で話す決まりになっているそうです。一見すると生徒さんにとっては厳しい環境のようにも思えます。しかし、この学校の生徒さんはたくさんの国から来られています。そのため、先生が誰かのためにその国の母国語で話をしてしまうと、不公平感を生んでしまうからなのだそうです。そして、その考え方は先生、生徒さんすべてに行き渡っているそうで、皆さん積極的に日本語で会話をされていました。

 そして、この学校は生徒さんのための寮が用意されています。その寮にはゴミを分別して出すなど、日本で生活をする上で知っておかなければならない社会的なルールを学ぶことができるようになっているそうです。また、この寮は台所が共用で、調理器具や調味料などを皆でシェアしながら使っているのだそうです。そのため、退寮される先輩は後輩に調味料をプレゼントするなど、古き良き日本(? )をイメージさせられるような義理人情的な雰囲気も体験できるようになっているそうです。さらには、この学校は地元の方と交流がもてるようなカルチャースクールのような催しもされており、学生さんが地域の人たちと触れ合うことで日本という国を知ってもらう工夫をされているそうです。

■企業が求める外国の方とはどうあるべきか?

 この日本語学校の責任者の方が仰っていたのですが、この学校では企業が求める難しい専門用語などは教えないのだそうです。そのかわりに、どうすればその難しい専門用語を知ることができるのか、その方法を徹底的に教えるのだそうです。

 この考え方はすごいと思いました。確かに企業側からすれば学国の方にたくさんの専門用語を覚えれば即戦力になることでしょうし、それを日本語学校に求めるでしょう。しかし、それは専門的な知識をもたない日本語学校の先生にできることはありません。それでは、日本語学校でできることは何か? その答えが生徒さん自らが専門用語を知ることができるような方法を教えることだったのです。実際、この日本語学校を卒業し企業で仕事をされている外国の方は高いパフォーマンスを発揮されているのだそうです。

■自分の世界がすべてではない

 私はこの学校を視察するまで、日本語学校は単に日本語を学ぶところだと思っていました。その考え方が間違っているとは思いませんが、多分それだけでは企業のニーズは満たされないと思います。この学校は「日本語」ではなく「日本」を教えられていました。日本で生活する上で必要なことはたくさんあります。言葉はそのうちの一つです。それを生徒さんが身をもって感じってもらうしくみがこの学校には随所にちりばめられていました。だからこそ、生徒さんはこの学校を卒業されても日本という国でご自身のパフォーマンスを発揮することができているのではないかと感じました。

 そして、このことは私自身への振り返りにもなりました。私は日ごろ研修という仕事をさせていただいています。研修は受講される方に知識、技術、スキルなどを身につけていただく場です。しかし、受講される方にとってはどうなのか? を考えさせられました。

 今回の視察で、私は研修を受講される人にとって研修がすべてではないことを改めて知りました。私は研修という世界で受講されている方を接していますが、私にとってはそれがすべてであったとしても、研修を受講された方は、研修を受けた後に戻らなければならない世界があります。その世界こそが受講される方にとっては本当の居場所です。だとすれば、私は研修を受講された方に、

その知識、技術、スキルが、どこで求められているのか?
その知識、技術、スキルが、なぜそれが必要なのか?
その知識、技術、スキルが、どのように使うのか?
研修後のアフターフォローは必要か?

なども考える必要があるような気がしました。それが、本当の意味での研修なのではないかと感じました。

Comment(1)

コメント

abekkan

多くの外国人に日本の言葉とルールと専門用語まで教えるところ、といえばやはり一番は相撲部屋でしょうね(^^)

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