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第171回 研修の効果について考える

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 先日、あるコミュニケーション系の研修のサポートをさせていただきました。参加者は10名程度で約1日かけて行われました。参加者の動機も様々で、自発的に参加された方もおられれば、会社からの指示で参加された方などもおられました。

 研修の最後はアンケートにご記入いただき、研修のフィードバックをいただいたのですが、その中で研修の効果を疑問視される方がおられました。そういえば、この方は研修を自発的に受講されていなかったイメージがあったので、それがそのままアンケートに反映されたなぁと思ってしました。それで、今回は研修の効果という点について考えてみたいと思います。

■ある研修否定派の弁

 その方はある会社の管理職をなさっており、誰も寄せ付けないオーラのようなモノをまとっていました。その方は会社の指示で無理矢理時間を空けて来られたそうなのですが、お忙しい方なのか、研修中、しょっちゅう会社の方から電話がかかって来ては退出され…を繰り返していました。研修自体は真面目に受講されているのですが、度々席を外されるので、傍からみていると、研修内容の理解が中途半端になっているように見受けられました。

 そういったこともあってか、研修後のアンケートでは、

研修で伝えられようとしたことは理解はできるが、机上の空論のように感じる

と厳しい意見をいただきました。

■研修が終わってから…

 研修が終わると、その方は我先に帰って行かれました。本当は一言二言話したかったなぁとも思ったのですが、その方のご都合もあるので止む無しかと思っていたのですが、後から別の方から話しかけられました。その方は先ほど帰って行かれた方の部下にあたる方だったのですが、その方からこんな話を聞かせてもらいました。

○○さんのことでお気を悪くされたら申し訳ありません。
○○さんはあるプロジェクトに関わっており、納期がひっ迫している中、無理やり会社からの指示で今回の研修に参加されたんです。恐らく、昨日は徹夜されてるはずなので、相当眠かったと思います(笑)
なので、○○さんのことはあまり気になさらないでください

 この話を聞いて、その方の心情を少し理解することができたように思いました。私も昔はよく火消し案件に投入されていましたので、修羅場の現場がどのような状況になっているかはある程度は理解できているつもりです。そのよう中でトップにあたる人が研修で抜けるといったら、メンバーの士気にも関わってくるでしょう。しかし、会社からの指示で断るに断り切れず、ギリギリの判断で参加されたのではないかと思いました。だからこそ、アンケートで研修のことを机上の空論と書かれたのかなぁと思いました。

 その後、話をしていただいた部下の方に、「お時間があれば、講師がゆっくりお話ししたかった」と言伝させていただきました。

■研修は机上の空論か?

 それから、数日経って、その方からメールをいただきました。そのメールには、こんなことが書かれていました。

先日の研修ではお世話になりました。また、非礼な行いがあったかと思い、お詫びいたします。
 現在、私はあるプロジェクトの管理をやっております。そこでは、日常では想定できないような色々なトラブルや衝突があります。私はこういった現場で働いている人間なので、コミュニケーションの必要性は十分理解しております。しかし、同時にこういった現場で働いている人間からすると、今回の研修は現実味のない机上の空論に感じました。
 ただ、そこに他意がある訳ではなく、研修そのものを否定するつもりもありません。
 今はなかなか時間が取れないのですが、また時間がありましたら、こちらからも是非お話しさせていただきたいです

 この方の考えは良く分かりました。なのでこちらからは、「是非、よろしくお願いいたします」と返信させていただきました。

■リベンジなるか!?

 今回の研修ではこの方に満足していただける研修を提供することはできませんでした。しかし、この方は「もうこねぇよ! 」といった拒絶ではなく、「話をさせていただきたいです」という対話を選ばれました。ここに私はリベンジの可能性を感じました。もう一度、この人に研修を提供するチャンスがあるかもしれない…と(ないかもしれませんが…)。

 研修の効果があるかないかは、その人のスタンスに依るところが大きいです。自ら自発的に研修に参加しているか、それとも誰かに指示され後ろ向きの気持ちで研修に参加しているか、これによって研修の感じ方が大きく変わってきます。つまり、研修を机上の空論と捉えるか、それもと実務に活かすことができる実践的な内容と捉えるかは、その人の考え方一つだと思うのです。だからこそ研修を提供する側は様々な仕組みや仕掛けを使い、参加者のパフォーマンスが上がる工夫します。そして、これらがピタッと合致したとき、研修の効果が表れるのではないかと考えています。

 今回の研修はサポートとして入らせてもらったので、直接私が登壇することはなかったのですが、機会があれば、次はこの人に「研修に来てよかった」と思っていただけるような研修を提供したいと思っています。もしそのときが来たら、またこの場でご紹介させていただきますね!

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