ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第128回 「知足」を考える

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 少し前にあるITエンジニアのキャリア相談をしていたのですが、そのとき、キャリアのつくり方について「知足」という考え方を使ったことがありました。今回はこの「知足」について書いてみたいと思います。

■将来に不安をもつITエンジニア

 「高橋さんは元ITエンジニアなんですよね? 高橋さんのようなキャリアって羨ましいです

 あるITエンジニア(ここでは仮に井原さんとします)はキャリア相談の際、このようにいわれました。一体何が羨ましく思っているのを聞いてみると、

 「ITエンジニアの仕事って不安定でしょ? この先、定年までITエンジニアとしてやっていく自信はないですし、だからといって他に手に職ももっていない。だから、高橋さんのようにITエンジニア以外の仕事ができるって羨ましいことですよ

とのことでした。井原さんは定年までITエンジニアを続けていく自信がないと考えています。そのため、他の仕事を身につけることによって将来への不安を回避できると思っているようでした。そこで、将来に向けて何か別の仕事ができるような取り組みをされているのかを尋ねてみたら、特に何もしていないそうです。

 そこで、私のことを羨ましく思っていたことを引き合いに出し、このような質問をしてみました。

 「もし、井原さんが私のようなキャリア・コンサルタントになろうとした場合、現実的に考えればITエンジニアの仕事を続けながらキャリア・コンサルタントの仕事を覚えなければなりません。しかも、キャリア・コンサルタントはITエンジニアと全く違う職種ですから、覚えることや身につけなければならない技術、スキルはたくさんあります。井原さんは私のことを羨ましいといわれていましたが、それでもキャリア・コンサルタントになりたいですか?

 すると、井原さんは少し困ったような感じになり、「私には…無理ですね」と返されました。

■隣の花は赤い

 実は、井原さんは社内では評価の高いITエンジニアなのだそうです。会社では管理職に就いており、プロジェクトマネージャとしていくつかのプロジェクトを回しています。一見すれば、どこに不安があるのか? と思ってしまいがちになりますが、当の井原さんはそれでは満足できないのです。これらのことから、井原さんの問題は、

  • 自分自身のことがよく理解できていない
  • 問題の解決策を、自分の専門外のことに見出そうとしている

この2点にあると思いました。いい方を変えるならば、井原さんはいつも隣の花は赤いと思っているのです。私からみて、井原さんは既に定年まで働くことができる技術やスキルを身につけているように思います。しかし、井原さんがそこに不安を感じているのは、その技術やスキルでどうやったら定年まで働いていくことができるのか、その道筋がみえていないことにあると考えました。そこで、このことを井原さんに伝えた上で、今から定年までの期間で、

  • 井原さんが自分自身で取り組めること
  • 井原さんが会社から求められていること

この2点についてじっくりと考えてもらい、その結果を元に井原さんのキャリア・パスを作成しました。

■答えは自分の中にある

 できあがったキャリア・パスは井原さんにとってはそれ程難しい内容にはなりませんでした。寧ろ簡単な部類に入ります。しかし、キャリア・パスができあがったことにより、井原さんの不安は消えたそうです。それと同時に、井原さんの不安を解消させる答えは、自分の外ではなく中にあったことに気づかれました

 井原さんのように、既に解決できるだけの技術やスキルを持っているにも拘わらず、答えを自分の外に向けようとするITエンジニアは多くおられます。こういった人には「知足」という考え方が役に立ちます。知足とは読んで字のごとく、「足るを知る」、つまり、「自分には既にそのことを成すだけに十分な能力が身についていることを、自分自身が知ること」です。この考え方が前提にあると、その人が今時点でもっている力を使って問題を解決しようと働きかけることができます

 もし、目の前の問題が解決できず、自分の外に答えを求めようとした場合には、一度立ち止まり「自分には今の問題を解決するだけの力をもっているんだ」という知足の考え方でもう一度問題を捉え直してみてください。そうすることで、自分の中にある答えがみつけ出せるかもしれません。ぜひ、やってみてくださいね!

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