ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第113回 ソフトパワーでコミュニケーション

»

 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 以前、ソフトパワーについてコラムを書きました。あれからしばらく経ち、自分なりにソフトパワーを使ってみたので、今回はこのことについて書きたいと思います。

■ソフトパワーのおさらい

 ソフトパワーは『第94回 ソフトパワーのしくみ』でも書きましたが、元々は国の外交戦略の一つとして用いられる手法で、強制力をもたせず相手の自発的な行動によって交渉事を優位に進める方法だそうです。それをビジネスの世界に活用した例として、Apple社のiTunes Uを紹介しました。そして、このソフトパワーを働かせるしくみを以下のように考察しました。

ソフトパワーが働くしくみ

  1. 最初に相手にとって利のあることを提供する(iTunes Uで自分の講義をアップし、たくさんの人に視聴してもらえること)
  2. それによって自分にも利を享受できるようにする(iTunes Uにたくさんの講義がアップされること) → Win-Winの完成
  3. 相手がそれを自ら続けなければならないと思える状況をつくる(ランキングを維持するために良質の講義をアップし続けること) → ソフトパワーの完成

■ソフトパワーをやってみた

 このようなソフトパワーですが、私自身とても興味があったので、あれから少し自分なりにソフトパワーを実践してみました。といっても、実際にiTunes Uのようなシステムを構築するのはなく、コミュニケーションを使うシーンにおいてソフトパワーを使えるかどうかを試してみることにしました。

 やり方はいろいろあろうかと思いますが、このときはコミュニケーション対価を使ってやってみることにしました。コミュニケーション対価は『第20回 四方山話(3) コミュニケーションをキャリアっぽく考えてみる』で紹介しましたが、相手のモチベーションを上げるための3つの対価のうちの一つで、相手のモチベーションを上げるために相手が望むコミュニケーションを対価として提供することです。例えば、

この職場で仕事がしたい!
あの人と一緒に仕事がしたい!

などがコミュニケーション対価にあたります。コミュニケーション対価はお金や地位といった会社や組織の資産をモチベーションを上げるための対価として使わないので、個人でも簡単に行えるというメリットがあります。これをソフトパワーが働くしくみの「相手のとっての利」になるようにしました。具体的にはこのようにやってみました。

対象者:部下を抱え、その育て方を模索している若手リーダー

ソフトパワーのかけ方

  1. セルフ・キャリアコンサルティングのノウハウを使って、部下の育成方法を無償で学べる場(勉強会)をつくる。
  2. 参加者一人ひとりに簡単な役割を与え、その役割の遂行してもらう。
  3. 役割の達成度合いを見える化する。

セルフ・キャリアコンサルティング:ITエンジニアがひとりでキャリアづくりを行う方法。興味のある方は、拙著『ひとりでできる!ITエンジニアのキャリアデザイン術 ~望みをかなえる「壁」の越え方』をご参照ください。

 この勉強会は期間限定で行ったのですが、最後まで一人の脱落者もなく参加者全員が自発的に活動していただくことができました。この勉強会で行ったソフトパワーは参加者に簡単な役割を与え、その達成度合いを他の人にも分かるように見える化した所でしたが、役割を簡単にすることで誰もが負荷なく役割を遂行することができました。それが見える化されたことで自分の行動が他の人にも分かるようになり、その結果、勉強会内での言動が活発になるなどの効果が表れるようになりました。このようになってくると、勉強会へ参加したいという気持ちが強くなり、勉強会に参加することがその人にとってモチベーションを上げるためのコミュニケーション対価となってきたような感じでした。

■ソフトパワーでコミュニケーション

 今回はソフトパワーを勉強会という閉じられた空間で使ってみましたが、個人的にはそこそこうまくいったような感じがしました。こういったコミュニケーション手法はこれまであまり紹介されたことがなかったように思いますので、今後もソフトパワーをいろいろな場面で使い成果があれば、また報告させてもらいます。個人的には1対1の会話などでソフトパワーが使えるようになったらいいなぁと思っています。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する