ITエンジニアへの5分間キャリア・コンサルティングやってます!

第72回 コーチングのススメ5

»

 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 前回のコラムでは4SコーチングのSkill(スキル)について、「場」のスキルを紹介しました。今回は会話の要素の2つめである「流れ」についてのスキルを考えてみたいと思います。

■ユニット(Unit)

 会話とは、相手の話を聞き、その内容を踏まえてこちらが話す、この繰り返しです。いい方を変えるならば、「相手の話を聞き、こちらが話す」を一つのくくりとして、このくくりをたくさん繋げていくことが会話を継続させることになります。4Sコーチングではこのくくりのことをユニット(Unit)と呼んでいます。ユニットの中身は3つの段階に分かれています。

相手の話を聞く段階

相手の話を検討し、こちらが話す内容を考える段階

相手に話をする段階

 この段階のことを4Sコーチングではシーン(Scene)といい、それぞれの段階を「聞取(ききとり)」シーン、「検討シーン、「発言」シーンと呼びます。

No07201

 4Sコーチングでは、ユニットの繋がりをうまくコントロールすることで、会話全体をコントロールすると考えます。

No07202_2

 このユニットは会話の要素である「聞く」ことと「話す」ことに関連づいており、以下のような関係になります。

聞く … ユニットの「聞取」シーン+「検討」シーン

話す … ユニットの「検討」シーン+「発言」シーン

No07203_3

 つまり、「聞く」という行為は、相手の話を聞き(聞取シーン)、その内容を考える(検討シーン)から成り立っており、「話す」という行為は、話す内容を考え(検討シーン)、その内容を相手に伝える(発言シーン)から成り立っているといえます。

■コネクター(Connector)の構築

 会話はユニットの繋がりですので、ユニットをたくさん繋げることが会話を継続させることになります。このユニットとユニットの繋ぎ目(連結部)をコネクター(Connector)と呼びます。

No07204_2

 4Sコーチングではコネクターが正しく働かないと、ユニット同士が正しく繋ぎ合わせらず、会話自体が続かなくなると考えます。例えば、会話が長続きせずすぐに沈黙してしまう人は、ある段階でコネクターが正しく働かず、ユニット同士が繋がらなくなったことで会話が続かなかったと考えます。そのため、4Sコーチングではコネクターを正しく働かせることで会話の流れをコントロールし、会話を継続させるようにします。このことをコネクターの構築と呼びます。

 コネクターの構築は4つの段階から成り立っており、この手順を踏むことである程度簡単に会話を継続させることができるようになります。

コネクターの構築手順

1.話題を探す

 コネクター構築の第1段階では、相手に話す話題を探します。この話題は何でも構わないのですが、話題がみつからない場合、「話題を探すためのリスト」「五感のフィルター」という方法を使うと、比較的簡単に話題をみつけることができるようになります。

【話題を探すためのリスト】

 話題を探すためのリストとは、一般的に話題を作りやすくするためのキーワードの頭文字を集めたものです。

きどにたてかけし衣食住

 これらの一つひとつの文字には以下のような意味があります。

  • き … 気候(こう)
  • ど … 道楽(うらく)
  • に … ニュース(ゅーす)
  • た … 旅(び)
  • て … テレビ(れび)
  • か … 賭けごと(けごと)、家庭(てい)
  • け … 健康(んこう)
  • し … 仕事(ごと)
  • 衣 … 
  • 食 … 
  • 住 … 

 これらのキーワードから、これから話そうとする話題を探し出します。この時、話題が以下のような内容であるほど、会話が繋がりやすくなります。

  • 話題が具体的であること
  • 相手が親近感を覚える話題であること
  • 気楽に話せる話題であること

【五感のフィルター】

 五感のフィルターとは、ある対象物を五感(視覚、味覚、触角、聴覚、嗅覚)をとおしてみることによって話題をつくり出すことをいいます。

  • 視覚のフィルター … それ(対象物)はどのように見えるか? (輪郭は? デザインは? 色は? 質感は? 光の具合は? 影は? )
  • 味覚のフィルター … それ(対象物)はどのような味がするか? (甘い? 苦い? 辛い? しょっぱい? 酸っぱい? 苦い? )
  • 触覚のフィルター … それ(対象物)を触ったみた感じは? (硬い? 柔らかい? ツルツルしている? ザラザラしている? ネバネバしている? 日が差すような感じ? じとじとした感じ? さらっとした感じ? ヒンヤリしている感じ? 熱い? 温かい? ぬるい? 冷たい? )
  • 聴覚のフィルター … それ(対象物)はどんな音がするか? (心地よい音? 耳障りな音? うるさい音? 静かな音? 不快な音? 聞きなれた音? 聞いたことのない音? )
  • 嗅覚のフィルター … それ(対象物)はどんな匂いがするか? (心地よい匂い? 臭い匂い? 人の匂い? 動物の匂い? 植物の匂い? 金属の匂い? )

 五感のフィルターを使う場合、コーチとクライアントの間にある物理的なモノを対象物にすると、会話が繋がりやすくなります。

2.話題に対して、クライアントが興味を持てるかを確認する

 コネクター構築の第2段階では、第1段階で探した話題をクライアントに話してみます。この話題に対してクライアントが反応した場合、そのまま会話を続けます。このとき、発言の仕方によって会話がより進んだり、停滞したりします。

【会話が進みやすくなる発言】

  • 話題をさらに掘り下げてみる … 「もう少し具体的にいうと? 」
  • 話題をクライアントに委ねてみる … 「それはすごい! 」「へぇ、大変だったんですね! 」
  • 話題をこちらから振ってみる … 「他の方法ってありますか? 」「それを途中で変えてみたらどうなってたでしょうね? 」

【会話が停滞しやすくなる発言】

  • あいまい抽象的に話す … 「それっていい感じですか? 」
  • 批判する、チェックする …「それは止めた方がいいですよね? 」

 このとき、話題に対してクライアントの反応が薄かった場合、次の第3段階に進みます。

3.話題に対して、クライアントがどこに興味を持てるかを確認する

 コネクター構築の第3段階では、第2段階で話した話題に対して、どのような切り口だと興味が持てるかを確認します。ここでは、クライアントが持つ興味を引き出すために、コーチが質問をします。

【興味を聞き出すための質問】

  • (スマホに話題に興味がなかった場合)それじゃ、こだわりのあるデジタル機器ってありますか?
  • (テニスの話題に興味がなかった場合)それなら、何かスポーツはされていますか?

 この質問によってクライアントが反応した場合、そのまま会話を続けます。もし、話題に対してクライアントの反応が薄かった場合、再度第1段階に戻り、別の話題を探します。

■コネクターの構築を使ってみる

 コネクターは「興味」と置き換えることもできます。コネクターの動きをコントロールするということは、クライアントが興味を持つ話題をコントロールするといい換えられます。つまり、クライアントの興味をコントロールすることで会話の流れをコントロールすることがコネクターの構築です。

 前回のSpirit編を紹介した際、アイスブレイクの話をしましたが、実際のアイスブレイクではこのコネクターの構築を使うことが多いです。慣れるまで少し難しく感じるかもしれませんが、方法を身に付けてしまえば簡単にできますので、会話が続かないなぁと思われる人はぜひ試してみてください。

アイスブレイクの話:詳細は、『第71回 コーチングのススメ4』をご参照ください。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する