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第56回 部下を育てる力

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 こんにちは、キャリア・コンサルタント高橋です。

 最近、部下を持つ上司の方から相談を受けることが何件かありました。部下をもつ人にとって、部下を育てるということは非常に大切な仕事の一つであり、悩みの種でもあります。そこで、今回は部下を育てるということについて考えてみたいと思います。

■あなたの部下は育ってますか?

 社会人になりある程度仕事を覚えてくると、少しずつ職位が上がってきます。職位が上がると、その職位に求められている職責にもとづいて新たな仕事が割り当てられます。一般的にそれらの仕事は以前の仕事に比べ作業の難易度が高く、作業量が多く、作業範囲が広がります。そうなってくると、物理的に一人で仕事をこなすことが難しくなってきます。そこで部下の登場です!

 部下は上司や部署に課せられている仕事の一部を担います。そのため、パフォーマンスの高い部下が入ってくると、それだけで上司や部署の生産性は上がりやすくなりますし、パフォーマンスの低い部下がいると、上司や部署の生産性は下がりやすくなります。これらのことから、上司は部下のパフォーマンスを上げるために、部下を育てることを考え始めます。

 しかし、現実を紐解いてみると、部下という生き物はなかなか思ったように育ってはくれません。そこで、勉強熱心な上司は人材育成に関する書籍を読み漁り、一とおりそれらの方法を試してみるのですが、どれも今一つ効果が出てこない。そのうち、部下が育たないのは部下自身に問題があるという結論に至り、最後は上司は部下を信頼することなく、自分で仕事を貯め込み、ひとりで苦労するハメになる……、このような話はどこにでもあります。

■部下が育たない要因

 なぜ、部下が育たないのか? もし、その原因が上司側にあるとしたら、筆者は2つあると思います。それは、資質方法です。

 資質とは、上司が部下に身に付けさせたいと考えているスキルや技術を、部下が修得するだけの資質をもっているかどうかです。具体的には、

  • 技術やスキルを習得できるだけの素地や素養
  • やる気やモチベーション

などがあてはまります。例えば、プログラミングの知識がない人に対して、いきなりC++によるオブジェクト指向プログラミングを習得させようとするのは無理がありますし、スタンドプレーが好きな人に対して、チームビルディングを習得させることにも無理があります。このように、資質がない人にはどれだけ優れた方法を使ったとしても、育てることは難しいように思います。

 方法とは、上司が部下に身に付けさせたいと考えているスキルや技術を習得するための方法のことです。具体的には、

  • リーダーシップ
  • コーチング
  • ティーチング
  • ワークショップ

など、人材育成系の技術やスキルなどがあてはまります。こちらについても、例えば、たくさんの知識を習得することが求められている場合、コーチングよりティーチングの方が効果的である場合が多く、実体験をベースにスキルや技術を習得させることが求められている場合、ティーチングよりワークショップの方が適している場合が多くなります。このように、求められる技術やスキルの習得に適した方法を使わなければ、どれだけ部下の素養が高くても育てることは難しくなるように思います。

■部下を育てる力

 一般的に、部下を育てることは「育て方」という方法の視点で捉えている風潮が強いように思います。だから、巷ではリーダーシップ、コーチング、ワークショップといった方法論が大きくクローズアップされているのではないでしょうか。もちろん、これらのスキルは人を育てる上で強力なツールになることは、筆者の経験上からも間違いないといえます。しかし、どれも万能ではなく一長一短があります。オールマイティに人を育てられる方法というものは、どこにもありません。

 そのため、部下を育てるためには、部下の素養を見極めた上で、最適な方法で育てることが必要だと考えます。これを育てる力とするならば、育てる力にはこのような力が含まれているのではないでしょうか。

《育てる力》

  • 部下の資質を見極める力
  • 部下を育てるための方法を使いこなす力

 部下の資質を見極めるためには、部下の考えや想いを理解し、部下の視点から物事を見渡せるようになることが必要です。また、部下を育てるための方法を使いこなすためには、上司がその方法を自分で体験し効果を実感することが大切で、その積み重ねによって方法のバリエーションを広げていくことが必要だと思います。

 このように考えると、育てる力というのは、昨日今日で身に付けられるような簡単なモノではなく、緻密で地味な作業の積み重ねによって少しずつ作り上げられる力なのかもしれません。だからこそ、育てる力は強力なスキルとなり、その力は周りを惹きつける魅力になっていくのでしょう。そして、それはキャリアを作る上で非常に有効なスキルの一つになり得るのではないかと思います。

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