「エンジニアの人生=エンジニアライフ」に役立つ本を紹介します。

キャリアとスキルと勉強法の関係を考える――『SEの勉強法』

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SEの勉強法 SEの勉強法

克元亮(著)
日本実業出版社
2010年5月
ISBN-10:4534047126
ISBN-13978-4534047120
1575円(税込み)

■9つのスキルと、5つの勉強フレームワーク

 「SEは、最も勉強が必要な職業の1つです」

 そんな言葉で本書は始まります。『SEの勉強法』という、そのものずばりのタイトルを掲げる本書は、SEに必要であると思われるスキルを9つに分類し、それを身につけるための勉強法を5つのフレームワークで解説しています。

 著者の考える「9つのスキル」とは、以下の通りです。

  • コミュニケーションスキル
  • コンサルティング手法
  • モデリング手法
  • ソフトウェアエンジニアリング
  • 経営管理
  • 業務知識
  • プロジェクトマネジメント
  • 情報技術
  • アーキテクチャデザイン

 本書では「コンサルタント」「プロジェクトマネージャ」「ITアーキテクト」という3職種について、それぞれどのスキルが特に必要となるかを整理しています。

 また、後半では、これらのスキルを身につけるための5つの勉強法を「5Pのフレームワーク」として提示しています。

  • Purpose(目的):達成できる目的を定める
  • Planning(計画):勉強の締め切りを意識する
  • Practice(実践):勉強を楽しみ習慣化する
  • Partner(仲間):孤独な勉強に打ち勝つ
  • Present/Profit(報酬):勉強の成果は見える形にする

 この中でも、特に「Practice(実践)」に多くの紙面が割かれているのが特徴的です。「勉強の習慣化」の重要性がよく分かります。

■どうなりたいか→何を勉強すべきか→どう勉強するか

 「コンサルタント」「プロジェクトマネージャ」「ITアーキテクト」の3職種を目指す人にとって、本書は多岐にわたるスキルセットを体系的に整理し、分かりやすく解説しているという点で、有効なノウハウ本として機能するでしょう。やや偏りはあるものの、SEに必要とされるスキルを網羅的にカバーしているため、自分が持っているスキルや、足りていないスキルの確認に役立ちます。

 しかし、最も注目すべきは、本書の“構造”にあります。「キャリア」→「スキル」→「勉強法」の順に書かれている、という事実に着目しましょう。

3職種のいずれかを目指す(キャリア)
 ↓
そのために必要なスキルを知る
 ↓
それを学ぶための勉強法を5つのフレームワークで整理する

 まずキャリアビジョンがあり、そのために必要なスキルがあり、そのために有効な勉強法がある。本書は、そういう順番で書かれています。

 自分の進みたい方向が決まらないまま多種多様なスキルを身につけようとしたり、どんなスキルが必要かを考えずに勉強法にばかりこだわるということが、ときに起こり得ます。もちろん、それが悪いわけではありません。ひたすら勉強する中で、進むべき方向が見えることもあります。ですが、ある段階で進むべき方向を決めることもまた、重要なことです。

 本書では先に挙げた3職種がキャリアゴールとして設定されていますが、現代のエンジニアにとって、この3職種が唯一のキャリアゴールではありません。どのような方向に進むかの選択肢は多岐にわたります。しかも、時代の流れによって、どんどん変わっていきます。ですから、設定したキャリアゴールを何年も変わらずに追い続けるのは、難しいことです。それでも、進むべき道を自分なりに選び出し、そのために必要なスキルや勉強法を模索するのは、決して無駄ではないでしょう。

 もし「なんのために勉強しているんだっけ?」と迷ったときは、自分がどうなりたいかを思い出すといいかもしれません。本書の章立てをもとに、「自分だったら、こういうふうになりたいから、こういうスキルが必要で……」と考えてみましょう。

(岑康貴 @IT自分戦略研究所)
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