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SOC(首尾一貫感覚)でメンタルヘルスケア

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 こんにちは。

 エンジニアライフが1周年だそうで、おめでとうございます。自分は今年1月から参加させていただいているので、丸9カ月程でしょうか。コラムニストの方々も増えましたし、Twitter上でコラムニストの方々とやりとりさせていただいています。そういった意味では知り合いが増え、エンジニアライフに参加してよかったなあと思います。アクセス数がイマイチなのは、あまり気にしていません(笑)。

■今回は国会図書館で読んだ本のまとめです

 さて、今回は、前回書いた国立国会図書館で読んできた本についてまとめたいと思います。久々の「メンタルヘルスケア」シリーズです。今回は、アントノフスキーという方が書いた「健康の謎を解く」という本からSOC(首尾一貫感覚)についてまとめたいと思います。

 ちなみに、この本、内容としては研究論文みたいな本なので、読んでみて、すごく難しかったです……。買っていたら大変なことになったかもしれません(苦笑)。

■SOC(首尾一貫感覚)とは

 アントノフスキー氏は医療社会学者で、「なぜ病気になるのか」を危険因子(リスク)から考える「疫病生成論」に対し、「どうすれば健康が維持(増進)できるのか」を健康になる因子から考える「健康生成論」を唱える学者さんです。

 そのアントノフスキー氏は、イスラエルに住み、第2次大戦時に「ナチスの強制収容所」を経験した女性の健康状態を調べたことがあったそうです。「強制収容所」ですから、そこから生還したとしても、トラウマとして残っていてもおかしくないはずなのですが、生還後の生活も元気に過ごしている女性が多いことが調査の上でわかりました。その女性の方々に共通したものを、強い弱いの尺度でまとめたものを「SOC(Sence Of Coherence)」と呼んでいます。

■SOCを構成する3つの要素

 強制収容所から生還して、元気に人生を全うした女性の方々に共通している要素は3つあります。

(1)把握可能感

 「自分に振りかかった出来事に対し、理解できているものとして捉えられる」ことが把握可能感です。突然起こった出来事、つまり把握可能感の低い人にとっては「カオスであり雑音」と思えるようなことでも、把握可能感の高い人は、その出来事は秩序だったものとして予測もでき、他の人にも秩序だった説明ができる能力だそうです。

 もう少しわかりやすくいうと、例えば「死」「戦争」「失敗」などは起こりうるものでありますが、把握可能感の高い人は、「なぜ、それらが起こるのか」「今後どうなるか」、その意味も理解しているのだそうです。

(2)処理可能感

 「自分に振りかかった出来事に対し、『自分はそれを処理できる』と考えられる」ことが処理可能感です。処理可能感の弱い方は「なぜこんな不幸に遭うのだろう、この不幸は一生続くのだろうな」と考えがちで、逆に処理可能感の強い方は、世の中で起こる出来事は何でも、対処可能な挑戦もの、と捉えることができるのだそうです。

 もう少し厳密に定義すると、ある出来事に対し、自分が「資源」を充分に利用できてコントロールできる、と考えられる能力だそうです。「資源」には、モノの他に「配偶者」「友人」などの「人」も入ります。

(3)有意味感

 「自分に振りかかった出来事に対し、この出来事は自分にとって意味のあるものだと考えられる」ことが有意味感です。有意味感の低い人は「何でこんなことをやる必要があるのか。疲れるだけだ。ない方がずっといい」と思うようなことでも、有意味感の高い人は「エネルギーを投入するに値し、関わる価値があり、歓迎すべき挑戦である」と考えることができるのだそうです。

 例えば、「愛する人の死」や「会社を解雇された」といった出来事でも、自分に課せられた挑戦だと受け止め、それらに打ち勝つために最善を尽くすのだそうです。

 SOCが「尺度」であることを先に書きましたが、だからといって3つの要素が全て高いor全て低いの2通りしかないわけではなく、把握可能感と有意味感は高いものの処理可能感が低い、等のように2の3乗=8通りのパターンが考えられるそうです。

 また、「動機付け」という観点で考えると、「有意味感」が重要で、関心が低ければ理解もできないし資源を得る努力もしない、ということだそうです。

■3つの要素を意識したワークライフ

 SOCが強い弱いというのはすでに持っているものではありますが、応用方法もあると思います。今、尺度が強いか弱いかは置いておいて、「今している作業は、自分にとって、こういう意味がある」「今している作業は、プロジェクト全体として、こういう意義で作業している(このくらいの期間がかかる)」「今している作業は、自分にとって無理なことではなくて、できることだ」という考え方をするだけでも仕事が違ってくるのではないでしょうか。

 また、このことは、自分が仕事を行う上での話だけではなく、後輩指導など作業を他の人に頼む際にも、「有意味感」「把握可能感」「処理可能感」を踏まえて指導したり作業を頼んだりすれば、スムーズに事が運ぶのではないでしょうか。といっても、今の自分の仕事上、直属の後輩がいないので、実践していない上での「ただ思ったこと」である点は申し訳ありませんが。

☆★☆

 コラムニストさんの中には、こういった話に精通していそうな方も何人かいらっしゃるようで、自分が書くよりは……なんて劣等感が出てくることもありますが(苦笑)、今後も何か勉強したら、コラムに書きたいなあと思っています。

Comment(4)

コメント

組長

こんにちは★

うわぁ、これ、今の自分にドンピシャだったのですごく面白かったです。

自分は今、仕事に対して有意味感が最も低く、処理可能感も低いんだということが理解できました。だって・・・今の仕事と現場にどうしても愛を感じれないんだもん・・・。とか、人様のコラムで愚痴ってどうする!?失礼いたしました。

自分が書くよりは、など思わず、じゃんじゃん書いて下さいませ★

あずK

組長さん>
コメントありがとうございます。
返信が遅れましてすみません。
ここのところ忙しかったものですから^^;
忙しかったのは先月からですが、それ以前は、こういうことを書いておいて
有意味感が低い作業をすることがありました(苦笑)
お気持ちはよくわかります。

自分のときは、以前のその作業で色々と学ぶことがあったため
今の作業で非常に役に立ちました。
成長というか、次に繋がる作業だと思うことも
有意味感のヒントのひとつかもしれません。

> 人様のコラムで愚痴ってどうする!?失礼いたしました。

いえいえ。お気になさらずに^^

> 自分が書くよりは、など思わず、じゃんじゃん書いて下さいませ★

ありがとうございます^^
また何か勉強したらコラムに書きますね。

尾下義男

お世話になります。
危機管理アドバイザーの尾下と申します。

この度、NHK(クローズアッフ現代)で放送され、「レジリエンス」について、防災危機管理の面で問い合わせを受けたので私の考えを述べます。

「危機管理とレジリエンスについて」
被災者の困難が長期に継続する今回の東日本大震災では、被災者に内在する「強み」への気づきや「希望」という視点がなければ再発のリスクを低減することは困難です。しかしながら、これまでは詳細な研究が行われていないのが現状です。たとえば、「大丈夫何とかなる」という首尾一貫感覚のSOC( Sense of Coherence)、「どん底の状態から立ち直る力」であるレジリエンス(Resilience)、それに「困難な状態からのポジティブな心理的変化」である心的外傷後成長(PTG:Post-Traumatic Growth)などを用いることで、被災者のポジティブな心理的変化を各要素に分類して詳細に分析を行うことが必要です。今回の東日本大震災の厳しい経験から、多くの方がこれから真に安全で安心できる社会を築いていかなくてはと痛切に感じています。しかし、災害に強く、安全・安心な社会とは、どのようなことを意味するのでしょうか。

私は、本当の強さとは、「困難な状況に負けないこと」であると考えています。自然の猛威を前に人間は無力ですが、東日本大震災を経験した私達が、歴史の生き証人としてこの教訓を今後に活かさないのであればそれは天災ではなく人災にもなり得ることを忘れてはいけないと自分に言い聞かせる度に、これからの真に安全で安心できる社会の構築に必要なことは、困難な状況に負けない力を備えることであると強く感じています。

困難な状況に負けない力とは、困難を乗り切る力です。大きな災害や事故に見舞われた時に、私達の組織や地域社会は、いくら入念に防災対策を講じていたとしても、程度の差こそあれ影響や被害を受けることは避けられないでしょう。しかしながら、傷を負いながらも堪え忍び、厳しく困難な時期を何とか乗り切り、乗り越える力こそが、重要になるのではないでしょうか。それが、「レジリエンスの高い」組織や地域社会の姿であると考えます。

それには、まずは日頃十分な備えをすることが基本となります。対策を講じていれば問題が生じたとしてもその程度は軽くてすむことが期待されます。被害の程度が軽微であれば、その後の復旧・復興の過程は大きく変わってくるでしょう。事前に備えることの重要性はレジリエンスを高めるために、とても大事な要素であることに変わりはありません。そのことに加えて、レジリエンス向上のためには危機管理の実質的な仕組みと仕掛けを充実していくことが大切になると思います。例えば、意志決定やコミュニケーション、地域連携、情報共有管理などがレジリエンス向上のための重要な指標となるのではないかと考え講義・講演で力説しているところです。
今後ともご支援ご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。尾下拝

危機管理アドバイザー尾下義男

お世話になります。

危機管理アドバイザーの尾下と申します。

常総市にボランティア活動(災害時ストレス対策)に行っています。

援助者も去り、日常生活が次第に戻ってくるにつれ、これまで表面化しなかった心の問題が現れます。(幻滅期に入っています)

再建期(被災地に日常生活が戻り、生活の立て直しに前向きに取り組む)に向けての支援ができるよう活動することが大切です。

ご理解の上、ご対応賜れば幸甚に存じます。

尾下拝

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