地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

どの立場が偉いわけでもなく

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 業務を進めていると、色々な立場の人と一緒に仕事をすることがあるかと思います。それは営業とだったり、インフラとだったり、開発とだったりと仕事を進めるうえでは本当に様々な立場が関わってきます。ここ数年で、開発側が主体となるキーワードがいくつか出てきていますが、ここが @IT というメディアであることを抜きにしても、何故特定の立場を主体とする考え方が広まってきているのでしょうか。

 様々な記事や SNS で流れる意見を目にしていると、一つ感じることがあります。それは立場が異なる場合、そこになかなか相互を理解する空気は形成されない、ということです。自分の立ち位置を大切にするのはある意味で仕方がないところかもしれません、ですがそれにしても相手の状況に理解を示さずに一方的に自分たちの理念を押し付けている、そんな嫌になる流れが今の時世では力をつけているようにも思えます。

 それぞれの立ち位置では見えているものも違いますから、当然考えることも異なります。営業な立場であれば数字がまず先に来るでしょうし、インフラであれば安定した環境を第一とするでしょう。開発であれば要件を明確にさせてスケジュール通りに進めていきたいでしょう。また、何か状況が変化するようなときには、どの立場であってもできるだけスピーディに対応していきたい、と共通する思いもありますが、そのために取る手段はそれぞれでまた異なることが殆どです。

 大きく分ければ技術側と非技術側と言える関係は、お互いになかなか理解を示さずほとんどの場合を互いに衝突しているのではないでしょうか。

 それぞれがある意味で自分たちの仕事にプライドをもって取り組んでいる、そう言えるからこその衝突かもしれませんが、恐らくはそのようなケースよりも単に自分たちの都合を押し付けあっているだけのことが多いのでは、そう思えてしまいます。

 冷静に考えれば、営業やインフラ、開発それぞれが単独で業務を行えたとしても、それは恐らく会社的にさしたる売上にはなりにくいはずです。単品のアプリケーションを販売するにしても、相手に良さを伝える人がいなくては、安定して開発を行えるよう土壌を整備できる人がいなくては、そして品質良く作成できる人がいなくては、最終的に良い結果とはなかなかなりません。どこの立場が主導権を握るか、ではなくどの立場も協力しあうのが良い結果への近道のはずです。

 ところが最近では、開発を理解しない、インフラを理解しない、営業を理解しない、とそれぞれの立場の人が自分たち以外へと不満をぶつけていることが非常に目立ちます。文句を言うだけで、相手に理解を示さないその姿勢では、仮に相手が自分を理解しようと近づいてきたとしても、自分の都合のみを押し付けてしまい、結果上手くいくものもうまくいかないケースにたどり着きます。そして上手くいかなかった理由は、相手が自分たちのことを考えなかったからだ、と自分たちの素行を棚に上げるかのような言動をしてしまうのです。それではどうしようもありません。

 それぞれの立場には、それぞれ固有の状況があります。そこを理解しようとしなくては、いつまでたってもうまく事が運ぶとは思えません。自分の思想に反することを相手が言ってきたのであれば、そこにはどういった事情があるのか、どういう考えでそう言っているのか、このあたりに目を向けることが非常に重要なのだと考えます。

 一人でできることには限度があり、だから複数人で事にあたるのが今の時代にも必要です。相手のことを考えず、自分のことだけを推し進めるのであれば、いつかその輪の中に加わることすらできなくなります。それは果たして良い事なのでしょうか。

 もちろん相手の状況を考えたうえで、それでもなお衝突することはあるでしょうし、そこでチームとして分かれるという事もあります。ですが、先の例と違いそこには納得することができる理由が明確にあるのです。相手の都合は理解できても、そこに自分は協力できないことはなんらおかしいことではありません。問題とするべきは、相手を理解しないでいることなのだと、私は思います。

 互いに意思の疎通を取ることができれば、厳しい注文を言われたとしてもはっきりと断ることができます。誰かの手が届かないところがあったとしても、他の人が手伝うことで解決できることもあります。予定と違う方向に進んだとしても、実は目的を達成するには最善の方向だったということもあります。どこかの立場を優遇することで解決できるようなことよりも、互いに協力し合う状態である方がより多くの課題を解決できるのは明白です。

 仕事をすすめていくと、他の立場に対して不満を感じることはどうしても起こりえます。それは誰しも感情があるから当然なのですが、そこで感情に任せず何故そのような要求をしてくるのか、何故こちらに注文をつけようとしているのか、そのように一歩先を見て考えを巡らせていくことが、多人数で事にあたる事が多い私たちに求められている事なのではないでしょうか。

 文句を言うだけなら、それは誰にでもできることです。それを踏まえて、ではどうすればよいか、というところにまで持っていけなければなかなか良い結果にはたどり着けないのだと思います。そうするためにも、相手を理解することは大切なのではないでしょうか。

Comment(3)

コメント

山無駄

こと、プロジェクトに関して言えば、組織の管理、監視?が厳しくなれば厳しくなるほど、その様な状況が起こりやすくなるような気がします。営業は赤字を絶対にだしてはいけないし、開発は100%の品質にしなければならず、顧客(業務)は開発費を最低にし要望を最大限実現しないといけない。プロジェクトは利害関係が違うメンバーが集まっているので、各メンバーが自分の利ばかり主張してしうと上手くいきません。会社組織の管理が厳しくなると、組織の利ばかりを気にするようになり、結果プロジェクトの利に誰も目を向けなくなってしまうのでしょう。

Ahf

山無駄さん、コメントありがとうございます。

>会社組織の管理が厳しくなると、組織の利ばかりを気にするようになり、
>結果プロジェクトの利に誰も目を向けなくなってしまうのでしょう。

ほんと、これですよね・・・。
自組織の体制がプロジェクトに悪い影響を与えることに、どうにかして気づいてもらいたいと思うときがあります。末端側からはいくら声を上げても、上には届きにくいのが頭の痛いところです。

山無駄

Ahfさん

プロジェクトの成功=win-winになるという事は、皆が誰かのために少しずつ損をしても結果、良かったね。という事だと思います。近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」的な。でも、今後はそういう事って難しくなってくるのではないかと思っております。英国のEU離脱、米国のトランプ大統領就任など、自分さえよければという主張が主流になってきているからです。大げさかもしれませんが。

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