地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

銀の弾丸は無いと言う人が持つ銀の弾丸

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 社内向け、一般企業向けに関わらずシステム開発を行っていると、多くの人と調整事を行う必要に見舞われることがあるかと思います。何か一つのことを行おうとしても、関係するキーパーソンに話を通し、更にそこから先方の内部で様々な人に話を通さなくては、大したことの無い話でも全く進まずに頓挫してしまうこともあります。世の中は、何事にもスピードを求められる流れになりつつありますが、それでも昔同様に形式を求めるところもなかなかなくなりません。

 私はどちらかというと、形式や役割を求められるような場所で働くことが多いのですが、このような場所では求められるものが非常に面倒になりがちです。
 色々な場面でスピード感を求められるのは、ほかの職場と同様なのですが、求められていることを執り行うためには、やはり色々な人へと話を通さなくてはならないなど、体制的にスピード感を出すのが難しいところです。

 こう書いてみると、非常に無理難題を求められている気になります。スピード感を出すためには、各々がより効率を求めていけばよいかと言われると、それは主な対処法ではありえないのではないでしょうか。例え、一人一人が効率よくやったところで、全体としての体制がスピード感をもって処理できるようなものでなければ、結局それがボトルネックとなり、全体を通せば何も改善できていないとなります。しかしそれでも、上層部は下流側に問題があると思い込み、今の体制のままスピード感を出せ出せと無理難題を押し付けていき、最終的にはオーバースペックとなってしまいすべてが悪い方向へと流れていってしまうでしょう。

 私の中では、今後よりスピード感を伴った対応を求められるようになるにつれ、現場側よりも全体的な体制をどうにかしなくてはいけない、と感じています。個人個人の努力でどうにもならない部分への対応をしていかないことには、これからはより一層住み分けがはっきりとしてくるのではないでしょうか。

 ただ、一つ懸念しているのは、だからと言ってスピード感がない会社が淘汰されるかと言われると、ここはやや懐疑的です。SIer が滅びる話題に通じるところがあるのですが、早いスピード感を求めていない顧客層も、一定以上は常に残り続けているのではないか、とそう考えるところがあります。何事もスピーディな対応が良いか、と言われるとあまりそこを求めていない層があるのもまた事実です。Web 媒体や色々な識者の考え方では常に滅ぶ滅ぶと言われ続けていますが、恐らくはそうならないのではないか、と最近では思えるようになりました。

 理由も簡単で、ここのコラムや各種媒体でいかに訴え続けていても、その意見が伝わらない人たちというのは、必ず一定量存在していますし、これは恐らくなくなりません。そのような層の人たちにとっては、DevOps がどうだとかアジャイルがどうだといった話題には全く縁がない、というか自分たちに全く関りがないと思っているのではないしょうか。

 そして難しいのは、そのような企業が滅ぶかと言われると、少なくとも自分が現役でいられる間にはそうそう見られるとは思えません。先進的な企業は逆に、ほかの企業に買収されるだとか世の中の流れに置いて行かれるなど、なくなることもありえると思いますが、先のような層はこういった先端の流れとは無縁で、独自の流れの中にあります。それ自体は良いとも悪いとも言えない事ですが、確実に悪いのは、そのような相手に対しても同じようにスピード感を押し付けることにあるのかも知れません。

 何が最善か、という疑問に対して一つの方法論にたどり着くことはないかも知れません。反対に、何が悪手かという質問に対しては、多くの答えが出せると思います。それをつきつめると、相手の望まないことを行わない、という事になるのかもしれません。まずは動くものがほしいという相手に対して、ウォーターフォールでじっくり物づくりを進めていくというのは、相手が望まない時間をかけていることになります。しっかりしたものを求めている相手に対して、スピード感を優先した対応を行っていても、答えをすぐに出せない場面にぶち当たり、結局はそのスピード感がメリットを生み出せないことも十分にあり得ます。

 そうなると相手がどのようなものを、どのような進め方を求めているかによって、こちら側も柔軟に体制を変えていくことができる必要があるのではないでしょうか。一つの固まった体制だけで、これを執り行うことは非常に難しい事だと思えます。

 今の世の中、流行りの手法は数多く見受けられることができます。ですが、それだけに囚われず、あくまでも一つの手法と捉え相手によって使い分けられるようになることこそが、最も顧客側が求められる結果に近づくことができるのかもしれません。

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