地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

転職をためらう人へ

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 同じエンジニアであっても、その人がそこまでに通ってきた道筋によって、大きく得られる経験は異なります。若くして素晴らしく有能な人もいれば、年齢も年齢なのに全く現場に適さない人というのも数多くいます。

 大規模企業で過ごして得た経験と、中小企業や零細企業で得た経験は大きく異なるように感じます。大規模企業の場合、感覚的には型にきっちりとはめこむように、ルールに則ったやり方が身につくように思えます。反対に、中小企業や零細企業の場合は、現場でいかに融通を聞かせてスピーディーに解決するか、といった対応力を高めるような経験を積みやすいと思います。

 この経験は、どちらが優れているというように、優劣をつけるものではありません。その場がどのような場なのかにより、求められる経験が変わるためです。例えば、大規模開発の場で、変に融通をきかせスピーディな解決を行おうとして、ルールを無視したそれは良い事とはなりにくいです。結果は良好だとしても、後で問題となることが多々あります。反対に、中小規模開発などで形に則ったやり方を行うことは、時として時間的な問題からも求められないことが多く、それも問題となりうることが多々あります。

 このように、その人が得ている経験とは、その人がどのように過ごしたか、どのような場で活動してきたかにより、大きく異なると思っています。ですが、経験年数という、ここまでにかけてきた時間だけを目安にして人を判断する風潮は、今になってもなくなる様子を見せません。

 人が人を判断する時、そこにはどうしても自己基準とでもいうべき、自分の中にある物差しが大きく影響します。特に明確な基準を設けられない IT 業界では、自分がこのくらいの時間をかけてできるようになったのだから相手も同じであるはず、という誤った考え方が非常にぬぐい切れていません。

 成果主義として、完全に結果だけを元に判断する方法もありますが、日本の企業でそれが行えるところは非常に少ないでしょう。なんらかの相対的な判断が行われるのは、ある意味仕方のないところかとも思います。全く不満の起きない評価制度というのは、今時点でどこの企業も所有していないでしょう。

 理想論としては、どのような人でも活躍できる場面はある、となるのですが、現実問題として全員にそのような場を用意できるか、と言われるとそのようなことは不可能です。どうしてもその人に適さない場面しか用意できない、というのもよくある事です。

 このあたりを踏まえると、今のご時世で一つの会社にとどまるというのは、そこが自分に合っていると感じていられているのであればともかく、そうでないならば違う環境を探すほうが、会社にもその人にも適しているかと思います。昔は「企業を転々としていると悪く見られる」と言われていましたが、今ではそこを気にしすぎてはいけないと思うのです。

 特に昨今ではブラック企業というワードもよく目にされるようになり、一つの会社にとどまることが必ずしもプラスではないことが広まりました。企業としては、自社に適するようにその人に変わってもらいたいのでしょうが、それが良い事ではないというのは周知のとおりです。

 自社に適さない人を長く雇い続けるのは、企業にとってもメリットはありません。むしろ、合わない人は早めに転職などしてもらえる方が、企業にもその人にも大きくメリットが発生します。世の中の風潮が、転職を是とする方向へ変わっていくことも必要だと感じます。

 ある人がこれまでの時間で得た経験というのは、なかなかそのまま生かすことができません。応用力が高い人であれば別ですが、大体の人は今までやったことがそのままでは通じない場面に遭遇し、そこで思い悩んでしまうことも多いでしょう。ですが、これも起きて当然で、今までと場所を変えたのであれば、そこで求められるものも当然合わせて変化させる必要があります。
 そこに気づいてしまえば、今よりももっと転職に対して考え方が変わるのではないでしょうか。転職して自分のスキルが生かせるかどうか、というよりも自分のスキルをその場に合わせて変えることができるかどうか、今求められているのはこのようなものなのだと思います。

 一つの会社に留まり続けることも、当然良い選択の一つですが、自分に合わないと感じることが多くなったのであれば、そこでためらう必要はありません。是非、色々な会社と出会い、自分に適した環境を手に入れるよう頑張ってみてください。

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